金沢マラソン、正直言えば完走できる自信はまったくなし。先週の北京でのマラソンの疲労はそこそこ回復したものの、ここだけの話(といっても母は確実に知ることになるけど)金曜日に母と登った大山の影響で右太ももの内側に激しい炎症が発生中。
いずれしてもわたしはどこまで走れるのかがまったく未知数な状態。もしかしたら5kmや10kmでリタイアする結果になるのでは?そんな不安の中でのスタートでした。
ブロックはEブロックで真ん中くらいのブロックからのスタートだったが、わたしには最後尾スタートの美学がある(と言っても過去に2回しかしていない)。
ただ最後尾スタートをして、太股の痛みに耐えられなくなってリタイアしたらどうしよう。そんな不安がわたしを襲いかかる。
ただ当たり前にできることを当たり前にしても面白くない。結果的には1万人以上のランナーの最後尾からスタート。何千人抜けるかが、わたしのテーマ。嘘だ。何人も抜くことに意味なんてない。
マラソンはいつだって自分との戦いでしかない。
最後尾からスタートすることで1人でも多くのランナーに万里の長城マラソンを知ってもらいたい。そして、1人でも多くのランナーに勇気を持ってゴールを目指してもらいたい。ただそれだけだ。
スタート直前、なぜかテレビ局のカメラからは徹底してわたしを避けていく。裸足が悪いのか河童が悪いのか、半被が悪いのか・・・まぁ全部だろうな。総合的に見て、近寄らないほうがいいと思ったのだろう。
わたしが取材側でも避けると思う。
それでも多くのランナーが話しかけてくれる。ランナーは優しい。北陸ではまだ裸足ランニングは「噂に聞く」程度の認知度しかなく、裸足ランナーは珍しいのかもしれない。
それでもスタート直後に、1人だけわたし以外の裸足ランナーと遭遇。東京から来たそうだが、裸足の河童を知っている感じもなかったので、日本の裸足界は思った以上に広がっているようだ。
裸足王子の吉野さんの知り合いという人から声をかけられたりもしたが、個人的には裸足の河童の存在が裸足業界で小さくなってくるのは嬉しいこと。
裸足業界もそろそろ世代交代や新しい力の台頭が必要だとわたしは考えている。
それとは別に、夢の島の河童さんですよね?と話しかけられたり、NAHAマラソンでお話した・・・というような感じで話しかけられる。これは正直嬉しい。裸足関係でない人にインパクトを残せているということが。
大会としての金沢マラソンは前半の声援が素晴らしい。スタートから数キロですでにハイタッチが始まる。このまま続くと、ゴールする頃にはわたしの手は2倍に膨れ上がるか、腕がもげるのではないかと思うほどのハイペース。
3キロくらい走った時点で、すでにわたしはなぜか満たされていました。満足感が高いのにまだ3キロしか走っていないという事実。マラソンはいつも残酷だ。
この時点で太ももに違和感はないものの、なぜか着地が安定しない。普段は親指側から降りるかフラットに着地するのだが、今日はなぜか足の外側から着地する。
その結果、足首の内側に徐々に疲労が溜まっていくのがわかる。
この時点でわたしの今回のテーマは「先週よりも痛みを感じない走り方をする」ということに決まっていた。先週の万里の長城を走らない万里の長城マラソンでは、後半の走りがグダグダ。
そのグダグダを回避することが今回の金沢マラソンのテーマで、最後までペースを維持して走り抜くことをテーマに走っていた。何をしたかに関しては、少しテクニカルな話になるので、また別の記事にすることにしよう。
とりあえず5時間以内でのゴールをひとつの設定とした。1kmあたり7分以内で走ればなんとかなる。
先週のような大失速がなければ難しそうはないのだが、金沢の路面は北京よりも荒く、しかも予想外の敵がわたしを待ち受けていた。
その敵とは、補給のためのエイドの存在だ。
エイドが豊富すぎて、大きなエイドでは通過するのに2分以上ロスしてしまう。和菓子や洋菓子、いなり寿司や漬物・・・
金沢マラソンの魅力はこのエイドにある。しかも、ひとつのエイドにこれでもかと詰め込むので、すべての名物を食べられないという苦悩。
