ランナーが知っておくべき血液についての基礎知識

先日、汗についての基礎知識について解説したが、そこで「汗は血液から作られている」という話もしたのを覚えているだろうか。そもそもはランニングをする過程で体から消耗したものを補えば、どこまでも走り続けることができるという仮説に基づく解説なのだが、だから血漿に含まれる栄養成分を補えという話なのだが、よく考えるとそれだけでは足りない。

なぜなら汗をかくことで失われたのは、ナトリウムやカリウムといったミネラルなのだが、実際には血漿が減っているのだ。だから血漿を補わなくてはいけないのだが、さてどうすれば血漿が作られるのだろう?血漿と血球は何が違うのか、そういう基本的な部分について話をしていこう。

目次

血液とは

本当に基本的な部分から話を始めよう。血液は下記の4つの成分で構成されている。赤血球と白血球、血小板は細胞成分(血球)と呼ばれ、血液中の45%を占める。残りは血漿成分と呼ばれる血漿で、血漿の90%が水分、7〜9%がタンパク質で作られている。

  • 赤血球
  • 白血球
  • 血小板
  • 血漿

血液は体重の約8%を占めると言われている。体重が60kgなら4.8kgが血液ということになる。ランニングの前後で2kg体重が軽くなるということは、細胞外液が2kg失われた計算になる。このうち約15%が血漿で300mlほどの血液が不足している状態になる。

これが、どれくらい危険なのかは容易に想像できるだろう。血漿がなければ細胞成分を運ぶことができない。そうなると細胞に酸素を送り届けられなくなり、さらには体温上昇を抑えられなくなり、体は疲労困憊な状態になって活動を停止する。

赤血球

細胞成分の約96%を占めるのが赤血球だ。赤血球に含まれているヘモグロビンが肺で酸素を受け取り、細胞にまで送り届ける。そのときに二酸化炭素を代わりに受け取って、肺で二酸化炭素と酸素を交換する。ランナーによくある貧血は、この赤血球が不足することで発生する。

ランニングをすることで赤血球は血管内で溶血することが知られており、ランナーは積極的に鉄分を補給する必要があるのだが、これに関してはまた別途説明するとしよう。

白血球

白血球は体内に侵入してきたウイルスや細菌などを食べる役割がある。白血球は週3回程度の軽いランニングで増えることがわかっているが、フルマラソンやポイント練習のような負荷の高いランニングをすると一時的に減るとされている。これが、フルマラソン後に体調を崩しやすい原因となっている。

血小板

血小板は出血を抑える役割がある。血が出ても自然に止まるのは、血液中にこの血小板が含まれているためだ。血小板は運動をすることで増えることがわかっている。ただし機能上の変化はそれほどないとされている。

血漿

血漿はタンパク質・ブドウ糖・脂質・金属イオン・電解質・ホルモン・ビタミンなどで構成されている。汗の原料であるが、通常は汗として排出されるときには、途中で体内に成分を吸収するが、ランニングで大量の汗をかくときには、吸収が間に合わず、これらの成分も体外に排出されてしまう。

血液はどうやって作られるのか

血液は赤血球や白血球、血小板などの細胞成分と血漿成分に分かれているが、細胞成分を作るのが骨髄というやつだ。骨髄は必要に応じて赤血球や白血球、血小板を作り出す。例えば感染症にかかってしまうと、免疫力を高めるために白血球が作られる。出血すれば血小板が作られる。

赤血球は体内の酸素不足によって生成される。酸素が足りなくなると、まず腎臓が酸素不足を感知し、エリスロポエチン(EPO)と呼ばれるホルモンを産生される。そのEPOが骨髄を刺激し、赤血球産生を促すというわけだ。赤血球に含まれているヘモグロビンの材料となるのが鉄であり、鉄が不足すると十分な赤血球を作れない。

これらの細胞成分が作られるのにはかなり時間がかかる。献血をしたときに、赤血球の量がもとに戻るのに2〜3週間、血小板で4〜5日かかる。もっともランニング中にパフォーマンスが大きく低下するほど細胞成分が減ることはなく、むしろ問題は汗として流れ出る血漿にある。

血漿成分のうち、タンパク質は肝臓で作られる。このタンパク質の役割は、血管内に水分を留めることにある。血漿の90%が水分でできているが、この水分を適正な量に維持できるのは、血液中にアルブミンと呼ばれるタンパク質が含まれているためだ。

実は血管の内外で水分の出入りが自由になっていて、アルブミンが血管中にあるとそちらに水分が引き寄せられて、血漿の量を一定に保とうとする。またアルブミンはカルシウムや亜鉛、脂肪酸、ホルモンなどとも結びつくことができ、毒素と結びついて中和することもできる。

アルブミンがあるおかげで、血液中の水分が不足しても間質液から水分を取り込むことで補えるのだが、そうなると今度は間質液の水分が足りなくなる。だから給水する必要があるのだが、水分は腸で吸収されるので、飲んだ水分が腸に届かなければ意味がない。

腸で吸収されやすい水分を摂ることが重要

汗で失われた血漿を補う方法はシンプルで、スポーツドリンクや経口補水液を飲むことだ。血漿に近い成分のドリンクを飲み、それを腸で吸収すればいいのだが問題は飲んでから吸収までにどれだけ時間がかかるのかということだ。

一般的に水分は20〜30分で体内に取り込むことができる。20〜30分経ったら吸収するというわけではなく、腸に届き次第吸収されていくのだが、大量に水分を補給しても胃から腸に流れていかないので、「胃がタプタプ」するだけだ。だから、給水はできるだけ少量をこまめにするのが理想だ。

スポーツドリンクが甘いのは、この吸収速度を早めるためで、吸収速度を考えてブドウ糖と果糖が加えられている。ちなみに果糖しか使っていないドリンクだと、吸収に時間がかかるので給水にはならない。果物を使ったジュースではすぐに吸収できないことを覚えておくといいだろう。

いずれにしても大事なのは、摂取した水分が腸で血液中に取り込まれ、血漿の水分になるということだ。これを怠ると体内のあちこちで水分不足による破綻が起きる。場合によっては細胞が壊れてしまうこともあり、それが疲労に繋がってしまう。

汗をかいたらスポーツドリンクを飲む。スポーツドリンクの好き嫌いはあると思うが、走り続けたいならこまめに飲むことだ。

まとめ

かなり複雑な話になってしまったが、血液というものがどういう性質があり体で何をしているのかはわかってもらえたかと思う。ランニングをするときに気をつけなくてはいけないのが血漿であり、汗で流れ出した血漿はスポーツドリンクなどで補う必要がある。

スポーツドリンクであればミネラルなども一緒に吸収できるので、血漿の成分に変化がなく走り続けることができる。ランニングをすることで細胞成分も増減するが、これが短期間のパフォーマンスに与える影響は少ない。タンパク質であるアルブミンも走って消耗するわけでもない。

大事なのは水分とミネラルだ。ミネラルを含んだ水分を飲み、腸で吸収すれば血漿の変動を最小限に抑えることができる。ただし、飲んですぐに吸収できるわけではない。まずは胃を通過しなければいけないので、1回の摂取量は胃に溜まらない程度に抑えたほうがいいだろう。

血液に関しては、ランニングに直結する部分なので、いずれもっと深く解説するが現時点では、これくらいを頭に入れておくといいだろう。

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