なぜUberEatsは評判を落とし続けるのか

UberEatsの配達をしていると、一時期よりも注文がかなり減っているのを感じる。配達員が多すぎるというのもあるのだが、街ですれ違う人たちの視線も敵意のあるものも珍しくない。半年前と比べて、UberEatsは明らかに評判を落としている。そしてそれは今も続いている。

昨日のニュースで、UberEatsが提訴されていたのだが、Yahooニュースのコメントも辛辣なものばかり。ちなみにその提訴は2018年に起きた事故の提訴であり、状況がかなり複雑なのではないかと推測している。いま同じ事故が起きた場合には、配達員は保険を使えるのでここまで揉めることはないだろう。

それらの説明もしつつ、現在のUberEatsがなぜ評判を落とし続けているのか、実際に配達している立場から考察してみようと思う。

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UberEatsには傷害補償制度が用意されている

UberEatsは配達中の事故に対して、1億円の対人対物保証を用意している。この保険を使うとアカウントが停止するとかいう噂もあるが、きちんと用意されているし、さらには大阪も東京も自転車保険加入が義務化されているので、事故を起こした時の損害賠償を払えないということはない。

これが2018年と現在の大きな違いだ。UberEatsが日本で始まったのは2016年なので、2018年の時点では約2年が経過しているが、まだそれほど日本国内でも利用者が多くなく、保険などの整備も進んでいなかったのだろう(保険制度があるなら揉める理由がない)。

もちろん、傷害補償制度があるから何をしてもいいというわけではない。だが、事故後のトラブルに対して訴訟になるようなことはない。事故を起こしてケガをさせた場合には、保険を使って損害賠償をししっかりと謝罪する。後遺症でも残らない限り、それ以上大きな問題になることはない。

例えばクロネコヤマトは2019年に2件の対自動車、4件の耐二輪車、そして2件の対歩行者の交通事故を起こしているが、これがニュースになり「だからクロネコヤマトは……」と叩かれることもなければ、事故のせいで利用者が減ったという話も聞かない。

それだけクロネコヤマトは信頼されていて、UberEatsは信頼されていない。それだけのことなのだが、同じ配達をしていて、なぜそんなに差が出るのだろうか。

UberEatsは面談もないし指導者もいない

UberEatsの評価が下がり続ける最大の理由は、誰でも簡単に始められるという点にある。通常の会社員やアルバイトは面接があって採用するかどうかを決めるが、UberEatsは説明会すらなくインターネット上の手続きで誰でもスタートできる。

これによって社会のセーフティネットにはなっているのだが、その結果として配達員の質に大きな差が生まれている。きちんと仕事として考えている配達員もいるが下記のような人たちも少なからずいる。

  • ルールを守ることの意味が理解できない人(社会不適合者)
  • 日本語が不自由な外国人

このような人たちのすべてで配達の質が悪いとは言わない。少なくともわたしは社会不適合者で会社で働くことが苦手でライターになり、営業活動をするのが面倒だからUberEatsで食いつないでいる。自分で言うのもあれだが、こういうタイプの人は暗黙のルールというものが苦手だ。周りに合わせることも不得意としている。

そして最近増えているのが、日本で行き場を失った外国人労働者たちだ。いきなり「明日から来なくていい」と言われて東京に放り出されたものの、自国に帰る飛行機もない。仕事もないから犯罪をするかUberEatsの配達でもして生活費を稼ぐしかない。そういう意味ではUberEatsの配達を選んでいるのはまだいいほうだ。

ただUberEatsのルールも自転車運転のルールも知らない。保温バッグに入れずにデリバリーをする人もいるし、置き配になっていてもメモが読めないのでチャイムを鳴らして手渡ししようとすることもある。駅前などに集団でたむろっていることもある。外国人が集団でたむろっていたら、それだけで不安になるのが日本人だ。

根本的な問題は、新しく始める人にUberEatsのいろはを教える人がいないことにある。UberEatsの配達は個人事業主なのでルールやマナーを教えてくれる上司はおらず、UberEats自体も配達員に通達せずに黙ってルールを変えることもある。ただでさえ現場は混乱しているのに、トラブルにならないように情報収集して周りに合わせることができない人も一定数いる。

日本人は決められたルールがあり、それに従うのは得意だが、自分で考えて自分で動くことが下手な人が多い。そこに日本語が不自由な外国人が混ざっている。その結果利用者の満足度が下がっていき「もうUberEatsは使わない」という流れになっているように、わたしは感じている。

日本では自転車の運転環境が整っていない

もうひとつ「UberEatsは自転車の配達が荒い」と言われているが、最近はそこまでひどくないと感じている。ひいき目なしでも一般人の運転のほうがひどいと感じることが多い。信号無視をする配達員も減ってきたし、点滅したら止まることも多い。

