42.5mm:スポーツでルールを守る意味

どんなスポーツにもルールがあります。少なくとも私が知る限り、ルールのないスポーツはこの地球上にひとつもありません。他の惑星でどうなっているかは知りませんが。ルールがなければ、公平な環境で競い合うことができませんし、そもそもルールがなければ競技を形にすることすらできません。

もしマラソンにルールがなければ、途中で自転車に乗っても電車に乗ってもいいことになります。サッカーにルールがなければ、鉄パイプで殴り合いをしながら、パス回しをすることになります。それは極端な話ではありますが、どんなスポーツにも守るべきルールがあるというのは理解してもらえたかと思います。

いま、あるランニングシューズのレビューを手掛けているのですが、これが私の中にものすごい葛藤を生み出しています。ソール厚さが42.5mmということで、これは規格外なのでNGということになります。メーカーもそう明記しているならいいのですが、困ったことにそもそも正式なソール厚さの表記がありません。


表記がなくても、メーカーが「レースでは使わないこと」のように匂わしているなら、なんとなく意図は汲みますが、むしろレースでランナーをサポートするというような宣伝の仕方をしています。だから、わかっていてやっていることになります。

別に、それを糾弾したいわけではありませんが、個人的には超大炎上案件になりかねないと思っています。とはいえ、なぜ規格外のサイズにしたのかの説明がされないと、私も迂闊にあれこれ言えませんし、ただ、意図的にルールを違反する製品を作っているとなると、そのメーカーからの依頼は今後受けないし、紹介もしないということになります。

どういう意図でルール違反するという選択をしたのか。そこにかなり興味があります。大したことではないという判断だったのか、それとも開発段階では明示するはずだったのが、いつの間にかセールス側の都合でそうなってしまったのか。

ここで困るのは、何も知らずに購入してレースを走り、審判員に指摘されてレース途中で失格にさせられるというケースです。本人はメーカーがレースで履けるといったニュアンスで出していたから履いただけなのに、失格にさせられるのは理不尽以外の何物でもありません。

では、そうなったときに誰が悪いのかということですが、「調べなかった本人が悪い」ということになるのかもしれませんが、全面的に本人だけが悪いとは言えないというか、私にしてみれば売った側にも問題があると考えます。

もちろん、誰に責任があるとかここで書いても意味はないのですが、どうも最近は「スポーツマンシップ」というものが軽視されがちで、それはプレイヤーだけでなく、製品開発を行う側にも広がっています。私はそこにかなりの危機感を抱いています。


バレなければ何をしてもいい。みんなやっているから自分も問題ない。それも含めてスポーツの面白さと考えることもできます。でも、意図的にルールを逸脱するというやり方は、1ミリも受け入れることはできません。ルールの穴をつくのも正直好きではありません。

さすがにレビュー記事に「42.5mmは問題がある」と書きましたが、今回は原稿チェックが入るので、メーカー側がどう出てくるかは読めません。全面削除を求められる可能性もありますが、その場合は記事はお蔵入りさせるつもりです。数時間が無駄になりましたが、いい勉強にはなりましたし。

とりあえず、このあとどうなるかは経過を報告しますが、こんなことで頭を悩まさなくてはいけないことに不満を感じています。そういう意味でも、なぜソール厚さを40mm以下にしなかったのかを聞いてみたいのですが、きっと本当のことが表に出ることもないので、きっと真実は闇の中のままなんでしょうけどね。

著:中村 聡宏
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