UTMFの2次募集から考える大会運営の理想と現実

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日本で注目されているトレランの大会がハセツネとUTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)ですが、そのうちのUTMFで2次募集を行ったことが話題になっています。

UTMFの募集人数が1400人、UTMFの半分の距離のSTY(静岡から山梨)の募集人数が1000人。

抽選の結果、選ばれたランナーのうちUTMFで93名、STYで142名もの未入金者が発生しました。その結果、UTMFでは2次募集を行ったのですが、当初「2次募集は行わない」と明言されていたことが混乱を招く結果になりました。

UTMFに落選したランナーは、「2次募集がない」ため別の大会のエントリーをすでに行っていたりするわけです。

もちろん、どんな形であれ走れることを喜んでいる人もいます。

ただ、これほどまでに多くの未入金者がいることに対しての憤りや、「2次募集は行わない」と明言したのに「2次募集を行います」と手のひらを返した運営への不信感がくすぶっています。

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なぜここまで多くの未入金者が発生したか、その原因はまったくわかりません。ほぼ1割もの参加者が「どうしても出たい」大会のはずのUTMFをキャンセルする理由が見つかりません。

九州での震災の結果、入金ができなかった人、被災したため参加を見合わせた人も何人かはいるのでしょう。

UTMFやSTYは「当たってから考えよう」という類の大会ではありません。高い参加費に躊躇する人もいるかもしれませんが、そんなことはエントリー時にわかっていたことです。

「富士山が噴火する可能性がある」ぐらいの噂でもないかぎり、参加を見送るような大会ではないはずです。ただの未入金だけで済ませるべき問題ではないようにわたしは感じています。

もうひとつの問題、「2次募集は行わない」を覆したUTMFの対応はどうなのでしょう。

さすがに1割も未入金者が出た場合、大会運営に大きな影響を与えます。わたし個人としては2次募集を行ったことに関して、大会規模は違えど同じ大会運営者として気持ちは分かりますし、苦渋の選択だったことも理解できます。

ただ、やり方に問題があるように感じます。

まずは「2次募集は行わない」と言ったことに対して「ごめんなさい」を伝える必要があります。たったそれだけで、イメージは大きく変わります。

「申し訳ない」という気持ちが2次募集の案内からはまったく伝わってきません。

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実はこの「気持ちが伝わってこない」ことは昨年の大会中にも見られたことです。昨年は雨の影響でコースがぬかるみ、途中で大渋滞がいたるところで発生したため、走力が残っていたにも関わらずタイムオーバーになった人が大勢いました。

大会側としては関門時間を延長するなどの配慮を行いましたが、走っているランナーにはそれがうまく伝わらず、制限時間を過ぎた時点であきらめてしまった人も少なくなかったそうです。

これはもう天候によるものですので「仕方がなかった」で済ませてもいい問題です。

ここからはわたしのあやふやな記憶でしかないのを理解して読んで欲しいのですが、大会が終わったあとに運営側から出たコメントが「運営に準備不足もあったけど、ランナーも準備不足だ」というニュアンスの発表がありました。

問題はコメントの内容ではなく、そのコメントから感じた「上から目線」に少しイラッとしたことだけは覚えています。

そうじゃなくて「ごめんなさい」というべきなんじゃないか、自分たちが良い悪いではなく、自分たちに不足があればそれを謝る。まずは全面的に謝る。こういうときはそこから始めなくてはいけません。

「ごめんなさい、でも・・・」小学生じゃないのだから「でも」はいりません。

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実際にどうなのかはわかりませんが、UTMFからは「走らせてやっている」という思いがときどき見え隠れしているように感じるのはわたしだけでしょうか。

どんな大会も「選手とランナーと応援者」が力を合わせることが大会成功の唯一の道だとわたしは信じています。東京マラソンがあれだけの成功をしているのは、「走らせてやっている」という態度を微塵も見せないからです。

UTMFは日本最高峰のトレランレースですから、そんなことしなくても人は集まってくるのでしょうが、長い目で見たときに、UTMFの「走らせてやっている」感はマイナス方向に向くような気がしてなりません。

大会運営者はランナーの上側にいて施す全能の神ではなく、ランナーの下側に立って支える存在であるべきです。

UTMFにはUTMFの方針があり、わたしの考え方とは違うのでしょうが、少なくとも前言を撤回するときに「ごめんなさい」ぐらいは言ってもいいんじゃないかな、言うべきなんじゃないかなというのが個人的な思いです。

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「想定外で自分たちは悪くない」から約束をやぶっていいなんて理由はありません。

これは運営者とランナーの信頼関係の問題です。UTMFのような大きなレースにおいて、運営者を信じられなくなることほど危険なことはありません。

わたしの中にあった「一度はUTMFに出てみたい」という気持ちが急激に萎んでいくのを感じました。

「誠意ってなにかね」北の国からの名場面のひとつですが、こんかいのちょっとした騒動でわたしが思い出した言葉です。

たぶんUTMFの事務局に足りないのは「誠意」、とった行動よりも言動に「誠意」を感じられないことに不満を感じてる人たちが少なからずいます。

もっとも2次募集もあっという間に埋まりましたから、UTMF人気はこれからも当分続くのでしょう。

それこそ「誠意ってなにかね」とつぶやきたくなる現実ですが。

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