
マイルを使ってのフライトだったこともあり、万里の長城マラソンからの帰国便の座席指定を忘れていました。その結果、非常口の座席を設定されたのですが、この座席は足元が広い代わりに、離着陸時にキャビンアテンダントさんと向き合う恥ずかしさがあります。
本来なら3席のうちの真ん中の席で、キャビンアテンダントさんと完全に向き合う位置でしたが、幸い通路側の席が空いており、そちらに移動してもいいですよと。キャビンアテンダントさんも正面に人がいないほうがよいだろうし、渡りに船ということで。
ただ通路側に移ったことで、問題がひとつ発生しました。通路を挟んだ反対側の席には小さなお子さん連れの中国人夫婦。夫婦はともかく、ちびっ子は構わずにはいられません。飛行機なので当然グズったりするわけですが、そのたびに変顔をしたりして気を逸らす任務を自分に課してしまい、慌ただしいフライトに。
もっとも、眠さが最大級だったこともあり、安全のためのビデオが流れるころにはうつらうつら。気がついたらもう空の上にいました。おかげで上昇中の気まずい時間を回避できましたが、あっけなく北京を離れてしまうことになりました。
帰国便では映画を観ると決めていたので、目が覚めたらすぐにスタート。帰国便は2時間半しかないので、ゆっくりしていたら映画のクライマックスで到着するなんてことになりかけません。今回チョイスしたのは『おいしくて泣くとき』。食いしん坊の本能がそれを選ばせました。
内容はここでは触れません。ただ、とにかく涙が止まりません。それも割と序盤から。泣くのはまあいいんです。50年近くも生きてくれば、涙腺もゆるゆるなわけで、必要以上に想像力が働いたのもあって、気がついたら頬が濡れてしまいます。

ただですね、自分の前に座席がないから、泣いている顔を見られるわけです。キャビンアテンダントさんはもちろんのこと、トイレに行って戻ってきた人にも。さすがに恥ずかしいわけですが、涙を止める方法がありません。せめて頬を伝う前に指で拭うのが精一杯。
それでいて、隣でちびっ子がグズるからそちらも相手をしてですね。もう感情がごちゃごちゃになって、最終的にはもうどうでもいいやと思ってエンディングまでしっかり観ました。もう完全に不審者でしたが、もう会うことのない人たちなのでよしとします。
いい年齢になったなと思います。わかりやすく心が動かされますし、それでいて自分を客観視もできる。恥ずかしい自分を隠す必要もなく、ありのままの自分でいられる。まだ対人だと斜に構えてしまいますが、私にしてみれば大きな変化です。
そして、やはり思うわけです。誰かの心を動かせる文章を書きたいなと。これまでも、そのような文章をいくつか書いてきました。ただ、それらは狙って書いたわけではありません。私の感情を抑えきれず文章にしたものが、特定の人に心に刺さっただけ。
だから、それをできるだけのポテンシャルはあるはずなのですが、再現性がないというか、偶発的にしか書けていないのが現状。しかも文章を書くのが上手くならばなるほど、心を動かす文章から遠ざかっているような気もしています。
それでも自分自身の感情の振れ幅が広がっているのも間違いなく、きちんと心の声を聞きさせすればいずれ書けると信じている自分もいます。もっともそんなことできなくてもライターとしてやっていけます。たがら、今やるべきことは、正しく積み重ねることだけです。
