
6月に入り、パーソナルトレーニングの依頼が減ってきましたが、これはもう予想通りなので焦りはありません。次に依頼が始まるのは9月からで「フルマラソンにエントリーしたのですが」と、数ヶ月前になってからどうにかならないかと相談されます。
それでも3ヶ月でNAHAマラソン完走者を2/2で出した実績があるので、普通のフルマラソン完走くらいであれば、教えられないこともありませんし、直近の依頼は本人の危機感によるものなので真剣度が違って、それはそれで教え甲斐があります。
ランニングを教えるにあたって、一番難しく感じているのは、感覚を言語化して伝えなくてはいけないという点です。私は理論派みたいな顔をしながら感覚でランニングをしているので、これが思いのほか大変です。ライターをやっていなかったら成立しないところでした。
感覚でやってきたことを言語化するのに、「この表現では伝わらないかも」ということを考えながら言葉にしています。そうやっているうちに、自分の中で気づくことが多々あります。最近では「蹴る」と「押す」の違いに関する気づきがあり、自分のトレーニングでも試行錯誤しながら確認しています。
マラソンのような長距離を走る場合、「地面を蹴るのではなく、押しながら走る」というのを、パーソナルトレーニングを始める前から、何人ものランナーにアドバイスしてきました。裸足ランニングを教えるときにとても重要な感覚でもあります。
でも、ほとんどの人は「蹴る」と「押す」の違いがわかりません。いや、私自身もわかっていませんでした。「蹴る」は「蹴る」だし、「押す」は「押す」と体が判断するので、言葉にしてその違いを説明できませんでした。でも、ようやく自分でも理解できました。

「蹴る」は太ももが主導であり、「押す」は足裏が主導になります。主導というとわかりにくいのですが、足を動かすときのきっかけが「太もも」なのか「足裏」なのかという話です。ほとんどの人は太ももの筋肉で走ろうとします。でも、フルマラソンは筋力ではなく反発で走ります。
足裏で地面を押したときの反発力を推進に変えます。これが本当に伝わりにくいのですが、たとえば縄跳びなんかは、太ももではなく地面からの反発力を使って跳ねています。それと同じことをランニングで行うわけです。軽く膝を曲げて着地して、膝を伸ばす勢いを利用して地面を押して跳ねる。
これをできるだけ噛み砕いて説明するのですが、1時間もあればほとんどの人は走り方が大きく変わります。もちろん定着するには本人の走り込みが必要ですが、これまでの太ももを使った走り方をしなくなったことで、走りが軽やかになるわけです。
そうなれば後は走り込みをするだけなので、私はお役御免になってしまうのですが、それで走れるようになるならそれでいいかなと。ランニングなんてそんなに難しいものではなく、多くの人がやり方を間違っているだけのことなので。
そして、「蹴る」と「押す」の違いを言語化できるようになったことで、私の階段レースの取り組み方も変わってきました。マラソンは「押す」でやってきましたが、階段は脚を持ち上げる必要があるので、太もも主導になっていたのですが、これが違うのではないかという気付き。
今は階段も「押す」で上るように心掛けています。まだまだぎこちなく、推進力にロスがありますし、何よりも太ももの裏側やふくらはぎの筋肉がまったく足りていません。でも、この先にひとつの正解があると確信しています。その答え合わせのために、9月は「やんばSKYRUN」に出場する予定です。