大都市マラソンのほとんどは、「目指せ東京マラソン」を隠れたテーマにしているのではないでしょうか。とくに横浜マラソンとさいたま国際マラソンは、東京の隣ということで何かと比較されてしまう大会です。
日本国内のマラソン大会でやはり東京マラソンは別格です。抽選をしても10倍以上で簡単には走れません。それだけの人気の大会ですのでスポンサーがいくつもつきます。東京という街をあげて大会をサポートし盛り上げます。
ですので多くのマラソン運営者は、東京マラソンをひとつの理想の形として捉えているのではないでしょうか。
ただ、地方都市になると東京と自分たちの街の違いは嫌というほどわかっています。若者はみんな東京を目指し、地元を離れていくという現実と何十年も向き合い続け、その結果としてここ最近の地方都市は個性を発揮して、世界中から観光客を呼び寄せています。
マラソン大会もその地方の特色を活かしたものが多く、地方都市のマラソン大会のエイドなどは完食したらマラソン後に体重が増えるほど、食べきれないほどの地元の特産品を用意しています。東京マラソンを意識しつつも、それを真似るのではなく、東京マラソンにないものを提供することで地方都市のマラソン大会は高評価を得ています。
さて、さいたま国際マラソン。非常に立ち位置の難しい大会だと思います。まず国際マラソンであり、オリンピックや世界選手権などの選考レースであることがひとつ。そして東京マラソンと参加者層が重なっているという点がもうひとつの難しさを生み出しています。
昨年は4時間制限のレースでしたので「この大会は競技性の高い大会です」とすることで、いろいろな不足に対してのエクスキューズができたのですが、今年は6時間制限となったことで、競技性の高い大会という面を持ちながらも市民マラソンという面も持たなくてはいけなくなりました。
その結果として昨年のRUNNETの評価は79.9点(これでもそこそこ低い)だったのに対して、今年のRUNNETの評価は大会当日の22時30分現在でかなり低めの63.2点になっています。まだまだ評価は変わるかと思いますが、厳しい評価が目につきます。
RUNNET評価:http://runnet.jp/report/race.do?raceId=123315
運営そのものは去年よりも格段に良くなっていますし、もっと良くしようという雰囲気を感じました。ただそれはあくまでも去年と比べてということで、日本中のマラソン大会を知っている最近の市民ランナーにしてみれば、「なんでそうなるかな」と感じることが多かったのではないかと思います。
東京マラソンのような大型のエキスポを行うわけでもないのに前日、前々日受付が必要であること。しかも参加費は15000円とウルトラマラソンかと思うくらいの価格であること。給食エイドが3ヶ所しかないこと。その給食エイドもさいたまらしさがまったくないということ。トイレが不足していること。動線がおかしいということ。
参加者が低い評価をつけてしまった理由は他にもあるかと思いますが、これらが大きなポイントになっています。
スタート地点から10km地点までを往復しながらわたしが感じたのは、どことなくチグハグした感じでした。その原因が最初わからなかったのですが、途中で気づきました。エイドのボランティアスタッフや救護のスタッフのほとんどが、リュックを背負って各自の仕事を行っていました。
共通したリュックではなく、自分たちの荷物を背負いながらエイドで水を配ったり、声援を送ったりしているのです。そして、休憩などを取るときもランナーから見える位置で食事を取ったりしている姿を何度も見かけました。
これがさいたま国際マラソンがうまくいっていない正体だとわたしは感じています。ボランティアスタッフが悪いと言いたいのではなく、この不自然な形をあたり前にさせている、そこまで運営側の目が行き届かないことが、さいたま国際マラソンのチグハグさを生み出しているように感じます。
荷物に関しては「自分の荷物は自分で管理してください」というような指示が出たのかもしれません。でも問題は荷物を背負っていたということではなく、仮にそこを改善してもそうなってしまった原因を改善しないと、来年以降はもっと別のところにチグハグさが出てしまいます。
魂は細部に宿るとわたしはいつも言っていますが、こうした細部にさいたま国際マラソンの魂が宿っています。リュックを背負ってエイドの仕事をすることがおかしいと思わない感覚。それが他の部分にも現れてしまって、結果として参加者の低評価になっているように感じます。
東京マラソンの素晴らしいと感じるところは統制がとれていることにあります。経験のあるボランティアスタッフや運営者がしっかりと指示を出して、経験の少ないスタッフが動きやすいように組織化しています。一事が万事で、東京マラソンはそういう細部が徹底されています。
もちろんさいたま国際マラソンも素晴らしいなと感じるところはあります。コース上にいくつか歩道橋があるのですが、自転車で道路を横断したい人のために、ボランティアスタッフが自転車の上げ下ろしをしてました。他の大会でもしているのかもしれませんが、わたしはそのような光景を始めてみました。
とてもかゆいところに手が届いているというか、そんな細部まで考えていたのかと驚きでした。
ただそのようなところまで考えて対策をした結果、ランナーの目につきやすい場所が少し疎かになってしまったのではないでしょうか。
冷静に判断すれば、それほど悪い評価になるようなマイナス面はそれほどありません。ごくごく普通のマラソン大会です。10年前ならば誰もが喜んで参加したくらいの運営レベルはあります。首都圏から日帰りで参加することのできるお手軽な大会です。
ただ、さいたま国際マラソンの目指すところと実際の現状を考えたときに、さいたま国際マラソンはどうやっても東京マラソンにはなれません。ならばまったく違う色のマラソン大会として、例えば昨年のような4時間制限の大会として突き進むというのもひとつの選択肢なのかもしれません。
そもそも「さいたま国際マラソン」は「埼玉国際マラソン」ではありません。主催に埼玉県も入っていますが、あくまでも「さいたま市」の大会です。やはり東京都のマラソンとは規模が違います。
良くない評価になっている状態を変えることはできません。わたしが言うまでもありませんが、まずはこの現状を受け入れて、さいたま市が開催するマラソン大会のあるべき姿を考え直すところから始めなければ、来年は定員割れするかもしれません。
さいたま国際マラソンにしかない魅力をどうやって作り出してくれるのか、今後を楽しみにしていますが、いきなり「もうやめた」とい言い出さないかという不安もあります。
個人的な感想ですが、埼玉がひとつになっていない。昨年の大会からずっとそれを感じています。埼玉県とさいたま市、そして警察が一丸となって行うべきイベントを、それぞれがひとつになりきれていない。今年もそれをいたるところに感じました。
出てしまった評価は変えられませんが、なんとかして来年以降は、埼玉が一丸となって評価が大きく変わる大会にしてもらいたいところです。わたしなんかが言うまでもなく、運営者たちが一番分かっているかと思いますので、さいたま国際マラソンについてはこのあたりで。
スポンサーリンク
コメント