万里の長城マラソンのPV撮影2日目は実質午前中に終わり、午後はちょっとした作業を済ませると自由時間。予定外に早く終わりそうということで、前日のうちに予定は入れていた。
北京在住の万里の長城マラソンの仲間である浜田さん。時間があれば走りましょうよと、北京に行く前から連絡があり、今回は難しいかなと思っていたのですが思わぬめぐり合わせ。
「軽く走ろう」ということで、決まったコースは30㎞オーバー。万里の長城マラソンに集まってくる人たちは、いい感じにネジがいくつか吹っ飛んでいる。
北京はそもそもお城だったわけで、その城門が地名となって残っている。毛沢東が城壁の取り壊しを命じたため、城門そのものはほとんど残っていない。
北京には内城と外城があり、今回走ったのは内城でちょうど地下鉄の2号線と重なる。これだけだと30㎞にも満たないということで、5つの坛も訪れる。これが九門五坛ランだ。
コースは次のようになる。
西直門
阜成門
月壇(月坛)
復興門
宣武門
和平門
正陽門
天壇(天坛)
先農壇(先農坛)
崇文門
建国門
日壇(日坛)
朝陽門
東直門
地壇(地坛)
安定門
徳勝門
九門以上あるじゃないかと思うかもしれないが、黒細文字の門は内城新辟城門と呼ばれる、新しい門ということらしい。歴史的な背景までは分からない。
偉いさん「ちょっと家から城門まで遠いんやけど、入り口追加してや」
役人「いや無理ですって」
偉いさん「アホか、無理を承知で言っとるんやないかい」
役人「皇帝に怒られますって…」
と、まぁ そんなやり取りがあったかどうかは知らない。完全な捏造だ。
何度北京に行ったところで、学べることには限度がある。そもそも九門ですら、きちんと意識したのが今回が初めてだ。やたらと門があるくらいにしか思っていなかった。
スタート地点は西直門。北京で一番複雑な構造をしている街だと思っている。
2つの大きな道が交差していることで、斜向いにどうやって行っていいのかがまったくわからない。もっとも普段は斜向いに行く用事はない。それどころか西直門に用事があることがほとんどない。
北京に初めて来たときにはよく使った駅。以前は休日には動物園前駅に停車しなかったので、動物園に行くときには西直門から徒歩。クレイジーランナーの三州ツバ吉さんと食事に行ったのも西直門。
そこからまっすぐに南下する。北京の街は大通りだけなら格子状になっているから分かりやすい…と言いたいところだが実際には格子状にはなっていないので、かなり複雑な構造をしている。
阜成門までは約2.2㎞。北京の今について話を聞いているだけで、あっという間についてしまう。このあたりは北京の金融の中心部になる。AIIBのビルも建っているのだが、世界に誇るAIIBにしては割りと質素な作り。
最近の北京からは派手さというものが減ってきたように感じる。ネオンだらけの街をイメージしている人は、今の北京を見て驚くと思う。美しいと感じるもののセンスが日本にかなり似ている。
最近ではファッションが劇的に変わっている。電車で周りを見渡しても、原色を身に着けているのは日本人のわたしくらいだ。
阜成門からは月壇(月坛)へ。月壇は言うまでもなく、清と明の皇帝が月を祀ったところ。残念ながら中に入る時間はない。いずれ訪れたい場所のひとつ。
月壇からは内城新辟城門の復興門を経て、進行方向を東へ向ける。宣武門から正陽門に近づくについて、通りに活気が出てくる。正陽門の北側にあるのが紫禁城で北京の中心地になる。正陽門南側は前門大街で、いつも活気あふれている場所のひとつだ。
ただし、街が古くなりすぎたということで、全面的に街を作り直した結果、新しい古い街が完成した。出来た当時は違和感がありすぎたが、さすがに数年経過すると雰囲気が出てくる。狙ってやったのかは分からないが、そういう街が北京のあちこちにある。
そこから2号線を離れて、天壇と先農壇へ。天壇は世界遺産にもなっているので、知っている人は多いだろう。こんなわたしでも知っている。初めてだったのが先農壇で先農神(神農)を祀っているのだとか。
北京にはこのように壇と呼ばれる場所が9ヶ所あり、北京の聖地とされている。いつかこれを巡るランもしてみたいところ。ただ、ルートは今回とほぼ同じになるのだが。
