
フルマラソンのサブ2が達成されました。時間の問題と言われていましたが、最も簡単に、しかも2人も2時間未満での完走。とても素晴らしい記録ですが、それと同時に感じたのはマラソンのタイムは完全に道具で決まる時代になったことを少し寂しく感じます。
今回の記録は選手のものですが、誤解を恐れずに書くなら、今回の記録はアディダスによるもの。2人の選手が履いた最新のランニングシューズ「ADIZERO ADIOS PRO EVO 3」は片足100g以下。超軽量で反発力やクッション性は従来のモデルを超えているスーパーシューズになります。
私はずっと「軽いは正義」と言い続けてきましたが、世の中には「シューズには適切な重さがあり、軽すぎてもいけない」と主張する人たちもいます。でも、今回で証明されました。同じポテンシャルを備えたシューズなら、軽いほうが有利であるということを。
1歩で削れるスピードは0.01秒にも満たないかもしれません。でも、その差が効いてくるのがフルマラソンという競技。だからこそ、どのメーカーも厚底化の後に軽量性を追求してきました。厚底化したときは「重くてもクッション性が大事」ということで始まった厚底化ですが、最終的には「軽いは正義」だったわけです。
私がワークマンの980円シューズでサブ3.5ができるとレース中に感じ、実現したのもシューズに軽さが備わっていたからです。タイムを出すことだけを考えれば、軽くて悪いことなどひとつもありません。耐久性は損なわれますが、F1レースで消耗していくことを嘆く人などいません。
勝つための最適解を探した結果、1レースで使い物にならなくなっても、最速を出せるシューズが求められる時代になったわけです。ただ、それはプロとアマチュアの壁になります。1レースしか使えないシューズを手にすることができるのは、限られた選手のみ。

もちろん、「ADIZERO ADIOS PRO EVO 3」は一般発売もされます。でも、手を出すのはYouTuberなど、「普通ではない人」に限られます。実業団レベルの選手でも契約の問題は別として、自分で手に入れてレースで使うかどうかは迷うはずです。そして、そこに明確な格差が生まれます。
実質的にメーカーが提供してくれる選手でないと使えない。ただ、それを批判や否定したいわけではありません。ただ事実を述べているだけ。そういう段階にやってきたというだけのことで、それ以上でもそれ以下でもなく、そしてこの流れは加速していくはずです。
今回のことでランニングシューズメーカーは2つの選択肢を選ぶしかなくなりました。ひとつはアディダスのように、限られた選手のためのスーパーシューズを開発する。そしてもうひとつは「誰でも手に入れられるスーパーシューズを開発する」のどちらかです。
おそらく多くのメーカーは前者を選びます。市販はするけど購入するのは現実的ではない。そんなシューズを開発して、契約選手にとにかく2時間切りを達成してもらう。そうしないとランニングシューズが売れなくなるのは、ナイキのヴェイパーフライが証明しました。
ただ、こういうときに先の先を読んで動くのがアシックス。おそらくアシックスは前者の開発をしながら後者も開発するはずです。なぜなら、アシックスは「すべてのアスリート」をサポートすることを軸としているから。一般のランナーを最も大切にするのがアシックス。
それをする資金力と技術力も備わっています。ただ、今回の記録は「ADIZERO ADIOS PRO EVO 3」だけで達成したわけではありません。ウェアも特別なものを使用していたはずで、そこに選手の積み重ねとポテンシャルが加わった結果。スーパーシューズだけでは勝てない。それもひとつの真実です。
