昨日はランニングシューズの発表会のために都内に戻ってきました。ちょうど同じ日にランニングウォッチの発表会もあったので、新宿に荷物を置いて、自転車で六本木と原宿へ。イベント間の時間が30分しかなくて焦りましたが、こういうとき新宿に自転車があるというのは便利です。
それはともかくランニングシューズ。シューズそのものの話はRUNNING STREET 365でしますが、なんとなくモヤモヤしていたものが、ちょっとした確信に変わりました。それはランニングシューズの開発に大きな変化が生まれているということ。
おそらくこの1〜2年の間でシューズ開発の環境が大きく変わっています。昨日履いたシューズを含め最近履いた4足は、どれもクオリティが高すぎます。それもトップアスリートが履くモデルではなく、入門モデルとかサブ4を狙うようなシューズのクオリティがあまりにも高すぎます。
単純に開発力が上がったと考えるのは無理があります。それだとメーカーごとに変化が起きる時間にズレが生じるので。私が履いたのはアディダスとニューバランス、アシックスの3メーカー。その3つが同時に開発力を上げるなんて考えられません。
あり得るとすれば、開発ツールの進化です。これは私の推測でしかありませんが、おそらく解析ソフトにダイナミックな変化が起きています。解析時間が短くなったとか、これまでにない解析ツールが出てきたとか。それならば納得がいきます。
解析ツールというのは一般人には馴染みがないかもしれませんが、私のように機械設計をしてきた人間には馴染みのあるツールです。簡単に言えば物体に力がかかったときにどんな変形をするのか、どこに力がかかるのかなどがわかるツールです。
これがあれば毎回実験をしなくても、ある程度のスペックを事前に把握できます。今どきのランニングシューズは少なくとも大手メーカーなら必ず解析をかけます。解析ソフトで試行錯誤をして、これでいけるとなったものを試作するわけです。その試作も3Dプリンタを使うケースもあります。
ただ解析ソフトというのは昔からあり、私が大学からの研究室にいた頃にはすでに使っていたので、大手メーカーは20年以上前から導入しといたはずです。ただ20年前はほとんど使い物にならなかったはず。鉄などの金属の挙動を解析するのは簡単なのですが、弾性の解析というのがかなり難しいので。
私がまだ会社員だった8年前の段階ではミッドソールのような弾性の解析は難易度が高く専門的な知識が必要で、私が解析をしていた頃は近似的な形状のもので代用するなどしていました。あれから8年経過したわけです。解析の世界も大きく変わっているはずです。
その結果、弾性の解析も難なくこなせるようになって、トライアンドエラーをしやすくなった。シューズの開発期間に対して、シミュレーションを何度もできるので、これまで以上に高品質のシューズを作れるようになったというのが私の推論。
もしくは3Dプリンタなどを導入したことによる試作納期の短縮が業界全体で起こっているか。いずれにしても大きな変化が起きているのは間違いありません。これはここからさらにシューズが進化することを意味します。同時に進化の終焉も意味するのですが。
すべて計算で答えが出てしまうので、ここから1〜2年はランニングシューズがもう1段階スペックが上がります。でもその先はより良いものが作れなくなります。そうなったときに、各メーカーがどう動くのか、元設計者としてはかなり気になります。