葛西紀明1972年6月6日生まれ。今年8回目のオリンピックに出場するレジェンド。
わたしよりも3歳も年上であるにも関わらず、いまだに世界のトップジャンパーとして活躍中。チーム競技で息の長い選手は時々いますが、個人競技でここまで息の長い選手はそうはいません。
45歳なら確実に体力は落ちていきますし、若い頃に簡単にできたことができなくなります。練習だって以前のような回復力がないので、追い込むことができないはずなのに、まだまだ現役で飛び続けています。
その秘密が書かれているのが、すでにベストセラーにもなっている葛西紀明さんの著書『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』です。
ちょうどわたしは「老い」をテーマに勉強をしているところですので、これを読まない理由はどこにもありません。35年間スキージャンプという過酷な世界で活躍し続けたその秘密となると知りたくなるわけです。
ただ、ここでその内容についてすべてを紹介する訳にはいきません。ですので、どのようなことを書かれているのか、そしてわたしが何を感じたのか、ネタバレにならない範囲でレビューしようと思います。
まず、この本は40代50代で運動を続けている人だけではなく、ビジネスマンが手にすべき1冊として注目されています。会社において40代や50代は消耗しきっている世代です。
いまさら叶えたい夢、叶えられそうな夢もなく、会社の中では歯車のように働き続ける。気がつけば体力もなく、何かに立ち向かっていったり、新しいことにチャレンジしようというモチベーションも消えている人が多いと思います。
頑張っても頑張っても報われないのが会社員です。何十億円の売上を1人で稼いでも、プロ野球選手のように何千万円ももらえるわけではありません。その割には朝早くから夜遅くまで働き続けなくてはいけません。
管理職になろうものなら残業代すら出ません。
そんな状態で頑張れという方が無理がありますが、でも自分自身でそこから抜け出すことはできます。まずはしっかり体を整えること。疲れにくい体を作って、その土台の上にモチベーションを積み重ねていく。
そうすることで、ただ過ぎていくだけの毎日が、急に輝き出したりします。
体が整えば、心も整います。心が整えばやりたいことが増えていきます。体力がないと休日は平日の疲れを癒やすためだけにあり、できれば寝て過ごしたいと思っている人が多のではないでしょうか?
わたしが会社員だったころ「会社は体を休めるためにあるんだ」と言っていました。それくらい土日に遊び回り、クタクタになって月曜日の朝を迎えていました。
そういう状態の人は、きっと『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』を手にする必要はありません。すでに疲れないからだと折れない心を持っていますから。
この本に書かれているとても重要なことをひとつだけ書いておきましょう。それは「年齢に見合った努力をする」ということです。
マラソンでも仕事でもスキージャンプでもそうですが、さすがに40歳を超えると、20代の頃のような練習や働き方はできません。でもその頃と同じように結果を出したいと思うと、ただただ努力を積み重ねようとします。
「これだけやったから大丈夫」そう言って、練習に量を求めます。仕事も若い頃のように結果を出すために、とにかく長い時間働こうとします。
でも、40歳以上になると体力には限りがあり、回復力も低下しています。その年齢に見合った努力をすることが大事だと葛西紀明さんは言います。量を詰め込むのではなく質を重視すること。これが大事です。
そして、何よりも頑張らないことが重要だと言います。
日本人は頑張る美学を持っていますが、頑張るということはどこかで無理をしているということです。一時的な頑張りは出来ても、その頑張りを永遠に継続し続けることはできません。それは命を削るような作業です。
頑張るから続かない。しかもその努力が間違ったものだったら目も当てられません。だったら頑張らずに続けるほうがよっぽどいいわけです。
この本では、まず疲れないための体の作り方について説明があります。簡単な運動の方法も掲載されていますが、正直あまり参考になりません。まったく運動をしない人なら少しは役に立つかもしれませんが、簡単な絵と解説だけですので、正しい動きが身につきません。
ただし、何を意識するべきか、何をすべきかということはとても参考になります。まったく運動をしない人なら、ここに書かれていることに従うだけでも、3ヶ月後くらいには体が変わっていることに気づくはずです。
また、太らない体を作るための食事のノウハウも紹介されています。葛西式ダイエット方法が書かれていますが、ランナーですとこれは参考程度にしかならないかもしれません。これまでに世に出ているダイエット術となんら変わりはありません。ただ葛西さんが結果を出しているという魅力がありますが。
ランナーにとって読んでもらいたいのは、そうした体づくりの前半よりも、心のあり方が書かれている後半部分です。折れない心を手にするにはどういうアプローチをすればいいのか、どういう思考で考えればいいのかというノウハウが詰まっています。
ざっと紹介しましたが、なんとなく気づいた人もいると思います。これはよくあるビジネス書、ノウハウ本のようなものであって、本当の本質の部分にまでは触れていません。
これを手にしたことで、ランナーとして大きな変化がおきるかというとそうではありません。どんなビジネス書もそうですが、本を読んで安心しただけでは何も変わりません。
本を読み終えて、そこから自分に役立ちそうなことを実際に試してみる。どんどんノウハウを取り入れてみて、自分なりの言葉で語れるくらいに消化しなければ意味がありません。
でも、多くのビジネス書がそうであるように、『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』に書かれている内容に重さがありません。
学ぶことは無数にあるけど特別なものはない。これが素直な感想です。
学ぶことがあるならいいじゃないかと思うかもしれませんが、こういうビジネス書は20代くらいで卒業すべきです。たった2時間くらい読んだだけで本物が手に入ると思うほうがどうかしています。
もちろん、本代の1404円分くらいの学びはありました。内容は薄くても老いにくい体にするためのキーワードはいくつも散りばめられています。それを文章の中から見つけられる人なら読んだ時間も無駄にはならないかと思います。
とはいえ有益な情報だったと言えるかどうかは、ここからは本ではなくわたしの行動次第ということになります。わたしもすでに40代ですので、いつまでもとっくに若手の時代は過ぎています。
ただがむしゃらに追い込むだけの練習ではなく、もっと質の高い練習に取り組むこと。そして体のケアをきちんと行うこと。わたしが学んだこの2点とあと少しのノウハウをどう行動に移していけるか。大事なのは読んだあとのこれからです。
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