MGCが面白すぎた!マラソンがエンターテインメントになる可能性

トップランナーが走るマラソン大会でも、スタートからゴールまで見続けるのはなかなか退屈です。どんな大会でも無理な走り方をする人はおらず、序盤は落ち着いた展開になるのが暗黙の了解。

そしてトップランナーが30km程度で仕掛けて、周りがついていけずにそのまま独走するという予定調和。マラソンは想定しやすいスポーツであり、それゆえに退屈なスポーツでもあります。

ただし、今回のMGCは完全にそれらのマラソン大会とは別物でした。すべての選手が勝つことだけを考えているという特殊なレース。2位までに入ることが必須であり、最低でも3位に入らなくてはいけない。

スタートラインに立った選手はみんな「いい走りができればいい」なんて思っておらず、全員が自分なりの勝てるイメージを持っているわけです。独特な緊張感がそこにはありました。

そこにきての設楽選手の飛び出し。レース後の記者会見で、瀬古さんが「気温が10℃なら最後まで逃げてたと思う」と言っていたのを聞いて、この人は大丈夫だろうかと思いましたが、覚悟を持って飛び出したのは間違いありません。

もし本当にあのペースで完走できるなんて、思ってもなかったはずです。さすがに設楽選手はそこまで愚かではないはずです。RUNNING STREET 365でも書きましたが、10℃と25℃では心拍数の上がり方が違います。

これは生理現象ですので、回避することはできません。ですので、気温に合わせたペース展開が絶対に必要になります。設楽選手もそれくらいは分かっているはずです。

まさかわたしたち市民ランナーにありがちな「今日は調子いい」にハマったはわけでないでしょう。若手とはいえ、1度は日本記録を出した選手ですから、そんなことは重々承知で突き進んだわけです。

結果的に、あれがあったからMGCがより面白いものになった気がします。「追いつかれるのか、逃げ切るのか」多くの視聴者がハラハラしながら見ることになりました。MGCの盛り上げに貢献したことは間違いありません。

途中で神野選手が前に出ようともがいてみたけど、一瞬で吸収されたのは想定通りの実力不足を感じました。ベテランの中本選手が集団を引っ張った瞬間は「もしかして」とも思ったりもしました。

男子は残り2kmでの3人による争い。意地と意地とのぶつかり合い。大迫選手がそこで力負けしたのは、レース序盤に走りが安定していなかったのも影響したのかもしれませんが、日本記録保持者の一騎打ちは見ごたえがありました。

あんなにどちらも折れないマラソンは初めて目にしました。

女子は早い段階でバラけてしまったので、やはり10人という人数は少なすぎました。直前で欠場を決めた選手がいたのも今回のレース展開には、かなり影響を与えたような気がします。

普段はあまり気にしたことがないかもしれませんが、マラソンにおいて集団の力というのはかなり偉大で、集団で走って引っ張る選手が変わっていけば、体力を温存しながら一定速度を保つことができます。

でも、引っ張る選手は消耗するので誰も引っ張りたくない。そうなると集団は遅くなって、今回みたいに設楽選手の独走になります。ただ、今回は追いかけないのが正解だったわけで、マラソンの奥深さが出たレースでもありました。

これからMGCがどうなるかは決まっていないようですが、何らかの形では続けていってもらいたいものです。同じ規模で同じことはできないでしょう。たった40人のために東京の道を止めるなんて、東京オリンピックがなければ同意を得られません。

東京だからこそ、ものすごい数の応援者が沿道に詰めかけました。これを地方でやるとなると、盛り上がりには欠けるかもしれません。でも、やり方はいくらでもあるはずです。

MGC出場という目標があり、そこで普段では味わうことの出来ない緊張を感じながらスタートラインに立つ。そして、勝つことしか意味のないレースを体験することは、選手にとって大きな財産になります。

そして、今回のようにうまくプロモーションできれば、マラソンへの注目度も一気に上がります。そうなればプロランナーも増えていくはずです。MGCの継続が日本のマラソンを大きく変えるのは間違いありません。

これだけのエンターテインメントコンテンツは、作ろうと思っても簡単には作れません。今回は間違いなく大成功であり、未来さえも感じさせてくれる内容でした。これが今後どのような形になるのか、マラソン好きの1人として、とても楽しみにしています。


走る奴なんて馬鹿だと思ってた
著者:松久 淳
楽天ブックス:走る奴なんて馬鹿だと思ってた

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