ひとつのお菓子を口に入れて一歩進むとつぎのお菓子、そして一歩進むと別のお菓子・・・口の中には4種類くらいのお菓子が詰まっている。なんの味だかさっぱりわからない。口の中にはしょっぱさと甘さが混在するファンタジー状態。
わたしが欲張りすぎるのか、それとも金沢マラソンの設定がおかしいのか。
そして最強の敵は30km地点に待ち受けていた。金沢カレーのエイド。想像してほしい。フルマラソンのエイドにカツカレーが並んでいるその状況を。
しかも美味しい(あやうくおかわりしそうになった)。
残り10kmでも相変わらず1kmあたり7分以内で走ればよく、わたしは6分40秒程度で走ってた。ところがそこで稼いた貯金をエイドがいちいち奪っていく。エイドがある1kmでは、どうしても8分30秒はかかってしまう。
とはいえ、エイドを無視するわけにはいかない。このエイドこそが金沢マラソンの魅力なのだから。
幸か不幸か、20kmを超えたくらいから着地が落ち着き始めたものの、最初のうちは「そうそうこの感じ」と思いつつ、その状態を継続できなかったが、、徐々に安定していく着地。
進むに連れて最近取り組んでいる、背中を使った走りができ、足裏にほとんど負荷をかけずに推進力が生まれていくのを感じる。30kmを過ぎたあたりでようやく確信した。
完走は問題ない。
問題はタイムだ。なんとかして5時間を切りたい(5時間を超えても何の問題もないのだが)。背中の筋肉を使った走りの感覚を徐々に高めつつ、一歩一歩を力強いものに変え、ギアを上げていく。
残り5km、残り4km・・・残りの距離は短くなる。
加速する河童。
そして残り1kmとなったところで5時間内の簡素に向けて残り時間10分。ここでようやく落ち着くことができた。ここからはいつもどおり、周りのランナーを励ましながら進む河童(おそらく迷惑なんだとは自覚している)。
どんどん声を出して、周りのランナーの限界を引き出す。「裸足の河童になんて負けてられない」そんな気持ちを持ってもらえれば理想。そこからスピードアップする人、わたしを抜き返す人も出て来る。
そしてなんとかわたしは4時間55分22秒でゴール。
4分以上も余裕があるやん・・・そう思いながら、タオルを受け取り、完走メダルを首にかけてもらって、あとは完走証だけというところで、わたしの疲労がピークに達する。
背中の疲労感が尋常でなく一歩も歩けなくなってしまった。
背中の筋肉を使った走りをしたので当然なのだが、ここまで疲労感が出てきたのは初めてのこと。とりあえず通路の端で座り込んで回復を待つ。
休めば休むほど高まる疲労感。
意を決して記録証をもらいに歩き出し、わたしの金沢マラソンはなんとか終わりを迎えることとなった。
今回の裸足ランでは、裸足ランと背中の筋肉を使った走りの相性の良さを確信することができたが、それと同時に前半の20kmのように思い通りに着地できないときの危険性も感じられた。
ハマったときの裸足ランはすごいけど、ハマらなかったときに発生する痛みという裸足ランの怖さがある。
もっともこれはわたしにとってまだまだ裸足の技量が未熟だから起きたことかもしれない。裸足で当たり前にフルマラソンを完走できることに満足している場合ではない。
もっと裸足の技術を高めて安定感のある走りを身に着けなくてはいけない。それと同時に背中の筋肉を使った走りとの融合を進めていく必要がある。
もっとも最初から背中の筋肉を使った走りができていたら、きっとわたしは30km手前で潰れていただろう。5時間以内で完走できたのはケガの功名。
まだまだだな。
裸足ランの可能性をぜんぜん引き出せていないし、自分で限界を作ろうとしている。裸足でフルマラソンを完走できることは当たり前にできることは確信した。
そろそろ次のステップに向かうタイミングかもしれない。
やっぱり万里の長城マラソンを裸足で完走?方向性はまだ定まらないけど、裸足ランの可能性はまだまだ限界ではないし、もっともっと先にわたしが思いもよらない何かが待っている気がする。
裸足道を極めるなんて大きなことは言えないが、自分だけの裸足ランの形を構築していきたい。そう感じながら金沢マラソンのゴール地点からのシャトルバスにわたしは乗り込んだ。
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