もうSTAY HOMEは過去のもの。台湾映画のバナナパラダイスを観たのは新宿のK’s cinema。少し前に銀座で観た「チィファの手紙」は比較的空いていたけど、この日は84席中60席くらい埋まっていて、映画館も1席飛ばしではなく、受付順の自由席。
台湾好きの人たち向けということもあるが、人の入りは通常通り。観終えて出てきたら、次に上映されるKANO待ちが数十人。4連休を境に明らかに流れが変わっている。精神的恐怖を植え付けられた人は別として、もう誰も密もソーシャルディスタンスを気にすることなく街に出ている。
UberEatsの配達をしていても、人の動きが変わったのを感じている。中国や台湾からの観光客がいないのに、渋谷も原宿も新宿も人が溢れている。もしかしたら、日本人の数だけなら新型コロナウイルス感染拡大前くらいあるかもしれない。
人気の飲食店には行列ができ、その行列にソーシャルディスタンスの概念はなく、コンビニやスーパーの床に貼られた足跡マークを虚しく感じる。理由はわからないが、少なくとも日本では未だに大流行はしていない(終息もしていないが)。
公共の場でのマスクはあったほうがいいのだろう。個人的にはできるだけ外していたいが、たぶんこれはしばらく続くことになる。マスクはしないと決めている人もいるようだが、気の小さいわたしにはそんな度胸はない。ランニング中にマスクをすることはないが、他の場所では着用している。
先日、著名人が食事に行ったときに連れがマスクをしていないということで入店を断られたことがネットニュースになっていたが、本当にムダな争いだと思う。どちらが悪いというのではなく、こんなことで争わなくてはいけなくなっている現状に少し苛立っている。
どちらもが自分の正義を持っているからぶつかる。これはもう社会において仕方のないことなのだが、マスクをするしないという争いは1年前にはなかったことなのに、今では毎日のようにどこかで争いの原因となっている。社会的なエネルギーのロスはとてつもなく大きなものだろう。
SNSなどでも「◯◯に行って、楽しんできました」なんて投稿をするときにも気を使わなくてはいけない。それどころか、そういう投稿に「いいね」することすらはばかられる。2日前にワークマンのCMに映るといった投稿と、バナナパラダイスを観に行ったという投稿を上げたが、いいねの数もコメントの数もまったく違う。
もちろん投稿の内容が違うから純粋に比較はできないのだが、映画に行くということに「いいね」するのは難しい。観光に出かけたとなるとなおさらだろう。世の中の流れはすでに変わっているのにも関係なく、それをアピールするのはよくないことだという風潮はまだ残っている。
ということは、外に出ている人たちは、どこかでいけないことをしているという思いを抱いているのかもしれない。これは健全ではない。外出することが悪いのではなく、よくないことだと思いながら外出することがよろしくない。自分の心にムダなプレッシャーをかけることになるから。
街を歩く人を見ていると以前と同じように思えるのだが、実際にはかなり歪さを含んでいる。わたしはそういう歪さを見るのが好きなので(心が歪んでいるのは知っている)、個人的には楽しいのだが、おそらく社会全体にじわじわとストレスがかかっていき、どこかで爆発する。
地震と同じで、ゆっくりとズレていき、それが積み重なって大きな反発を生み出す。わたしたちも自然界の生き物なので、自然の摂理には逆らえない。どういう形で爆発するのかはわからないが、ストレスが溜まって爆発していいことなどひとつもない。
この社会のストレスを感じ取って、上手くガス抜きするのも国の役割だから、国が何らかの思い切ったことをしてくる可能性はある。だが、それがなかった場合には嬉しくない未来が待っている。脅しているわけではない。備えておいたほうがいいとは思うが。
何にどう備えるか。そんなことは知らない。できることはあるとすれば気を抜かないこと。そして何かが起きたときにパニックにならないこと。それくらいだ。不安を煽るつもりはないが、こういうとき繁華街に行くのはできるだけ避けておいたほうがいい。ただのリスク管理として。
流れが変わっているので、新しい流れに乗って外に出かけるのはいいだろう。やはり経済の立て直しには人の動きは必要なもの。ただ、いまは混沌としている部分が大きく、人が動けば動くほど歪みも大きくなっていく(と感じている)。
こういうときは歪が解消されるのを静かに待つ。
もちろん歪などないのかもしれない。わたしだけが不安に感じている可能性は大いにある。だから戯言だと思ってもらっても構わない。わたし自身ができるだけ繁華街に近づかないようにしているというだけの話だ。もっともUberEatsの配達をしているとそうもいかないのだが。