北京にはランナーが大勢いるのだが、2号線を走っていてもほとんどランナーには合わない。北京は自転車には優しい街なのだが、ランナーにはあまり優しくない。大きな歩道がいきなり塞がれていることも珍しくない。
一度2号線に戻っって、次に向かうのは崇文門。ここからさらに東に向かい、北京駅を超えてから北へと進路を変える。2号線の東側を走ることになるのだが、このあたりはわたしが拠点とする場所とは違い日本人や外国人が多い街。
ビルもちょっと垢抜けた感じになる。同じ北京でもまったく違った顔を見せてくれる。
建国門や朝陽門あたりで生活しようと思うと、そこそこ稼いでいないと難しそうな感じがある。1カット数千円というようなケーキを売っているお店があるようなエリア。わたしの暮らすアパートの家賃の1週間分くらいになる。
建国門からは日壇へと向かい、そこから朝陽門へ。
このあたりで日が沈んで暗くなってきたのだが、さすがだなと思うのは、まったく危険を感じないということ。わたしが北京慣れしてきているのもあるが、今回は街を歩いていても緊張感が全くなく、海外に来たという感じはまったくしない。
それくらい北京は安全性の高い街になっている。おそらく新宿や池袋よりも安全な街だろう。ただし、常にテロの警戒をしなくてはいけないという問題は抱えている。日常生活をする上では、日本と遜色ないレベルの安全がここにはある。
そして、日本人の多くがいまだに中国人を見下しているようだが、はっきり言って、中国人はもはや日本人など相手にしていない。日本が中国に勝っているものがあるとすれば、水道水と気遣い、あとは女性のメイクくらいじゃないだろうか。
いや、中国でも北京が先に進みすぎているので、他の街に行くともっと感じることは変わってくる。ただ、北京という街を客観的に見れば、いつの間にか日本が追い抜かれている部分が多くあるのを感じるはずだ。
これはわたしが中国が好きだからそう言っているのではない。そして、いまの日本人が直ちに受け入れなくてはいけない事実だ。いつまでも見えないふりを、見ないふりをしたいならそうすればいい。
あっという間に振り切って見えないところまで行ってくれるから。
いままでは「いつかは抜かれるから危機感を持つべき」と言ってきたが、もう「抜かれているから、個人として必死になって付いていこう」としか言えない。置いていかれるのは個人の自由。しがみつくのも個人の自由だ。
朝陽門の次は東直門を通過して、そこからは西へと進路を変える。コースはほぼフラットなので走りにくさはほとんどない。ただ、歩道が狭いので向かいから人が来ると、自転車道に下りなくてはいけなかったりする。
ここまで来れば終わりは近い。最近わたしが気に入っている雍和宮地区の北側にあるのが地壇。ここも行きたくて行けてない場所のひとつ。今回も撮影に使おうかと思ったが、行き損ねてしまった。まだ縁がないということだろう。
安定門、徳勝門と通過して、スタートから約5時間経過後、無事西直門へと帰ってきた。
いや、無事どころか危険な思いは一切していない。日本でそうやっているように、あたり前のように走って、あたり前のように帰ってきただけだ。
1人で35㎞はちょっと難しかったかもしれないが、一緒に走ることでかなり楽をさせてもらった。
そして、何よりも北京という街を走ることがこんなにも楽しいことだとわかったのが、今回の大きな収穫となった。それともう1つ、北京という街は眠りにつくのが早いということ。ビルのレストランで閉店が22時。
急いで食べて、急いで飲んであっという間に閉店。
今度、北京を走るときにはもう少し早めから走るとしよう。流した汗をしっかり北京のビールで補わなければ、走った意味が半減してしまう。
それでも、十分にお腹と心を満たして、九門五坛ランの余韻に浸りながらわたしはホテルへと向かった。気分的には走って帰りたいところだったが、酔いが覚めるのももったいない。
撮影が十分に出来なくて残念だったが、北京の町中を走ったというのはとても意味のあること。わたしの中で大きな転機になるかもしれない。そう感じた35㎞の旅ランとなった。
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