ランニングフォームにも流行り廃りがあり、少し前はフォアフットブームだったのもあり、今はそれなりに知識のあるランナーは猫も杓子もフォアフット。アフリカのランナーはフォアフットだとか、フォアフットならケガをしにくいだとか、そういうのが流行りのはしりだった気がします。
裸足ランニングのバイブルともいえる「BORN TO RUN」の影響も大きいのですが、フォアフットが流行ったときに多くのランニングコーチがフォアフットを推奨し、「フォアフット=正しいランニングフォーム」みたいな感じになってしまいました。
別に誰がどのような走り方をしようと構いはしないのですが、先日アシックスが行ったGEL-KAYANO 30のローンチイベントで試走したときに、メディア関係のランナーが半数以上がGEL-KAYANO 30を履いてフォアフットで走っているわけです。
それだけでもどうかと思うのですが、フォアフットで走って「これはすごい」とか言い合うわけです。いやいや、その走り方は開発者に対する冒涜ですし、シューズに適した走りをせずに、シューズについて語るのは恥ずかしいからやめればいいのにと思ってしまったのはここだけの話。
初めて足を入れるランニングシューズは、基本的に情報を白紙にして履くようにします。走り方もデザインからある程度は推定しておきますが、あらゆるフォームで走って試します。もちろんフォアフットも踵着地も試して、重心の位置を変えてみたりもします。
そうやってランニングシューズの声を聞くわけです。どうやって走ってほしいのか、すべてシューズが教えてくれるので。でもそれをしている人はほとんどいません。普通の人はそれでいいのですが、メディアとなると話が変わってきます。
なぜならメディアは取材したシューズについて記事を書き、読者に情報を届けるのが仕事だから。そこに自分の走り方とか、フォームに関する信念なんていらないわけです。どのように走ればシューズのポテンシャルを最大限に引き出せるかを感じ取り、どのようなランナーに適しているのかを文章化するわけです。
それをせずに、メーカーが語った表面的な言葉だけで記事を作る。そして、多くの人はその記事を読んでシューズ選びの参考にする。断言してもいいですが、大手メディアやユーチューブチャンネルのシューズレビューはそのほとんどが内容のないものです。
もちろん、私なんかよりよっぽどすぐれたレビュー記事を書く人もいます。私だけがちゃんとレビューしているなんてことは言いません。でも、少なくとも試走会の場で走り方の試行錯誤をしている人は皆無で、その半数以上がフォアフットになっているわけです。
だから本当は、ほとんどの人がGEL-KAYANO 30の本当のすごさをわかりません。何が優れているかわからないので、メーカーの発信した言葉をそのまま記事にするわけです。繰り返しますが、誰がどのように走ろうと自由だと思います。
フォアフット至上主義でも構いません。でもランニングシューズのレビューをする人がそれだと、それで本当にいいのかなと思うわけです。でも彼らは仕事でやっているから仕方ないんですよね。ランナーであってもシューズの専門家でもなければ、シューズについて語る言葉を持ち合わせていないので。
私がここで言えるのは、シューズレビューの記事も動画も鵜呑みにしてはいけないということ。提灯記事になっているものではなく、きちんとネガティブな面についても書いている記事や動画を参考にしてください。ランニングシューズだけの話ではありませんが。