芸は身を助けると言いますが、その才能がゆえに表舞台から消されてしまう人が後を断ちません。才能があれば人が集まってきて、その人を持ち上げる人たちが、良かれと思ってさまざまな形で快楽を提供する。才能があっても人間だから、その快楽に靡かずにはいられない。
ただ、平成の時代までは、それが表に出ることはなく、あくまでも噂話で済んでいたものが、今の時代はちょっとしたことで表沙汰になり、芸能界を代表する人でもスポーツ界を代表する人でもいなかったことにされてしまいます。それはもう巧妙な罠で、人間なら逃げ切ることはできません。
幸い私にはそのような才能もなく、擦り寄ってくる人間もいないので、気をつける必要もないのですが、多くの人と出会う仕事をしていると、どこで巻き込まれが発生してしまうかわかったものではありません。気がついたときには、取り返しがつかなくなっているわけですし。
そのようなトラブルに巻き込まれないようにするには、聖人君子であり続けるしかありませんが、もちろん世の中にそんな人はいません。人は大なり小なり腹の中に黒いものがあり、そして欲望を持って生きています。それが生きる活力であり、なくすことはできません。
そもそも目の前に高級なお肉があって、「待て」と言われて待ち続けるような人は、表舞台で活躍することはありません。自分の欲に素直だから、自分の思い通りにやりたいから成功者になれます。仮に100%自分をコントロールできるなら、その人は何も望まず、ただ静かに生きていくだけ。
私にも欲はあります。むしろ欲に塗れた人間で、いつもあれもこれも欲しいと思っていますし、美味しいものを食べる欲に抗うことはできません。ただ、本質的な部分でいえば「自分にしか興味がない」という一面もあります。自分が成長できているのか、理想の自分でいられてるのかだけを考えています。
モテたいとかお金持ちになりたいとかいう欲はなく、いかにして毎日を面白おかしく生きるかしか興味はありません。ただ「面白おかしく」の中身がちょっと周りと違うんだろうなと思うことはあります。私は仕事が好きですし、消費よりもクリエイティブを望みます。
だから、基本的に休日というものがありません。365日毎日何かを生み出し続けている。だから、1日テレビを見ているとか、テーマパークに遊びに行くとか、そういうことに興味がなく、その傾向は年々大きくなっています。クリエイティブになるには消費行動も必要という人もいますが、私はそうは思いません。
ラジオのパーソナリティがオープニングトークのためにどこかに出かけたみたいな話をしているのを時々耳にしますが、人間は生きてるだけで考えさせられることは無限にありますし、目の前にある紙屑ひとつだってテーマにして文章を書くことは可能です。
もちろん個人ブログとラジオでは求められるもののクオリティやテクニックがまったく違うので、私ならオープニングトークで困ることがないなんて話ではありません。ただ、いつも考えながら生きていれば、語りたいことのために消費をする必要はないということを伝えたいだけ。
ただ、その状態になっても、人間の本能をくすぐられるような欲には敵わないんだろうなとは思います。自分が誰かを好きになることを論理的に否定するというのは、この歳になってもできそうにありませんし、減量しなくてはいけなくても、つい食べすぎてしまいます。
自分をコントロールしきれないから人生は楽しい。ただ、欲望に対して盲目的にならないことも大切。欲しいからといって手を出して、すべてを失うなんていうのは誰にでも起きること。ただ、すべてを衝動的にするのではなく、ときには立ち止まって考える。それができる自分でありたいところです。