2017年8月24日の羽田発のNH963。ANAの飛行機に乗るのは何年ぶりだろうか。
貧しいフリーライターは交通費をいかにして抑えるかに毎度苦心させられる。今回は頼みの綱である海南航空がなぜか割高な価格設定だったこともあり、時間に余裕がある価格が手頃だったANAを選択。
ANAでも4万円以内で北京まで往復できる時代。
夕方のフライトということもあり、家で仕事をある程度片付けたところで羽田空港へ。
ANAだから当然トラブルなんてものは皆無。新しい機体に慣れてないからなのか、客室乗務員がやたらとワゴンを座席にぶつけていたことが気になりはしたが。
知らない間にモニターはタッチパネルになっているし、ご飯も美味しいしハーゲンダッツまで付いてくるし、飛行機の旅がこんなに快適だったことを思い出した。だがGWはきっと割高なので、もうしばらく使うことはないだろう。
わたしにはやっぱり海南航空がちょうどいい。
客層もやはり海南航空とANAではまったく違う。こんなにも北京に向かう日本人がいるのだと驚くほどの日本人率。海南航空は9割が中国人。わたしはその雰囲気がたまらなく好き。
到着時間は20時を回っているので、この日は撮影をしない。万里の長城マラソン代表の朱さんと7−11で翌日の食べ物を購入してあとは寝るだけ。出発は7時になるとのこと。
翌朝、カメラマンやメイクさんと向かったのは、春のコースである八達嶺古長城。この日はわたしが経験したことのないような青空。絶好の撮影日和が私たちを迎えてくれる。
今回のコンセプトは「家族でも参加できる万里の長城マラソン」。
そのために、ヒロインのMoxinはウエディングドレス、わたしは礼服というマラソンとは思えないようなファッションで撮影。それに加えて、家族のイメージとして子どもが2人。
子どもがいると撮影は大変かと思ったが、実際に大変だったのは大人が万里の長城を上がること。
子どもは体が軽いぶんスイスイと上がっていくが、カメラマンやメイクさんは牛歩戦術のごとく前に進めない。こんな激坂でマラソンをしているクレイジーな奴らがいるらしい。
ランナーは苦しみながらも坂を上がっていたが、一般の人は歩くこともままならないような坂道。完走するにはここを3度も駆け上がる。きっとみんな頭のねじが吹っ飛んでいる。
本当は最上部で撮影をしたかったのだが、そこまでカメラマンとメイクさんを連れて上がるのは不可能。途中の景色の良い場所で撮影開始となった。それでも驚くほど遠くまで見通すことができる。
この景色を1人でも多くのランナーに見てもらいたい。
撮影が始まるととわたしは指示に従うだけ。典型的なまな板の鯉。煮るなり焼くなりされるがまま。
ただ、カメラマンの要求はどんどんエスカレートしていく。唇と唇の距離が1mmくらいしかないところまで近づけさせられる。目はそらさないようにと注意されるが、顔と顔の距離が近すぎてどんな表情をしていいかわからない。
そんなシーンを次々に撮っていくのだが、わたしの頭のなかにあるのはひとつだけ。「これをどう繋げようか」ということだけ。撮影した動画はパズルのピースでしかなく、わたしはそれを組み合わせて1枚の画にしなくてはいけない。
キスしそうになる近さにドキドキするほど舞い上がる余裕はない。いろいろあって指にはキスしたが。
もちろん走るシーンも撮影している。家族4人で走る姿や、わたしを応援する形で並走してくれるシーン。こういうものがあるから、万里の長城マラソンのPVがなんとか成立する。
走りシーンなので、何度も坂道と階段を上るのだが、これはこれで疲れる。ここを走って上っている人なんていないというような傾斜での撮影。でもこれを撮影しない限りパズルのピースが不足する。
そんなこんなで、なんとか初日の撮影が終わったのだが、トラブルが待っていたのは翌朝だ。
初日の万里の長城の撮影でカメラマンとメイクさんがダウンしてしまったのだ。気温が低かったとはいえ、強い日差しの中、激坂を上り降りしていたのだから仕方がないと言えば仕方がない。
まったく撮影をしないわけにもいかないので、ホテル近くの大きな公園で、わたしがカメラマンとなって撮影をすることになった。ただ、わたしも映らなくてはいけないわけで、完全に無茶振りでしかない。
自分が撮影監督になると、初日のような大胆なシーンはどうやっても撮れない。いろいろ試してみるものの。いい画がほとんど撮れないまま時間だけが経過していく。しかもこの日のリミットは午前中のみ。
午後にはMoxinも2人の子どもも地方に戻らなくてはいけない。
さすがにこのままではまずいと思い、公園内で一番美しかった場所での撮影を試みた。まだ動画の編集には入っていないが、そこそこ重要なシーンを撮れたのではないかと思っているが、こればっかりは編集してみないとわからない。
なんとかリミットぎりぎりにできた重要なピース。どんな味付けになるのかはこれから考えるところ。
こうして今年のPV撮影はあっけなく完了となった。
昨年の面白おかしい撮影旅行とはまったく違ったものになったが、どう考えてもパズルのピースが足りていない。後日わたしだけで撮影をすることになったのだが、それについてはまた書くとしよう。
さらっとここまで書いたのだが、写真からもわかるようにツッコミどころ満載の撮影ではあった。
それでも今回はドローンを使ったこともあり、かなりいい感じの画が撮れている。素材はかなり素晴らしいものが揃った。ただ、最高級のフォアグラとトリュフを揃えて「美味しい中華料理作って」と言われたような感覚。
想像力を120%フル回転させなくては、納得の行くものに仕上がらないのだろう。
さらに、撮影はあっという間に終わったことで、時間がかなり余っすことになった。ただ、結果的には時間が足りないほど北京を満喫することになったので、実は撮影そのものは今回の旅のまだ序章。
面白くなるのはここからだ。
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