ランナーが知っておくべき汗についての基礎知識

ランニングすることで体内から失われるものシリーズの第1弾として、まずは汗について考えていこうと思う。なぜランニングをすると汗をかくのか、汗はどのような成分が含まれているのか、そもそも汗とは何なのかについて、メモを兼ねて書いていこうと思う。

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走って汗をかけるのは人間と馬くらい

意外かもしれないが、この地球上で汗をかける動物は人間と馬くらいしかいないらしい。細かく追えば他にもいるのだろうが、基本的にはこの2種類だけで、猿でさえも走って汗をかくことがない。もちろん暑ければ汗をかくのだが、走って体温調節のために汗をかけるのは限られている。

そもそも猿などの動物は体毛に覆われており、ちょっとしたことで体温上昇をするので持続性のある運動ができない。ところが人間は地上に降りて長時間歩いたり、狩りをしたりする過程で体毛が邪魔になり、体を覆っていた体毛のほとんどがなくなってしまうのだが、さらに運動量が増えると体温上昇に体が耐えられなくなる。

そこで人間の体は「発汗」という能力を身につけることになる。汗をかいて皮膚の表面を濡らし、その汗が蒸発するときに気化熱として体温を奪うようにできている。体毛がないからこそできる能力なのだが、このように発汗できるようになったことで、人間はさらに運動量を増やせるようになる。

わたしたちがフルマラソンを走れるのは、この発汗の能力を手にしたからであり、汗をかけるから体温上昇を抑えることができ、42.195kmでも24時間でも走り続けることができる。なぜ走ると体温上昇するかというのは、また別の機会に話そう。

汗は何から作られるのか

そもそも汗とは何なのだろう?汗はどこから作られるのか、それを答えられる人はかなり少数派だろう。「汗は血液から作られる」これが答えなのだが、もちろん血液がそのまま肌から流れ出ているわけではない。血液は赤血球などの血球とそれ以外の血漿に分けられるのだが、汗が必要になると汗腺が血液から血漿だけを汲み取り、体を冷やすために汗として排出する。

血漿にはミネラルや代謝物質が含まれているが、体外に排出される過程でミネラルは体内に吸収されるようにできている。このため、本来の汗はほとんどが水分ということになる。ところが運動をして急激に体温が上がったときには、大量の汗が排出され、このときミネラルの吸収が間に合わず、汗と一緒にナトリウムやカリウムなどが排出されてしまう。

このため、わたしたちがランニングを行うと、体内に必要な栄養成分が不足して何らかのトラブルを引き起こす。例えばナトリウム不足は脱水症状を引き起こすことはランナーなら誰でも知っていることだろう。夏場に汗をかいたとき、水分だけでなく塩分も補給しろと言われるのはこのためだ。

夏場に1時間走ると2kgくらい体重が軽くなって喜んでいる人もいるが、よく考えてほしい。血液が2リットルもなくなっているという現実を。献血だって1回に400mlなのに、それを5回もしていることになる。体のどこかがおかしくなって当然だろう(血液は間質液と水分のやり取りができるので、実際に血液だけが抜けるわけではない)。

汗として排出される成分

それでは具体的にランニングすることで、体内から汗とともどのような成分が失われてしまうのかを見ていこう。まずは汗の99%を占める水分で、1時間で1Lの汗をかいたとすれば、990gは水分ということになる。そして10gの中に様々な成分が含まれている。

ナトリウム、塩素、カリウム、カルシウム、重炭酸、アンモニア、尿素乳酸、マグネシウム、タンパク質、脂質

このうち栄養成分として考えなくてはいけないのは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの5つになる。なんてことはない、スポーツドリンクに含まれている栄養成分だ。これまでも言ってきたことだが、かいた汗の量と同じ量のスポーツドリンクをこまめに給水すれば、汗によって失われるものはすべてリカバリーできる。

ちなみにスポーツドリンクには糖質が多く含まれているから体に悪いなんてことを言う人がいますが、スポーツドリンクに糖質が含まれて甘くなっているのは、水分の吸収効率を良くするためだ。スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブックにも「1時間以上の運動をする場合には、4~8%程度の糖質を含んだものが疲労の予防だけでなく水分補給効果にも役立ちます」と記載がある。

失われたものを速やかに補うことが重要で、糖質はそれを実現するために使われている。スポーツドリンクが甘いのには理由があるのだと覚えておこう。あれは好き嫌いを言うものではなく、スポーツドリンクの役割を考えたときには、受け入れなくてはいけない特性なのだ。

運動中に一定量を補給し、レース後に完全に補う

一般的にランニングをするときには1時間で1リットル程度の汗をかく。負荷の量による違いや個人差はあるが、おおよそそれくらいだと考えておけばいい。そうなると1時間のトレーニング中に1リットルのスポーツドリンクで補給をすれば、体内の成分は維持されることになる。

だがそれは現実的ではない。ランニング中に1時間で1リットルも飲むなんて正気の沙汰ではない。そもそも胃がそれほど早く水分を腸に送り込むことができない。だからわたしは1kmごとに一口ずつというのを提唱している。胃に水分を溜め込まず、必要なときに必要なだけ吸収するのが理想だ。

当然それではすべての水分を補給できないが、足りない分はレース後に補えばいい。ただし気をつけたいのはアルコールの存在だ。度数の高いお酒を飲むと、脱水症状が起きるのでせっかく補給した水分が排出に使われてしまう。レース直後はビールのような度数の低いお酒を選ぶようにしてほしい。

ビール程度の度数なら水分補給になることもないが、水分を必要以上排出することもない。いずれにしても大事なのはきちんとスポーツドリンクで補い切るということ。そのためにはレース前後やトレーニング前後で体重を測ることが必須だ。

もし1kgほど体重が減ったら、それだけのスポーツドリンクを飲むこと。これで汗で失われた栄養成分と水分が十分に補給できる。面倒に思うかもしれないが、こういう基本的なことができるかどうかで選手寿命が変わってくる。少しでも早くリカバリーをしたいなら、好き嫌いを言わずにスポーツドリンクもしくは経口補水液を飲むしかない。

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