8月3日
15時30分 中津川宿手前
国道沿いの空き店舗前で起床。ここまで追い込むと、流石にこんな状況でも眠れるということに気づきました。明らかに自分の限界を超えた状態での移動。そしてそれに気づけなかった自分。
本当ならもっと手前のコンビニ駐車場などで寝ているのが正解だったはず。
でも後悔は先に立たないというのが世界の常識。全部やってみて学んで次に活かせればいい。人生で大事なのことは失敗しないことではなく、何をすれば失敗するか学ぶということ。
中津川宿に向かう前にドラッグストアに向かいます。
どうも足の爪が指に刺さっている感じがあってよろしくない。よくも3日間ガマンしてきたと思うものの、これから峠道にはいるのにこれはあまりよろしくない状態。さらに両足裏にタコが出来ているのでそれも削り落とすためにカッターを購入。
どうも旅ランのたびにカッターを買っている気がする。家で整えてきても走っている最中に硬くなる。そういえば小説「遙かなるセントラルパーク」でもベテランランナーさんが、仲間に「きちんと手入れしておけ」といって足裏をヤスリで削っていた。
このタコは裸足もしくはそれに近いクッション性の少ないシューズで超長距離を走る場合には、どうしても避けられないものだと思っています。削ればいいだけなので気にはしませんが、近い内に毎日手入れするためのヤスリは揃えようかと思います。
16時40分 中津川宿(199.3km)
暑さもあるのであるきながら中津川宿に到着。ここもかなり大きな宿場町で、なおかつその風情がしっかりと残っている心地いい街です。この先は落合宿までは比較的フラットですが、そこからは一気に山間部に入ります。
ここからは食料が手に入らない可能性もあるので、前日と同じミスをしないためにもピーナツを1袋購入。それと晩ごはんには高カロリーのマクドナルド。もちろん充電もしっかりさせてもらいます。
さらには、股擦れが出来てしまったので、股擦れ用の軟膏を購入。この軟膏がかなり効いたようで、ここからは股擦れに悩まされることはほとんどなく、快適にゴールまでたどり着けました。
要するに中津川宿で準備万端となったわけです。ただし、思った以上に日が陰ってきました。
18時54分 落合宿(204.2km)
落合宿の手前で通算走行距離が200kmを突破しました。でも走っている側にしてみればそんな余裕がありません。なぜなら落合宿の先には中山道の難所のひとつ落合の石畳が待っています。
石畳は山道を突っ切る形で走っていますので、気をつけたいのが野生動物。そういえばこの日の朝に熊が当たり前にいると聞いたばかり。
落合宿の雰囲気も良かったのですが、それを満喫する余裕もありません。日が暮れる前になんとしてでも落合の石畳をクリアしなくてはいけません。
とはいえ、まさかこんな人気の多い場所に熊が出るとは思ってはいません。でも何が出てきてもおかしくないような雰囲気。そして落合の石畳が終わりかけたその瞬間に、道の脇の藪でガサガサと音がなります。
そこで走り抜けてしまえばいいのに、なぜか立ち止まってしまい、藪の中の何かと牽制し合います。こちらも警戒していますが、相手も警戒している感じが伝わってきます。サイズとしては柴犬くらいでしょうか。
とりあえずそこにいても埒が明かないので、お互いの気が少し緩んだ瞬間に猛ダッシュをして、逃げることには成功しました。そしてそのままの勢いで馬籠宿へ。
19時51分 馬籠宿(209.4km)
馬籠宿通過前の道は寂しい田舎道だったので、馬籠宿も小さな集落なのかと思っていましたが、そこにたどり着いたわたしを待っていたのは、天空の城下町でした。
物を知らないというのは本当に恥ずかしいことで、世の中にこんなにも美しい場所が存在することを42年間も知らずに活きてきたことを後悔するレベルで衝撃的な町並みがそこにはありました。
完全に観光地化されている宿場町ですが、正確に表現するなら宿場町のテーマパークがそこにあったわけです。
