日本一周マラソン

日本一周マラソンを始めたのは11年前の夏の日だったと記憶している。スタートは湘南の鵠沼海岸。このまま海沿いを走り続けたら、いま向いている方向の後ろから自分がやってくると思ったら急に楽しくなり、わたしはそのまま東に向かって走り始めた。

その日は逗子まで走り、そこから土日や長期休暇を利用しては海岸線を走り続け、最終的には千葉の銚子まで走っている。上の写真は犬吠埼で撮ったものらしいが、ほとんど記憶にない。犬吠埼から銚子までの道は少しだけ覚えているが。

犬吠埼に到達したのが2010年12月25日。クリスマスだというのにいったい何をしていたのだろう。10年前からネジが何本か外れていたのかもしれない。そこで途切れているのにはもちろん理由がある。春になったら茨城県を北上するつもりだったのだが、2011年3月11日、あの日がやってきた。

東日本大震災を境に、物理的にも精神的にも道が途切れてしまう。

福島県の海岸線を走ることができない。今も変わらず立ち入ることができない地域があり、日本一周を再開しようというモチベーションは戻ってこない。そこを回避して走るという選択肢もあるが、それはどこか違う気がする。それを言い訳にしているだけかもしれないが。

走って日本一周したという人はすでにいて、11年前には実際に実行した佐藤四郎さんの本が売られていた。下部にリンクを貼っておいたので気になった人はチェックしてほしい。11年前よりもラン仲間が増えているので、佐藤四郎さんは知り合いの知り合いくらいの関係にいるのかもしれない。

北海道で海岸線を走っていたら、地元の人の車が停まって熊が出るからとワープさせられたという話はいまだに覚えている。日本一周するとなるとそういったドラマが必ず発生する。想定していないような運命的な出会いもあるだろう。

わたしの旅ラン好きは、この日本一周マラソンが始まりだ。それ以前にお遍路をしているが、お遍路は旅ではなくわたしに課せられた業。日本一周ができなくなって、わたしが選んだのは日本海から太平洋までの日本縦走ラン。2011年の夏のことだ。

実はこの日本縦走ランが、わたしの旅ランの始まりだと思い込んでいた。まだ終わっていないということで、日本一周マラソンはわたしの記憶の中ではなかったことにしていたのかもしれない。日本縦走ランを走り終えてから、伊勢参りランを計画したが、こちらは2回連続失敗している。

ランニング人生でやり残しがあるとしたら、この伊勢参りランだろう。いつかリベンジしたいと思っているが、ただ、伊勢神宮に嫌われている気がするので、成功できる気がしない。きっと前世が天照大御神に何かをやらかしたのだろう。

日本一周マラソンはやり残したという感覚すらない。諦めたつもりはない。いずれやり直すことにはなる。

日本一周を走るなら区切りではなく一筆書きでという想いがある。ただ、現実的ではないこともわかっている。北海道1周だって2800kmあるのだ。1日60kmで計算しても47日もかかり、なおかつ北海道は走れる時期が限られている。そこを逆算してスタートしなくてはいけない。

総走行距離は12,000kmはあるだろう。休みなく走ったとして200日。一筆書きなら1年かけることになる。そう考えると一筆書きは無理がある。あらゆるものを手放したとしたら可能だが、残念ながらまだその段階にはない(五街道でも同じようなことを言っていた気がするが)。

だが簡単ではないからこそロマンがある。もしかしたら日本からマラソン大会が消えてしまう未来だって考えられるのだから、そうなったときにわたしのフィールドは「旅ラン」になる。その先に日本一周マラソンが待っているというのは、ごく自然な成り行きだろう。

とてつもなくバカバカしい計画。

達成したところで誰かがほめてくれるわけでもなく、何かを手に入れるわけでもない。究極の自己満足と言ってもいいだろう。だが、わたしにとって生きるというのはそういうことなのだ。周りの目なんて気にする必要はなく、自分がしたいことをする。

「したいこと」は人によって違う。人によっては「大切な人を笑顔にする」がしたいことかもしれない。そういう人にとってみれば日本一周マラソンなんて1ミリも価値を感じないだろう。大義がひとつもないことに1年も費やす。頭のいい人のやることではない。

それでもきっとわたしは走り出すことになる。

いつになるかはわからないが、あえて目標設定するなら50歳になるタイミングくらいだろう。こうやって設定しておくと、だいたい前倒しすることにはなる。最初に会社を辞めたのも設定よりも2年くらい早かった。五街道制覇は15年以上も前倒しになった。

とはいえ、さすがに1〜2年はないだろう。だから今はGoogle Mapでも眺めながら、じっくりと計画を立てるとしよう。

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