日光100㎞ウルトラマラソンと競技者として足りないもの

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ウルトラマラソンはなぜか好きになれない。いろいろと理由付けを探していましたが、昨日走った日光100㎞ウルトラマラソンの途中で、重要なことに気づいてしまいました。

ウルトラマラソンを走る人たちは、みんなそれぞれにウルトラマラソンを楽しんでいます。でもわたしはただただきついだけで、達成感も満足感もありません。特に後半はこの世の終わりのような顔をして走っています。

ウルトラマラソンを楽しめる人と、わたしのような苦手とする人はどう違うのだろう。そんなことを考えながら、ずっと走っていました。

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スタート直前に雨が降るなど湿度が高い中、午前4時30分にスタートです。前夜は友だちの実家が経営しているロッジに泊めてもらったため、レース前にしては珍しくしっかり眠ることができました。

ちなみにその友だちの親戚に万里の長城マラソンに参加してくれた人がいて、同じく日光100㎞ウルトラマラソンに参加ということで、久しぶりの再会でした。

スタート前にお腹が少しグルグルしたので、トイレの列に並んだら、結果的にトイレを出れたのがスタート30秒前。小規模な大会ですので、トイレの数は必要最低限しかありません。トイレの中で号砲を聞いたという人もいたようです。

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前半の28kmはずっと上りです。標高200mの今市運動公園をスタートして、標高約1500mを駆け上がります。第1関門の馬返しまで19.9kmでここまでを2時間45分で走り、第2関門の日光自然博物館までの33.7kmを4時間45分で走らなければ、そこで終了になります。

誰も走ったことのないコースであるため、みんながみんなオーバーペースで入ります。そういうわたしも想定していた、7分30秒よりもやや早めのペースで入ります。

10km 1:07:26(6:34/km)
20km 1:11:05 (7:06/km)
30km 1:15:16(7:31/km)
40km 1:09:33(6:57/km)
50km 1:09:31(6:57/km)
60km 1:23:53(8:23/km)
70km 1:27:39(8:46/km)
80km 1:34:12(9:25/km)
90km 1:39:44(9:58/km)
100km 1:33:26(9:20/km)

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前日に何度シミュレーションしても、完走できるイメージができなかったこともあり、前半にある程度の貯金を作って、後半に貯金を切り崩す作戦でした。タイムを見てもらえば分かるように50kmでレース終了です。

50kmまではウルトラマラソン練習会で走っていますので、問題なく走れましたが、それ以降は体が言うことを聞きません。正確には心が言うことを聞きませんでした。

いろは坂の上りは、想像していたよりもとても走りやすく、傾斜も大山登山マラソンに比べれば圧倒的に楽です。結果論から言えば、ここでもう少し抑えておくべきでしたが、ここで貯金を作っていなければどうなっていたことでしょう。

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速報での完走率が70.8%ですので、完走できただけでもよしとすべきかもしれません。

わたしは上りに強く、下りに弱いので、下りでかなり抜かれるかと思いましたが、上りも下りも同じペースでまとめることができました。下りでスピードを出すという選択肢もあったのですが、過去のウルトラマラソンで下りで頑張ったときは、大体大きく撃沈しているため、ブレーキを最小限にしつつスピードをコントロールしながら下ります。

ここまでは計算通りというよりは、計算以上のできです。

自分の中では余力を残しているつもりでしたし、12時間台前半でのゴールをイメージしていました。後半のペースを7分/kmで走ればいいので、いつものグルメランもとい、ウルトラマラソン練習会のスピードでいいのです。

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ところが、涼しい中禅寺湖から下りてきて、そこからが湿度との戦いでした。気温はそれほど高くないのですが湿度が高いので、不快指数がMAXです。ただ、その理由が河童と法被だったので、文句も言えません。

50kmを過ぎたところで体がオーバーヒートして、先週の練習会と同じように、体が体温を上げないようにリミッターをかけます。下り坂からフラットになったのもあってスピードがまったく出ません。

ここまではエイドにほとんど入らなかったのですが、ここからは2回に1回くらいのペースでエイドに入ります。さらに下界に戻ってきたことで、かなりの信号に引っかかります。

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わたしが引っかかった信号だけでも20分はかかっています。そう考えると、信号によって完走できなかった人も100人くらいはいたかもしれません。さらにコースは歩道を走りますので、交差点ごとに細かなコース取りの変更があります。

こういうところで、ウルトラマラソンの経験の少なさが露呈してしまいます。

それでも70kmまではなんとか走っていたのですが、それ以降の30kmは足がまったく動きません。

24時間マラソンでもそういうタイミングでカフェインを投入することで、また走れていたので、今回も持っていた小銭でカフェインが多めのドリンクを買って飲みを1時間毎に行いました。