わたし自身は自粛期間明けからは以前のように、全力で自転車を漕がなくなった。気温が上がって体力の消耗が激しくなったというのもあるが、頑張って自転車を漕いでも、普通に買い物に行く感覚で自転車を漕いでも収入がそれほど変わらないと気づいたのが大きい。

だから、スピードを出して配達することにそれほど意味はないと考えている。それで事故でもしたら配達できなくなる可能性もあるので、リスクも高すぎる。今でもスピードを出している配達員もいるが、事故は確率で起こるのでいずれ事故に会うことになる。

新人配達員はそのことを誰からも教えてもらえないので、配達を始めたばかりはお客さんからの評価を下げたくないので、とにかく急いで運ぶ。少しでも早く届けたいという正義感もあって頑張るし、「◯回運んだら◯円」というインセンティブもあるのでとにかく急ぐ。

指導者がいて「急いでも意味はないよ」と言ってあげることができれば、サイクリング感覚の配達員が増えて危険な運転は減るのだが、残念ながらUberEatsの仕組みがそうはなっていない。むしろ配達回数を煽る構造になっているので、急ぐ配達員がどんどん増えていく。

そしてもうひとつUberEatsの配達員には大きな問題がある。それは日本の道路が自転車に優しくないということだ。都内だと自転車専用レーンがあるのだが、それらが駐停車中の車に塞がれていないことはない。そうなると車道側に広がるしかなくなるが、後ろからくる車の運転手にしてみれば、単純に怖いだろう。

タクシーなどはわざと配達員すれすれを狙って走ってくることがある。彼らにとってUberEatsは邪魔な存在でしかない。だがUberEatsの配達員にとってもタクシーはやっかいな存在だ。幅寄せくらいならまだいいほうで、タクシーは交差点で客を乗せたり下ろしたりして、自転車の進路を防いでくる。

強引に追い越しをしてきて前に入った結果、目の前で急停車してお客さんを下ろすようなこともしてくる。わたしはお互い様だと思っているが、これがこわくて歩道を走っている配達員もいる。でも急ぎたいから歩道を猛スピードで走るし、歩行者感覚で信号無視もする。

これはわたしの感覚だが、車道を走っている配達員が信号無視をすることはほとんどない。これは車という意識が高まるからではないかと思っている。だからちゃんと車道を走ればずいぶんと評価が変わるのだが、車道はとにかく自転車に優しくない。

だから危険運転をしてもいいという話ではないが、世の中のすべてが善人ではないのだ。無理な願いだとはわかっているが、もう少しだけ自転車に優しい街になればと期待している。

どこかでテコ入れをしないとまずいことになる

半分近くは配達員の言い訳のような内容になってしまったが、問題は現在のUberEatsのやり方では、ルール違反がやりたい放題の状態にあり、ルールを守らない人のほうが稼げることにある(事故のリスクは上がるが)。とはいえ薄利多売をしているUberEatsにそれらを取り締まる余裕はないだろう。

だからこれまで十分な対策をしてこなかったのだが、その結果が想像以上にUberEatsの評価が下がることにつながっている。正しく行えば社会インフラになり、多くの人にとって好ましい存在になれるサービスなのに、運営の思惑通りにいかず、いまさらコントロールしきれない部分が出ているのだろう。

シェアを確保するためにはとにかく配達員の数が重要で、どんな人なのかもチェックすることなく配達員になってもらう。その結果、利用者だけでなく歩行者としてUberEatsの配達員とすれ違う人にも悪い印象を与えている。そろそろ本気で手を打たないとまずいことになるのだが、手を打つとUberEatsの収益が激減する。

ただでさえ薄利なのに(ときにはUberEatsの持ち出しになる配達もある)、収益が下がるとなるとサービスの継続すら難しくなる。でもこのまま進めば、評判はさらに下がって、出前館などの他のサービスに取って代わられてしまう。経営者は悩ましいところだろう。

とはいえ何らかの手を打ってくるのは間違いない。おそらく赤チャリのUberEats契約がなくなるのも、対策のひとつだろう。赤チャリの事故やトラブルの率が高いのだと思う。あれだけ整備されていない自転車があったら、1日数件の事故があってもおかしくはない。

この勢いだとUberEatsの存在意義が問われるくらい、マスコミからの叩きを受ける可能性もある。これをどうやって「UberEatsは必要」という声に変えていけるか。そのためには配達員の質の向上は絶対に必須なのだが、その方法がないという現実。UberEatsはどんな手を打ってくるか、1人の配達員として楽しみにしている。

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