東京の坂道を走るということ

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昨日は4回目の東京坂道ランをしてきました。もう涼しいので50キロくらい走れると思っていましたが、東京を舐めてました。

暑さはないんですが、今回走った文京区はとにかく坂道同士が近くにありすぎて、スピードに乗って走り続けることがまったくできず。

初回にかなりの距離走れたのはなんだったのでしょう?

でも、4回もやっているから見えてきたことがあります。東京坂道ランは距離なんてどうでもいいんです。朝から晩まで東京を知りながら走れれば。

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東京って知っているようで全然知らなかったりします。今回は文京区でしたので、次から次へと作家さんの名前が出てきます。

わたしはどんな出会いも必然であり、意味があるんだと信じているタイプの人間です。だから、今回の東京坂道ランで沢山の作家さんに触れたのには意味があるのでしょう。

今回は樋口一葉さんが何度も出てきて、最終的には終焉の地にまで導かれるようにたどり着きました。とても偶然とは言えない出会いです。

24歳でこの世を去った天才。美人薄命というのを象徴するような人です。でも、わたしは樋口一葉さんの文をきちんと読んだことがありません。

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でも、石碑に書かれていた短い文章には心が震えました。才能というのはこうも無慈悲なのかと。美しすぎる文体と言葉選びに叩きのめされた気分です。

42年も生きてるのに24年で生涯を閉じた人の足元にも及ばないという現実。

でもそれは決して不快なものではありません。むしろ心地よさもあります。力の差がはっきりしたのなら開き直ることもできます。

樋口一葉にはなれませんが、そうですね、物書きとして菊坂を拠点にして活動するレベルにはなれる気がします。いや、必ずなれます。

根拠はありませんが。

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菊坂という町も今回の東京坂道ランで初めて知りました。鶴巻温泉を離れて都内で暮らす時には谷根千のどこかと思っていましたが、物書きとしての気の巡りのようなものは、間違いなく菊坂にあります。

スピリチュアルのようなものには興味はありませんが、気の流れというのはわかります。谷根千のほうが気の流れはいいんですが、そちらは幸福感が高すぎます。

物書きというのは劣等感や、満たされない思いがなければ出来ないと思っています。わたしが最近ランニングの技術についてあまり書かないのは、技術に関する欠乏感がないからです。

技術的に方向性がはっきりしたから、後は詰めていくだけ。足りていないのは練習だけですから、あれこれ試行錯誤する必要もなく、記事にする意欲もありません。

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「何か足りない」これが物書きのモチベーションです。谷根千で暮らすときっと満たされてしまいます。菊坂にはどことなく儚さがあり、欠乏感もあります。だから歴代の物書きが集まったのでしょう。

たぶん、そこで暮らすと不幸になります。でも、不幸になることは物書きにとっては恵まれた環境です。普通の感覚だと分からないかと思いますが、少なくともわたしは、不幸から逃げようとは思いません。

あるテレビ番組で乃木坂46のメンバーが、東京の坂道でインタビューをしていました。そこで「あなたの人生はいま上り坂ですか?それとも下り坂ですか?」と聞いていました。

どうも、上り坂はポジティブで下り坂がネガティブな状態という雰囲気だったのですが、ランナーにとっては下り坂はチャンスで、上り坂は苦しいものなので、その質問自体に違和感がありました。

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幸か不幸かは、目の前にあるものをどう受け取るかということでしかありません。見方を変えれば、ネガティブもポジティブになり得ます。もちろんその反対も。

こういう気づきがあるから旅ランはやめられません。決まったコースを走り、制限時間のあるマラソン大会ではこうはいきません。集中力を高めて、足の動きを監視し続けなくてはいけません。

でも、東京坂道ランや街道ランにはそんなものはありません。1日かけて33キロしか走れなくても、まったく問題がないわけです。コースをその場で決めて、寄り道もその場で判断します。

こんな楽しいことがあるでしょうか。1日中ずっと発見の連続です。知識としての発見や、自分の内面の発見。走り終えたときの自分と、スタートしたときの自分はまったくの別人。

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なかなか終わりの見えない東京坂道ランですが、きっとすべての坂を走ってもまた違うルートで楽しめます。必ず新しい気づきがあるわけです。ぜひ他のランナーさんにもやってもらいたいんですが、現段階では敷居が高いかもしれません。

北京への旅情報サイトが完成したら、次は東京坂道ランのサイトを立ち上げようかと思います。こうやって自分の時間を削ってしまうのがわたしの悪いところですが、そこから生まれる何かもあります。

何が生まれるかなんて、いま考えても仕方ありません。自分でやるべきと思ったことをやるだけ。結果は後からついてくると信じて、全力疾走してみます。


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著者:小栗 左多里
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