
愛媛マラソン翌日のニュースで、「温泉に入ったら疲労がいつもよりも少ない」というニュアンスのことを、マラソン参加者の1人が口にしていました。松山市民にしてみれば嬉しい言葉なのかもしれんが、温泉に体を治癒する効果などありません。
温泉にあるのは疲労感を抜くことと、肌に影響を与えることだけ。肌がツルツルになることはあります。アルカリ性のお湯は肌の表面を溶かすので、古い角質などが取り除かれるためです。それくらいの効果はあります。でも、損傷した筋肉を回復させる力はありません。
そんなものがあるなら、骨折した人は毎日温泉に入っていればいいのです。それをしないのは、医学的に効果が認められていないから。湯治というのもありますが、あれは「何もしない」ことで、回復を促しているだけ。湯治に来ていれば、肉体労働をすることもありません。
この疲労感と疲労については、これまで何度も語ってきました。ランニング業界もタイミングを同じくして、そのふたつを明確に分けるようになってきました。今は「疲労が抜けた」なんて口にするのは、一般のランナーくらいになりました。
少なくとも、リカバリー関係に携わる人が、そう表現することはなくなりました。広告代理店くらいだとまだ混同しているともありますが、メーカーの担当者は明確に言葉を使い分けています。リカバリーウェアを手掛けている人たちも、一部を除き変化しています。
同じような話で「アスリートは体脂肪が低いから免疫力が低い」と、一般の方の中には常識のように言葉にする人がいます。これも何度も繰り返してきますが、体脂肪と免疫には関係がありません。体脂肪率が2桁でも1桁でも免疫力は変わりません。

ただ、アスリートは体を追い込むので、それによって免疫力が落ちます。アスリートでなくても、一般のランナーもそれは同じで、フルマラソンを走ったら免疫力が落ちます。レース後に風邪をひきやすいのはそのためです。決して体脂肪は関係ありません。
でも、多くの人は体脂肪の少なさが免疫力の低さにつながると信じています。それを少しずつでも変えていくのがライターの仕事ではありますが、間違った常識というのはなかなか消えていくことがありません。むしろ「知識」としてマウントするのに使われることすらあります。
別に他人のことだからどうでもいいのですが、間違った常識が広まると、記事の書き方に気を使います。まず常識を論理的に否定して、それから正しい情報を伝えないと、読者は納得してくれません。しかも相手を傷つけないように否定しなくてはいけません。
人はみんな自分が正しいと思っていて、否定されたり、知識でマウントを取られるのを嫌います。それなのに、情報の更新はサボりがちで、いつのまにか古くなった過去の常識を引きずり続けるわけです。それは私も同じこと。
知識や知恵を武器にして生きている私もの武器が過去のものになっているのに気付かず、上段に振り構えることをしたりします。恥ずかしいことこの上ないのですが、そうやって学ぶこともあります。失敗したり、恥ずかしい思いをして人間は成長します。
難しいなと思うのは、間違っていることを指摘してくれる人が年々減ってきているということ。だから、ズバッと本音で語ってくれる人の存在がありがたかったりするわけです。そして、こう思うわけです。「指摘しにくい人にはならないようにしよう」と。
