人間は1日60kmなら毎日でも走ることができる。そう言うとウルトラマラソンを走るランナーでさえも怪訝な表情を見せます。100km走れるなら60kmを毎日走るくらいなんてことないはずですが、まずそんなことをしたこともない人のほうが圧倒的に多いのが現実です。
わたしが旅ランを始めたのはもう何年も前ですが、きっかけはセルジュ・ジラールさんというフランスの超長距離ランナーがパリから日本まで走ったときのインタビューでした。
「1日60kmであれば人間は毎日走ることができる」というニュアンスのことを彼が話したことで、わたしの中でそんなものなのかと、なぜかその考え方がスッと入り込んできました。
そして最初に旅ランをしたのが2011年の夏。グーグルマップを眺めていたら、新潟から静岡までの距離がちょうど300kmあることに気づき、1日60kmなら5日間で走れるはずと、大した準備もせずに新潟に向かったのが始まりです。
1日60kmなら走れるという言葉を一切疑わず、走り始めたわけですがやってみれば意外とできるものです。ただほとんどの人が試したことすらないというだけの世界がそこにはありました。
42.195kmをいかに早く走れるかを競ったり、100kmを14時間以内に走れるのを誇る人がいるのに、1日60kmを毎日続けるというチャレンジを行う人がほとんどいません。
そして実際にやってみると、そのことがそれほど難しいことではないのに、周りの人がすごいことをしていると注目してくれることに気づきました。
2011年に走り始めたときは友だちの一部が応援してくれましたが、ランニング界での注目度はゼロです。そんな状況で始まりましたので、わたし自身も特別なことをしているという意識はまったくありません。
今回の奥州街道も初日こそ85kmでしたが、残りは60kmと50kmですので、多少無理はしたものの限界まで自分を追い込むというものではありませんでした。
ところが一緒に走ってくれた人たちの発信力が大きいため、そこそこの反響があり「あれ何やってるの?」という声やたくさんの応援を受けることになったことが、わたしにとって大きな驚きでした。
挑戦やチャレンジという言葉を使ってはいるものの、わたしの中では難しいことをしているつもりもなく、周りの人も同じように感じているのだと思っていたのですが、どうやらそうではなかったようです。
ただ、そのことで200km近くを数日で走るということの難易度が上がるわけでもなく、やはりやっていることは難しいことではありません。繰り返しになりますが、誰もやろうとしないだけのことです。
やろうとしないのは、そこに楽しさを感じないか、最初から無理だと諦めているかのどちらかです。
そういう意味では、わたしが走ることで「あいつが走れるなら自分にだってできる」そう思ってもらい、実際に街道ランをする人が増えていくと面白いのですが、それはまだまだ時間がかかりそうです。
わたしは今回の奥州街道ランをするまで、東海道と日光街道を走っています。それまでは「いずれ五街道を走りきる」という感覚だったのですが、これは早いところ五街道制覇を終わらせて、街道ランの楽しさをもっと広めたいという思いが高まってきました。
そこで今回は「ハダシスト五街道制覇プロジェクト」と命名して、facebookやtwitterで情報発信を行いながら、少し注目してもらおうということを意識し始めました。
東海道や中山道はかなり長い距離で1日60kmでも9日〜10日かかりますので、会社員には難しいのですが、長期休暇に有給休暇を加えれば決して走れない距離ではありません。
奥州街道、日光街道、そして甲州街道は4日あれば問題なく走ることができます。実際に日光街道をわたしは2日で走っています。実はかなりお手軽なのが五街道ランなのです。
何が楽しいのかと言われると難しいのですが、丸1日走ることだけを考えていればいいという状態は、それだけで非日常で、しかもそこにはまだ見たことのない景色が広がり、時にそれは時代という深みも与えてくれます。
走る理由がただ早くなりたいだけであれば、歴史街道を走ることに何の意味も感じないかもしれません。
でもわたしたち日本人の歴史を感じながら、日本中を駆け抜けることができるのはランナーの特権です。わたしはあらゆる街道を駆け抜けるために日々のトレーニングをしています。
どんな街道も走りきれるようになりたいから、マラソン大会で自己ベストを更新しようとあがきます。わたしが走る目的はマラソン大会ではなく、その先にある旅ランを楽しむためです。
1日60kmは簡単だとは言うものの、やはりそれなりの走力は必要です。
ただそこに特別な才能は必要ありません。必要なものがあるとすれば、距離を恐れない勇気さえあれば60kmを連日走ることは驚くほど簡単です。
最近は砂漠マラソンが人気ですが、わざわざ海外の砂漠まで行かなくても、この国には走りごたえのある道がいくつもあります。マラソン大会という形にこだわらなければ格安で走ることを楽しむことができます。
もちろん砂漠マラソンには砂漠マラソンの魅力があります。歴史街道を走ることでは得られない経験をすることも出来ます。ただ自分たちの国がいかに素晴らしいかを知ることも大切ではないかなとは思います。
京都から東京までの500kmは新幹線を使えばあっという間に到着します。これはこれで素晴らしいことですが、新幹線に乗ったのでは見ることの出来ない景色があり、出会うことのない人がいます。
はっきり言えば200kmも走って移動するなんて無駄以外の何物でもありません。
でも人生なんて無駄をいかに楽しむかがすべてじゃないでしょうか。ビジネスの最先端を行く人たちにとって無駄はできるだけ削り取ってしまいたいものかもしれませんが、どう生きたって人生が永遠に続くわけではありません。
無駄を省いたことこで人生が豊かになるわけではありません。むしろその無駄を楽しむことが人生を豊かにしてくれることもあります。
繰り返しますが、わたしでも3日間で195kmを走ることができるのです。この1年間ほとんどフルマラソンを3時間台で完走していないわたしが、ウルトラマラソンも制限時間ギリギリに飛び込むようなわたしができるのです。
わたし以上の走力がある人はいくらもでいるはずです。
もしわたしの五街道制覇プロジェクトによって、何かを感じる人がいれば、ぜひ走り出してみてください。1回で全てを走りきる必要もありません。ただ、2〜3日連続で走るという経験はしてもらいたいところですが。
ちなみに今年の夏、8月11日〜14日までの4日間で甲州街道ランを行います。8月11日に長野の下諏訪をスタートして1日50〜55km計算で4日間をかけて甲州街道210kmを走ります。
もし興味がある人がいれば、まっさらな今年のスケジュール帳の8月11日〜14日に甲州街道ランと記入しておいてください。11日は海の日で休日ですので10日の仕事終わりに下諏訪に向かえば、11日の朝から走ることができます。
もちろんスポット参加もOKです。夏ですのであまり長い距離は走りませんので、歴史街道ランの入門編としてはそう悪くないかと思います。
この夏、自分の可能性を広げる旅ランしてみませんか?
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