練習量:ケガをするのはシューズのせいではない

かつてランニングシューズに対して「ケガの原因」として、徹底して嫌っていた人たちがいました。おそらくその人たちは今でも自分たちの正義を正当化するために、ランニングシューズを悪だと信じているはずです。別に誰が何を正義としていてもいいのですが。

厚底シューズが出てきたばかりの頃は、厚底シューズが「ケガの原因」にらるということで、トレーニングは薄底ですべきという風潮が広まりました。ところが「レースが厚底ならトレーニングも厚底であるべき」という流れになり、厚底はケガをするという考えは薄れてきました。

そうなってくると今度は「薄底は衝撃を吸収できないからケガに繋がる」みたいなことを言い出す人が出てきました。すべてに共通しているのは「シューズのせいでケガをする」という考え方です。でも、ランニングシューズがケガを呼び込むわけではありません。


ランニングにおいて、ケガをするのは100%ランナーのせいです。どんなシューズを履こうがケガせずに走ることはできますし、どんなシューズでもケガを100%防ぐことはできません。裸足でもケガをするわけで、ケガをするかどうかはシューズとは関係ありません。

ではなぜランナーはケガをするのか。答えは簡単です。自分の許容範囲の見積もりを間違っているからです。ランニングに限らず、体を鍛えるというのは、「破壊と再生」により行われます。高い負荷をかけて組織を壊し、その再生の過程で成長が起こります。

その最たるものが筋肉です。筋力を上げるために、筋肉を壊すわけです。裸足でも厚底シューズでも考え方は同じです。壊すためには高い負荷をかけなくてはいけないわけですが、「どれくらいの負荷をかけるか」で、ケガするかどうかが決まります。

体が耐えられないくらいの負荷をかければ、膝などの関節を守れずに故障するわけです。ただ、何を履くかによって体への負荷は変わってきます。裸足と厚底シューズでは、同じスピードで走ったときの衝撃が違うので、履くものによって許容範囲は変わります。

ただ、自分の許容範囲を把握して、その範囲内で走っていればケガすることはありません(転倒などによるケガは除きます)。多くのランナーは自分の許容範囲を把握せずに、頑張れば頑張るほど速くなると信じて、許容量を超えた走り込みをしてケガをします。

これはランニングシューズを変えたときに起こりやすいこともあり、「厚底は」とか「薄底は」みたいな話になります。でも、悪いのはランニングシューズではありません。悪いのは100%ランナーです。そのシューズでのトレーニングに見合う体づくりをしないから、ケガをします。


裸足ランニングを始めたらケガをしなくなったみたいな話がありますが、そのほとんどが月間走行距離やランニングペースが落ちたから、ランニングによる負荷が許容範囲内に収まっただけのことです。厚底でケガをするのは、それに見合う体づくりをしていないだけのことです。

本来、体づくりにはとても長い時間がかかります。フルマラソンを走れるようになるには3年はかかります。フルマラソンに向けて、月間走行距離を300kmにするには、1〜2年はかかります。でも、ほとんどの人はそこを無視して練習量を増やします。

繰り返しになりますが、ランニングシューズのせいでケガをすることはありません。すべて自分の見積もりの甘さが原因です。それでもランニングシューズのせいでケガをすると主張されるなら、後学のためにエビデンスもしくは運動生理学としての根拠を示してくれると助かります。

著:本橋恵美
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