
マクドナルドのハッピーセットを中国人や転売ヤーが買い占めていると話題になりました。北京に滞在中に日本人と中国人の「モラル」や「禁止」に対する考え方の違いを感じることが多々あり、マクドナルドの件も思い当たる節があったので私なりのコメントをしておきます。
日本人にとって「禁止」というのは、かなり重みのある言葉です。「絶対に守らなくてはいけない約束」といったニュアンスに近く、それに対して違反した場合には重たい罰を受けることを意味します。たとえば「侵入禁止」と壁に書かれていれば、その先に進む日本人はほとんどいないはずです。
ところが、中国において「侵入禁止」というのは、あまり重みのない言葉で「軽めの警告」といった感じに受け取っているシーンを多々見かけました。わかりやすい例を挙げるとすると、万里の長城のルートに「侵入禁止」と記載されていても、それを守る人はほとんどいません。
「禁煙」も軽視されやすい言葉で、飲食店の壁に禁煙と記載されていても、中国人は気にすることなくタバコを吸います。最近の北京ではタバコを吸っている人を日本並みに見かけなくなりましたが、少し郊外に行くとそんな光景を当たり前のように目にします。
日本のホテルの部屋で中国人がタバコを吸って問題になることがありますが、「禁煙」という禁止事項に対する感覚が根本的に違うわけで、その点を理解しないとこの問題が解決することはありません。この場合、「禁煙」と説明するだけでなく、吸った場合の罰金も提示し、署名してもらう必要があります。
なぜそんな面倒なことをしなくてはいけないのかと思うかもしれません。「郷に入っては郷に従え」であり、日本に来たなら日本のルールに従うべきだという気持ちもわかります。でも、そこまでしないと「やってはいけない」に対する重要度が伝わらないわけです。

難しいのは悪意を持ってルールを破る人もいるということ。禁煙の部屋でいえば、日本人でもわかっていてタバコを吸う人はいます。「吸いましたよね?」と問いただしても「吸っていない」の一点張り。でも吸ったかどうかは匂いでわかります。
中国人の中にもそういう人がいるのも事実。それに加えて「絶対にやってはいけない」という理解をしていない人がいて、部屋でタバコを吸う人が出てくるわけです。前者はどうにもなりませんが、後者は対策次第でなんとかなります。でも感情的に両者を一緒に考えてしまうから、「中国人は……」となってしまいます。
別に無理して中国人を好きになる必要はありませんし、私も周りの人に対して「中国人はいい人が多い」とか「中国に行くべき」なんて押し付けをすることもありません。ただ、反射的に中国人の言動を嫌うのではなく、なぜそうなったかを追求していくのはとても意味がある行為だと感じています。
仲良くならなくてもいいけど、理解しようと努力することは大切です。そして、自分の常識を押し付けるのではなく、従ってほしいなら丁寧に説明すること。中国人に限ったことではなく、文化が違う国から来た人たちとコミュニケーションをとるにはそのスタンスは必須です。
もちろん「関わらない」というのも選択肢のひとつです。サービス業をしているなら「中国人お断り」とするのも自由。でも、相手のことを理解しようとする努力は中国人だけでなく、日本人に対しても求められる行動のひとつ。
これだけ多様化が進んでくると、考え方の違いがさまざまな場面で顕になります。そのとき拒絶して不和を維持するのか、それとも一歩踏み込んで握手するのかを考えたとき、後者のほうが明らかに人生が楽しくなります。人生が楽しくなることが正しいわけではありませんが。
