鶴巻温泉には何もないが本当に何もないことが魅力でもある

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昨日は東京マラソンの取材ということで都内に行きましたが、一昨日もウルトラマラソン練習会のために都内経由でスタート地点へ。そして金曜日の夜は東京マラソンEXPOと別件で都内に。明後日も都内に行きます。

こうして都内に行く機会が多くなると、鶴巻温泉という僻地に住んでいることが大変だなぁとは思うものの、どう考えても都内で暮らすだけの財力はありませんし、何よりも鶴巻温泉という場所が気に入っています。

もう何度も触れていることですが、鶴巻温泉には本当に何もありません。始めて駅を降りた人は、コーヒーを飲む場所もなく困惑してしまうかもしれません。本屋も隣町まで行く必要があります。

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じゃあもっと便利な場所に住みたいかというと、そういう気持ちは日に日に小さくなっています。

引っ越しをしたばかりの段階では、3年は鶴巻温泉で頑張って、3年後に次のステップをと考えていましたが、その必要性をまったく感じません。少なくとも現段階では生涯鶴巻温泉でもいいかなと考えているほどです。

世の中にはもっと便利な街がいっぱいあるのですが、便利なものが溢れている街で暮らすことが、決して豊かな暮らしにつながるわけではないということはすでに実感とともに明らかになっています。

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豊かさや幸福感というのは絶対的なものではなく、相対的なものです。何ひとつ不自由なく暮らしている人と、いつも苦労をしながら暮らしている人では、豊かさや喜びのハードルが違います。

もちろんわざわざ苦労して生きる必要はありませんが、必要以上に恵まれた環境に身をおくことで、満たされない気持ちになるということは知っておくべきです。

人間の欲は海よりも深く、どれだけ満たしても完全に満たされることはなく、あっという間に新しい渇きになります。豊かに暮らしたければ欲望の連鎖をどこで断ち切る必要があります。いつも足りないくらいがちょうどいい。そう思える自分になりさえすれば、鶴巻温泉のような何もない街が心地よく感じられます。

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そして何もない中にもその魅力を感じられるようになります。山が近くにあり、ランニングのための変化に富んだコースがいくつもあります。様々なものが安く手に入ります。

都会のように選択肢は広くありません。その結果として選ぶ時間を減らすことができます。都会ではひとつのサービスを受けるにしても、もっと良いものはないのかリサーチをして、最も自分に適したものを探す必要があります。

選択肢が多いということは、それだけ時間とエネルギーをロスしてしまいます。そして選択ミスをしたときには、気持ちが大きく下がってしまいます。選択肢がなければ選択ミスは起こりません。

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そんな暮らしはまったく面白くないと思うかもしれませんが、少なくともわたしは毎日をおもしろおかしく過ごしていますし、とても充実した時間の流れの中に身をおいています。

鶴巻温泉のような僻地でフリーのライターをしていると、ほとんど人に会わない日のほうが多いのですが、そういう日々が仲間たちと一緒に過ごす時間をより良いものにしてくれます。

そう考えると、何もない状態というのはとても贅沢な生き方のようにも思えてきます。

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日々迷うこともなく、自分の好きなことに打ち込んで、たまには仲間たちとどうでもいいことで笑いあったり、一緒に走ったりすることができる。そこに不足するものは何もありません。

インターネットが発展する前ですと、とてもそんな暮らし方はできなかったかもしれませんが、時代の流れによって、どこにいるかということはそれほど重要ではなくなりました。

もちろん、これが実家のある松山や九州の山奥とかであれば話はちょっと変わってきますが、鶴巻温泉の僻地具合は決して嘆くほどのこともありません。都内まで1時間で行くことができ、15分も電車に乗れば本屋がいくつもある大きな街に行くことができます。

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家賃が2万円という特殊な環境にあることも、この街で暮らす大きな要因ですが、新宿で同じ家賃で同じようなアパートで暮らせるたとしても、わたしはやっぱり鶴巻温泉で暮らすような気がします。

わたしは変化することを好む性格のため、数年後には別のことを言って、違う場所で暮らしているかもしれませんが、現時点では鶴巻温泉を移動する理由は何ひとつ見つかりません。

もっとも鶴巻温泉はいいからみんなおいでなんてことは言えませんが。本当に何もありませんから。それでも鶴巻温泉で暮らしてみたいという人がいればいつでも案内します。20分も散歩すればすべて把握できると思いますが。


わたしのウチには、なんにもない。
著者:ゆるり まい
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