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そのたびに走れるようになったことで、わたしはあることを推定しました。走れないのは体の問題ではなく、気持ちの問題なのではないかということを。

ですので、走れなくなったところで、カフェインではなく、とにかく楽しいことをイメージして走ってみます。苦しみが大きいので長続きはしませんが、まったく走れないと思ったところでも気持ちの切り替えで走れます。

ウルトラマラソンの後半に走れないのは走力の問題ではなく、メンタルの問題だったのです。

そして気づいたことは、わたしには闘争心(闘走心)や執着心が足りないということです。苦しくなったときに、踏ん張ろうという気持ちがありません。少しでも早くゴールしたいという気持ちもありません。

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もともとそういう性格というわけでもなく、サッカーをしていたころは負けず嫌いでしたし、それなりに闘争心がありました。社会人になってからも、扱いづらい新人らしさを発揮し、いつも尖っていた時代もありました。

でも、いつからか覚えていませんが、争うことが嫌いになり、「このやろう」と思うことがなくなっていたのです。

これは、競技者としての大きな欠陥です。

フルマラソンくらいなら、闘争心なんてなくても誤魔化せますが、100kmにもなるとそうはいきません。メンタルが強くない人を受け入れてくれるほどウルトラマラソンの世界は甘いものではありません。

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ウルトラマラソンを楽しめる人は、おそらく苦しくなってからの踏ん張りがあります。わたしの場合は、苦しくなったらやる気も含めてゼロになるため、ウルトラマラソンを楽しめなかったのでしょう。

じゃあ闘争心を身につければいいじゃないかと思うかもしれませんが、そんなものは頭で考えて身につくものではありませんし、それは自分の生き方にも直結することなので、これから闘争心を手に入れようとも思いません。

ゆっくりと走りながらそのことについてずっと考えていました。

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これまでは面白くないと思いながらも、1年に1回のことと思ってウルトラマラソンを走ってきましたが、おそらくこれから何度走っても、同じことを繰り返します。仮にいいタイムで走れても「楽しかった」とはならないでしょう。

わたしはマラソンが好きなわけではなく、走ることが好きなのです。走れなくなるウルトラマラソンの後半は、1mmの魅力もありません。

楽しくないのに出場する意味があるのだろうか?
わたしはここで何を得ているのだろうか?

これで終わりにしよう。

走りながらそう決意しました。人生は何があるかわかりませんので、絶対に出場しないとは言いませんが、基本的にわたしが自主的に100kmのウルトラマラソンを走るのはこれが最後です。

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壱岐や岩手など、まだ行ってみたい大会はありますが、走りに行ったところで同じことを繰り返すだけです。

そして、闘争心がないということを考えると、サブ3を狙うという挑戦も意味のないことです。スピードを求めてマラソン大会に出ることは、ウルトラマラソンもフルマラソンも含めてここで終了です。

プロではないので引退という言葉はふさわしくありませんが、分かりやすく言えばここで引退です。

それは速く走ることを止めるということとは違います。レースで速く走るのを止めても、トレイルを風のように駆け抜ける楽しさまでは手放すつもりもありません。インターバルで自分を追い込むことの気持ちよさも手放しません。

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もちろん裸足で日本中のマラソン大会に出場することは止めません。大好きな24時間マラソンも継続していきます。ただそこに、記録を目指すという気持ちはありません。

このブログのタイトルは「月間走行距離なんて知りません」ですが、次のステップとして「自己ベストなんて知りません」が隠れたタイトルになるかもしれません。

ランナーとしての方向転換。いや、競技者であることを辞めるという表現のほうが正しいかもしれません。競技者を止めて、走る男になる。そんな自分を目指していきます。

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13時間35分12秒という結果に悔しさも、100kmを走り切れた喜びもありません。正直何も感じませんでした。ゴールした瞬間のその感覚から、わたしが目指すべきものはここにはないことを確信しました。

ウルトラマラソン練習会は継続していきますが、おそらく名前は「旅ラン」もしくは「グルメ旅ラン」にするかもしれません。タイムや距離を気にせずに、朝から晩まで走ることができる。わたしの目指すところはそこにあります。

これからは、わたしにとって走ることは競技ではなく、走ることは生きることです。

速く走ること、長く走ることを完全に手放したところで、見えてくるものもあるはずです。これまで自分を縛っていた常識という鎖を取り払って、違う視点から走ることを追求していこうと思います。


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著者:リンダ グラットン / アンドリュー スコット
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