マラソン大会の完走メダルは何のためにあるのか

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横浜マラソン2017が台風の影響で中止になり、どのような対応をするのかなと思ってみていたら、思った以上にしっかりとフォローをしているようです。

インターネット上では「返金しろ」というようなコメントが見られましたが、マラソン大会に出るということがどういうことなのか、きちんと理解してもらいたいと思いますし、理解できるようにわたしも情報発信をしなくてはいけない。そう感じた出来事でした。

それはともかく、今回横浜マラソンが発表した内容に、今年走れなかった人で来年完走したら、今年の完走メダルももらえるという、意味の分からない項目がありました。

おそらく、参加者の一部から「希望者に完走メダルを配ったらどうか?」というニュアンスのことを言われ、アイデア出しをしたか、偉いさんの鶴の一声で決まったのでしょう。

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今回の一連の対処を見ていると、とにかく火を消すことばかりにとらわれすぎている気がします。いろいろな意見が出されたのでしょうが、できるだけ角が立たないようにとへりくだり過ぎている感があります。

当たり前のことですが、完走メダルは完走したからもらえます。

そして、完走メダルそのものにはほとんど何も価値がありません。それを手にするための過程に価値があるのであって、完走メダルはその過程を思い出すための鍵のひとつに過ぎません。

わたしはランレコードという、完走メダルを飾るためのアイテムを製造販売している会社さんと一緒に仕事をするようになって、完走メダルを飾るのもいいなと思い始めました。

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ところが、飾ることを意識するようになると、ただかっこいいだけのメダルを飾ろうとは思うことはなく、苦しんで手に入れたものや、思い入れのあるものだけを飾りたくなります。

思い入れもなく淡々と走った大会の完走メダルは、自分の中でほとんど価値がありません。

もちろん、これはわたしだけの価値観です。走らなかった横浜マラソンの完走メダルでも、捨てられるくらいならもらいたいと思う人がたくさんいるのでしょう。でもそれをもらってどうします?

捨てられるのがもったいないから欲しい。そしてもらったメダルはどこに行きます?たくさんある完走メダルと一緒に目につかない箱の中に入れられるだけ。

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きっと「もったいないから」と言う人は、家の物置には使わないものが山のように積まれているんでしょう。

わたしは、今回の発案をしたのがマラソンを走ったことのない人なのではないかと思っています。誰なのかは分かりませんが、自分で苦労して完走メダルを手にしたことのある人が思いつくようなことではありません。

横浜市の偉い人が決めたのか、スポンサーの誰かが言ったのかは分かりません。

でもそれが、上意下達のようにそのまま方針となるのが、いかにもお役所仕事だなと感じています。横浜マラソンの運営をしているのはウェエルネスですが、ウェエルネスはいつだって実働部隊であり、主催者のサポート役に徹しています。

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今回の中止でもウェエルネスを叩いていた人が何人もいましたが、中止を決めたのがウェエルネスなのか、横浜市なのかは分かりません。あのタイミングで中止を決めたのもどちらの権限でそうしたのかは分かりません。

でも今回の完走メダルの件や、横浜マラソンで「裸足はご遠慮ください」となった件も、わたしの知っているウェルネスらしくないことを考えると、主導権を握っているのは横浜市なんだろうなと推測しています。

横浜市の偉い人が「捨てるくらいならあげればいい」「そうだ今年走れなくて来年走る人にあげれば、ゴミとしての処分代がかからない」効率化を重視するお役人さんらしい発想だと思うのはわたしだけでしょうか。

完走メダルをモノとしてしか見ていない。そこに込められることになる想いの部分を無視した対応のように感じます。わたしは第1回を走った後に「2度と横浜マラソンは走らない」と決めましたが、横浜マラソンには、どことなくランナー目線というものが決定的に不足しているように感じます。

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もちろん、マラソン大会は慈善事業ではなくひとつのビジネスであり、地域を盛り上げる役割があります。ランナーに良い思いをしてもらいたいという気持ちだけではうまくいかないことは重々承知です。

金曜日のうちに開催中止を発表すればランナーは助かります。だから早めに決定するというのが一般的な考え方ですが、これをビジネスだと考えれば、走らなくてもホテルを予約している人に、なんとかして横浜に来てもらうことを優先するのがひとつの正解です。

だったら、発表を遅らせる。ホテルも収益があり、近隣の飲食店も儲かります。新幹線や飛行機も利益が出ます。「早々に中止を決めてたときに、その損失をどうするつもりだ。責任取れるのか」なんて偉い人に言われたら、現場はどうしようもありません。

実際にそういうことがあったかどうかは分かりませんが、横浜マラソンはランナーのことよりも横浜の活性化を重視しているように感じています。

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税金をつぎ込むわけですから当然経済効果が求められます。ですので、そういうクレバーな考え方のできる運営者やトップがいることも大会を継続していく上ではとても大切なことです。

ただ、そういうのをもっと上手に隠せないものかと思うわけです。もし、石原さんが都知事のときに東京マラソンが中止になっても完走メダルをランナーに渡すなんて判断はしなかったでしょう。

「馬鹿言っちゃいけない。完走していない完走メダルを手にすることに何の意味がある」メダルを欲しいという人や、メダルを配るべきだと言った人をそう叱責したんじゃないかと思います。

わたしは決して石原慎太郎さんが好きなわけではありませんが、少なくとも彼はランナー目線をとても大切にしていましたし、それを感じさせる行動をとっていました。

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それが東京マラソンを大成功に導きました。

後に続く都知事の東京マラソンへの関与の仕方は本当にひどいものがありますが、その後の都知事なんてお飾りでいいくらいに、しっかりとした組織にして退陣されたので、東京マラソンは今もランナーのための大会として常に進化を続けています。

横浜マラソンも東京マラソンを目指す、東京マラソンをライバル視するのであれば、もっと根本的なところから変わらなくてはいけないように感じます。ただ、申し訳ないですがしばらくは変わることはできないように感じています。

ランナーに対するリスペクトが足りないことに対して、「じゃあ今日からリスペクトします」というわけにはいきませんよね。そもそもそういうのはリスペクトとは言いません。

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ですので、横浜マラソンは東京マラソンを目指すのではなく、徹底して我が道を行けばいいんだと思います。それをよしとするかどうかはランナーが判断します。

素晴らしい判断と思うランナーは、おそらく来年もエントリーをするのでしょうし、わたしのような偏屈なタイプは「やっぱり関わるものではない」と距離を置き続けるだけのことです。

世の中にはいろんなタイプのランナーがいます。

全員に対していい顔はできないというのが、運営者の苦悩だとは思います。でも物事の本質を見落とし、目先の利益だけを追求して成功した例は古今東西どこにもありません。

今回の件に関して「馬鹿言っちゃいけない」と叱責できる人がいない、そういう声が聞こえてこないこと。それが横浜マラソンがこれからも抱えている大きな問題のひとつのような気がします。


男の粋な生き方
著者:石原 慎太郎

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