UberEatsの配達で同じ服を着続けて知ったこと

UberEatsの配達ではチェック柄のシャツを着ている。グリーンとホワイトで清潔感のあるシャツをユニクロで2着購入し、自分の体格に合うように丈と幅を詰めたもの。配達ではこの服以外は着ておらず、いわゆるユニフォームと同じ状態にしたわけだが、これが思ったよりも快適だ。

まずウェアを毎日選ばなくてもいい。これまでも、同じ黒のポロシャツ2枚を着回していたから選ばなくてもいいというのは同じなのだが、黒のポロシャツを着ていたときよりも「さあこれから配達だ」といったスイッチが入って、メリハリがある。ジャストサイズなのも心地良い。

ポロシャツは汗を吸って夕方になると臭いがひどかったが、チェック柄のシャツは下にエアリズム マイクロメッシュを着ていて、ほとんど臭わない。清潔感が重視される仕事なので、これはとてもありがたい。下着は一生ユニクロでいいと思うくらい感謝している。

明るい色の服にしたことで、ピック先のお店の店員さんもドロップ先の依頼者も雰囲気が変わった気がする。これは良い変化なのかそうでないのかはまだわからない。ただ、あきらかに以前とは違って存在を意識してもらえるようになった(悪い方に意識されているのでないことを願う)。

まだ覚えられるほど同じ店には行っていないが、これを続ければ何となくでも覚えてもらえるかもしれない。それは応対をしっかりとしないと、悪い意味で覚えられるので注意が必要だが、逆にしっかりと応対ができていれば、覚えてもらうことですべてがスムーズに流れる。

現時点では成功だと思っているが、夏が終わったら次は何を着るか問題が勃発するのだろう。いつまでも半袖というわけにもいかない。

それとは別に思わぬ変化がわたしの中で起きている。見られることを意識してウェアを選んだのは実は人生で初めてのことで、内向的なわたしはこれまで自分が好きな服ばかり着ていた。ところが見られることを意識し、それに反応されたことで欲が出てきたのだ。

「もっとオシャレを楽しんでもいいのではないか」そんな気持ちが芽生えはじめたのだ。普段着の好みは変わらないが、UberEatsの配達するときだけ見られることを意識して、服を選んでもいいのかなと。そう考えるようなると、都内で自転車を漕ぎながら他の人のファッションを見るようになった。

他人の服装を意識して見るようになって気づいたことがある。それは「見られることに無頓着な人と、過剰に意識しすぎている人」がほとんどであること。見られることに無頓着なのは普段のわたしで、反対に過剰に意識しすぎているのは表参道などに集う人たちだ。

どちらにも共通しているのは、他の人から見てその人に適した服を着ていないという点にある。

過剰に意識しすぎている人たちは、ファッション雑誌で研究してトレンドを取り入れた、いわゆるオシャレさんなのだが、流行を着ているだけでそれが馴染んでいない。無頓着な人は言うまでもなく、他の人からどう見られるかなんて考えもしない。

UberEatsの配達員に関しては最悪だと思っている。ハーフパンツで膝が出ていてすね毛が力強く主張している。それでいて服装はヨレヨレのTシャツだったり、黒尽くめだったりする。第一印象が「弱者」なファッションをしている。わたしも少し前までそちら側だったので、あれこれ言える立場にはないが。

誰かに対してマウントを取りたいという思いはないが、下に見られるのは好きではない。だからわたしは服を変えた。それも自分が好きなものではなく、おそらく印象がよくなるであろうデザインの服を選んで。自分の好みだったらチェック柄の服など一生着ないであろう。

ただ、見られ方を意識するだけで弱者ではなくなる。弱者ではなくなるからチップをもらえなくなったのだが、それは仕方のないこと。何かを手に入れるということは、何かを手放すこと。下に見られない印象を手に入れたのだから、下に見られていたときの恩恵はなくなって当然だ。

話がずれてしまった。他の人から見て自分に合っている服を選ぶ。これは思った以上に難しい。自分のことを客観的に判断しなくてはいけないし、センスも問われる。わたしにセンスがあるとは思わないが、少なくとも自分基準で美しいかどうかの判断ができるだけの人生経験を積んできたつもりだ。

大事なのは自分を過大にも過小にも評価しないこと。そして自分に合うと感じたものをユニフォームとして定着させ、周りの応対の変化などから、どう評価されているかを分析する。そういうのはわたしの得意分野なので、いくらでも考えられる。

こういうことを若いうちにできていれば人生はまた違ったのだろうと思うが、周りにどう見られるかを考えるのは仕事だから。もしデートなどする機会があったとしても自分に似合うかどうかは無視して、自分が好きな普段着を選ぶだろう。わたしだけでなく、内向性が強いタイプは大抵どうだろう。

ただせっかく面白くなってきたので、仕事着に関してはもう一歩踏み込んで、周りの目を意識したファッションを取り入れてみようと思う。もしかしたら次は同じ服を2着買うのではなく、同じタイプの柄違いを2〜3着選ぶかもしれない。

同じ服を着続けたことでわかったのだ。大事なのは「いい印象を与えること」であって、そのために遊び心をどう取り入れればいいのか少し理解できた。だとしたらファッションを楽しむためにも、違う柄に挑戦するというのもいいだろう。

もちろん、シューズやマスクももう少し頑張ってみるつもりだ。どう見られるかを意識せずに44年も生きてきたから、途中で飽きる可能性のほうが高いのだが、楽しいと思える間に経験しておきたい。生きるとは経験することなのだから。

もし今度会ったときに、バーバリーのマスクなんかつけていても、生暖かく見守ってほしい。ファッションの知識に関してはまだ中高生と変わらない。20年分のやり直しを始めたばかりだから、きっと迷走もするだろう。それも含めてしばらく楽しもうと思っている。

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