こういうのは外国人受けするんだろうなと思っていたら、涼をとるために宿の前に出ているのは外国人ばかり。夜に来たので表面的にしか見ることができませんが、とにかく美しいわけです。
じっくり楽しめないのが残念でしたが、ここは1日かけて楽しむ場所。また来ればいいと気持ちを切り替えて、妻籠宿へと向かいます。
馬籠宿を抜けると長野県に入ります。本来は山道をまっすぐに進めるのですが、さすがに落合の石畳での恐怖が残っていますので、ここは車道を選びます。車道は左右に蛇行していますので、その分距離が伸びますが仕方ありません。
ただ、車の通行がほとんどありませんので、そこにある明かりはわたしのライトだけ。ふと空を見上げると満天の星空がそこにありました。天の川まではっきりと見えます。
21時53分 妻籠宿(218.1km)
ほぼ下りだったにも関わらず、馬籠宿から2時間もかかっています。馬籠宿は知りませんでしたが、妻籠宿の名前くらいは聞いたことがあります。でも実際に目にしたのははじめてのこと。
ここも馬籠宿に負けないくらいの歴史テーマパークです。やっぱりここも昼間にゆっくりと見たいところ。初日に馬籠宿に泊まって、翌日に妻籠宿まで歩いてもう1泊。そんな旅の妄想だけが捗ります。
実際にはここまでのアップダウンで疲労困憊。本陣横で軽く仮眠します。ここまで上がってくるとさすがに涼しさもあり、このまま朝になってしまうのではないかと思いましたが、30分くらいで目が覚めます。
ただし、ここからもやはりほとんど記憶がありません。どこかのセブンイレブン前で仮眠をしたことくらいでしょうか。木曽川沿いを延々と走っていた記憶だけはあります。
8月4日
0時12分 三留野宿(222.9km)
2時21分 野尻宿(231.4km)
4時5分 須原宿(237.5km)
いくつもの宿場町をあやふやな記憶で通過してきましたが、どの宿場町でも気になったのが水でした。どこにも水汲み場が用意されていて、宿場町にも用水路があってそこを大量の水が流れていました。
そしてこの時点での気温は20℃くらいですので、かなり快適どころか止まってしまうと寒さすら感じます。さすが山間部といったところでしょうか。
8時41分 上松宿(249.1km)
この日の走り出しを考えると上松宿でこの日のランは終わりにしてもよかったのですが、前日にお風呂に入っていないことを考えると、やはり温泉まで行って休みたいところです。
山間部に入って平地よりも気温の上がりがゆっくりなのもあって、ここは前に進むことを選びます。前日から何も学んでいないと思うかもしれませんが、山間部ですので直射日光を避けやすいという面もきちんと考慮しています。
ただ、わたしの体力が思った以上に残っていませんでした。
徐々に高くなる気温と太陽の位置。
11時44分 福島宿(256.2km)
道の駅での休憩を挟んでお昼前に福島宿に到着。その前に木曽福島駅前に行ったのですが、どうも見覚えがあります。ただ、わたしの記憶では木曽福島に来たことはありません。
実は3日目4日目と、はじめての場所にもかかわらず、なぜか記憶に刷り込まれているという場所がいくつかありました。そこまでは気のせいだろうと思っていたのですが、福島宿でそれは間違いなく見覚えがあるものだと確信しました。
いったい、いつどういう状況で見たのかは分かりませんが、記憶の中では確かにそこにわたしは居たわけです。
そんな不思議な体験でしたが、なぜかそれをすんなりと受け入れている自分がいます。
13時0分 せせらぎの湯
結局、福島宿から数キロさらに歩いて4日の終了地点であるせせらぎの湯に到達しました。ごはん処もある田舎の温泉施設。
ここまでは、とりあえずは順調に進んでいます。日中の陽射しは相変わらず強烈ですが、なんとか長野県まで入ってきましたし、もう少しで半分というところまで来ています。
まだ終りが見えたとは言えませんが、後はコツコツ走るだけ。ここでようやく精神的な余裕が出てきたような気がします。
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