万里の長城マラソン2018PV撮影の旅〜総括〜

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万里の長城マラソンPV撮影最終日、慕田峪長城から戻ったわたしは、再び北京在住の浜田さんに会いに行きました。

北京の美味しいものを食べさせてくれるとのこと。食いしん坊なわたしは当然誘われるがままついていくわけです。

北京には世界中の美味しいものが集まっているのは知っているのですが、流石に1人ではそのようなお店に入ることができませんし、どこにそんなお店があるのかも知りません。

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連れて行ってもらったお店は「大董」。接待用に使うお店で、世界一美味しい北京ダックがあります。

ただし、この日は旧暦の七夕ということで、浜田さんが予約の電話を入れたときにはすでに満席。何度も利用している常連さんということで、早い時間に無理やり席を確保してもらいました。

でも時間は短めね、ということで。

いやいや、こんな立派なお店に入れただけでも光栄なこと。しかも出て来る料理がどれも美味しい。いや、美味しいという安直な表現をすべきではない。ただ、わたしはグルメレポートが苦手。

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料理にとても手がかかっていることは分かります。ただ、味が複雑すぎて笑ってしまうしかないくらい、とにかく幸せな気分になれます。

以前、作家の村上龍さんが何かのエッセイで「お金があれば、不幸を防ぐことができる」というニュアンスのことを書いていました。いまの中国はまさにこの状態にあります。

日本ではお金があっても不幸を防ぐことが難しくなっていますが、中国ではお金を持つことで不幸になることを防ぎながらも、自分たちなりの幸せを模索しているように思えます。

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お金で買えないものは確かにあります。でもお金があれば、仕事で嫌なことがあっても、大董に行って北京ダックを食べるだけで、大抵のことは小さなことだと思えるようになります。

彼らの給料は、日本のバブル期のように右肩上がりです。もちろん物価も右肩上がりなのですが、その過程でいつの間にか量から質を大切にするようにシフトチェンジをしています。

少なくとも北京においては、安かろう悪かろうは誰も望んでいません。安いことはいいことだけど、それで質を落とすことは避けたい。そういう考え方に移行しています。

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日本ではわたしもそうですが、行き過ぎた高品質よりも、そこそこの品質で低価格というものが好まれるようになっています。これは決して悪いことではなく、成熟した結果なのだと思いますが、このままではそう遠くないうちに、質の部分で中国が日本を追い抜くことになるでしょう。

メイド・イン・ジャパンが世界を席巻したように、同じ道を中国が歩んでいます。

勘違いしないで欲しいのは、それがいいことだとか悪いことだとか言いたいのではなく、そういう事実があるということをわたしは伝えたいだけです。そのうえで、どう行動に移すのかは人それぞれです。

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大董を出て、少し飲み直そうとわたしたちは、王府井にあるショッピングセンターに入ったのですが、どのお店もすべて行列でした。七夕とはいえ平日の夜8時を回っています。

10年前、わたしが北京に行き始めた当時、「行列に並ぶのがきらいな中国人が並んででも食べたい栗のお店」を紹介してもらいました。それからわたしはずっと「中国人は行列が嫌い」だと思ってきました。

ところが、そのショッピングセンターでは、お店の前に何人も並んでいます。それもひとつのお店だけでなく、20軒以上のお店が軒並みそんな感じなわけです。

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流石にこれは無理だと判断し、わたしたちは近くのカフェ&バーに入りました。そのお店はなぜか、それほど人が入っていません。でも雰囲気は全然悪くないのですが、七夕にカップルで来るようなお店ではないかもしれません。

ただ、そこでは北京のビールの試飲セットというものがあり、4種類の味を飲み比べることができます。

もうやってることが日本とまったく変わりません。今回のPV撮影の旅では、そのことを何度も感じることになりました。日本人と北京に暮らす中国人の志向はかなり似ています。

もちろん、それぞれに個性がありますし、立場によっても変わるのですが、総和としての方向性はそう離れたものではありません。わたしは北京に心地よさを感じつつ、中国らしさが失われていることにちょっと寂しさも感じます。

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ただ、そんな寂しさは観光客のエゴでしかありません。そこで暮らす人たちは、少しでもいい生活をするために、日々頑張っているわけですから、変わっていくことは観光客でも受け入れるべきです。

とはいえ、その変化のスピードがあまりにも早すぎます。展開が早すぎて、年に数回行ってるくらいでは、とてもじゃないのですが、ついていくことができません。おそらく中国人の一部も置いて行かれてるのでしょう。

今回はPV撮影がメインではあったものの、撮影の時間が短くなったり、単独行動の時間もあり、地元の日本人、中国人の友だちとのコミュニケーションもあり、とにかく内容が濃すぎていまだに自分の中で消化しきれていません。

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今回は華流ドラマを見続けた結果として、脳内で日本語変換せずに反応できる言葉が幾つかあったのも大きな収穫です。こうやって、ゆっくりと中国に溶け込んでいければいいなと思います。

ただ、わたしは中国人になりたいのではなく、日本人として中国の空気を楽しみたい。もちろん中国だけでなく、台湾も香港も(中国人にしてみれば全部中国ですが)。

後になって振り返ったときに、わたしにとっては大きな転機となる時間だったかもしれません。今度行くのは10月22日の万里の長城マラソン。そのときにはまた違った北京の表情が見えるのでしょう。

さあ頑張って、PVの編集作業を行わなくては。


中国バブルはなぜつぶれないのか
著者:朱 寧
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