ベルリンマラソンでの世界最高記録はレースに駆け引きが必要ないことを教えてくれる

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マラソンの世界最高記録が更新されました。ナイキのシューズでは世界最高記録は超えないかなと思っていたのですが、世の中の予想通りに達成しましたね。

わたしは、あのシューズで超えないと思っていたのは、完全に理にかなったシューズだからで、完璧すぎて条件が整わないと最高のパフォーマンスを出せないと考えていたからです。

でも結果はこれまでの記録を1分以上も縮めて2時間1分39秒。

もちろん、シューズも素晴らしいのでしょうが、やっぱりキプチョゲがずば抜けているのでしょう。同じシューズを履いているランナーもいて、残り17kmが独走だったわけですから。

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それに関しては、キプチョゲもレース後のインタビューで「速く走るのはシューズでなくランナーです」と答えています。もちろん、わたしもそう思います。

そろそろキプチョゲもシューズのことばかり取り上げられるのに、嫌気がさしてくるころかもしれません。自分の努力によって勝ち取った世界最高記録なのに、まるでシューズのおかげのような評価をされる。

シューズのレビュー記事を書いているわたしも、その責任が少しはあるのかもしれませんが、わたしのスタンスとしては履きこなすためのトレーニングが必要ということで一貫しています。

ナイキのヴェイパーフライ4%はとても癖のあるランニングシューズです。決められたように足を動かし続けなくては、シューズのポテンシャル、ランナーのポテンシャルを100%引き出すことができません。

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このため、これからのマラソンレースは駆け引きがなくなると書いてきましたが、まさに今回のレースがそれにあたります。キプチョゲは駆け引きを一切せずに、自分の決めたペースで最初から最後まで走り抜きました。

駆け引きをしてスピードの上げ下げをしていたのでは、最後まで走り切るのが難しいのがヴェイパーフライ4%です。そういう面では、マラソンでの勝負や駆け引きというのはしばらくは見れないでしょう。

おそらく、オリンピックや世界選手権のような暑い時期にメダルをかけて戦う場のみ、それぞれの存在を意識しながらレースが行われていくことでしょう。

面白いとか面白くないとかそういう世界ではありません。2時間の壁の向こう側に行くには、競い合っている場合ではありません。そういう意味では日本のマラソン界は世界から2周遅れくらいのところにいるのでしょう。

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大迫選手のように海外でトレーニングを積んでいる選手は別として、国内の実業団で駅伝をしながらマラソンもしているというような選手は、どうしてもレースに駆け引きを持ち込もうとします。

そうやってこれまでやってきたわけですから、いまさら「最初から最後まで自分のペースで走れ」と言われても、できるわけがありません。

でもマラソンに限らず、長距離レースというのはそういうものであるはずです。1kmを3分で走ればフルマラソンは2時間6分ちょっとで完走できます。でもレースの中で周りを引き離すためにペースを上げたり、体力を温存するためにペースを落としたりするわけです。

勝つためにそのような駆け引きをするわけですが、世界ではそんなことお構いなしにレース展開が進められるわけです。誰かの後ろに入って風よけに使うというようなことはしません。少なくともベルリンのような高速レースでは。

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前半を61分で走ると決めれば周りがどうであれ61分で走るわけです。その過程で引っ張ってくれるランナーがいれば利用するわけですが、そのランナーが速すぎるならついていかないのも今どきのレース展開ではよくあります。

川内優輝選手などはその典型で、勝ちにこだわっても自分にとってオーバーペースになるなら先頭集団にはついていきません。無理のないペースで力を蓄えて最後に爆発させます。

でもマラソンをテレビなどで見ていると、いまだに「ここは気合でついていかなければいけません」なんてことを平気で言います。

気合でついていったら、そこでガス欠になっておしまいです。日本のマラソン会では根性でなんとかなると思っているところがあります。もちろん根性が不要なんてことは言いませんが、少なくともレースにおいて根性でついていかなければ行けない状態でついていくことは試合放棄と同じことです。

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自分のその日のコンディションを考えて、走りながら微調整をして自分のペースを導き出す。そして、周りに惑わされずに自分のペースを貫いてゴールを目指すのが現在のマラソンにおけるトレンドです。

そこに、根性なんて要素はどこにもありません。

レースにおける痛みは根性で耐えるのではなく、「集中して忘れる」のが世界で勝てるランナーの思考です。でも日本人は「痛みに耐えてよくがんばった」が大好きですから、根性論でなんとかしようとするわけです。

あのときの貴乃花だって、痛みに耐えたわけではなく集中して痛みを忘れていたのだと思うのですが、耐え忍ぶほうが日本人には喜ばれますので、その言葉だけがひとり歩きしています。

でも、マラソン界はそろそろ世界のトレンドを意識しないと大変なことになってしまいます。

いや、すでに手遅れなのかもしれません。マラソンの日本最高記録は2時間6分11秒。4分32秒の差を埋められる天才が誕生するを、わたしたちはただ待つしかありません。


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著者:松浦 弥太郎
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