台湾旅行に行くときに、どうしてもしたかったことが1つだけあった。まだ初々しさの残る2回目の訪台、わたしは1人で十分を訪れている。そのときに見たランタン飛ばしの光景。
いつかやってみたいと願い、今回の旅でようやくそれを実現することになる。
台北のホテルでチェックインを済ませたのが14時半。まだ部屋の掃除が終わっていないということで、まずは遅めの昼食。腹が減っては戦はできぬ。腹が減ってはランタンも飛ばせない。
宿泊したのはビューティホテルズ台北ホテルB7。わたしがよく利用する台北駅南側にあるエリアだが、このあたりで美味しいお店というのはなかなか難しい。
それでも時短のために、個人的にはあまり評価の高くなかった二二八和平紀念公園のすぐ近くにある精緻雲吞料理「鐘國」さんへ。帰国してから知ったのだが、鐘國は台北に3店舗あるらしい。
結果的に中華圏はやっぱり大人数で行くべきだということを再確認。
わたしが以前頼んだのは海老ワンタン。ワンタンのスープが淡白すぎたのがイマイチだと感じた理由。今回はいろいろと注文した結果、スープはやはり淡白だったが、その他の料理はしっかいと濃厚。
お……美味しいじゃないか。
ローカルなお店で、おばちゃんもちょいツンデレだが、基本的には優しいので、きっとこれから重宝するお店のひとつになる。ただしビールは置いてない。
荷物をホテルにおいて、向かうは十分。
せっかくだからローカル線に乗ろうと思ったのだが、実は電車で十分に行くのは少しややこしい。切符が3種類あってそれぞれに乗れる電車が違う。鈍行と急行と特急といった感じだろうか。
特急は座席の予約がないとずっと立っていなくてはいけない。とりあえず目の前に来た鈍行に乗り込んだら、親切なおじいちゃんが「これは基隆行きだよ」と教えてくれる。行き先が違うので途中で乗り換えが必要。
「後から来る電車と同じのに乗ることになる」と教えられたので、次の電車を待つことに。やってきたのは特急なので座席がない。
いくらなんでも次の鈍行までは待つ時間はないので、特急に乗り込むものの当然座席はない。ところが一番前の車両だけは、荷物置き場のようになっていて、床に座り込むことができる。移動疲れしているわたしたちは、そこに座り込む。
乗り換えの瑞芳までのドナドナの旅。数時間前まで新幹線のグリーン車に乗っていたのに、天国から地獄。
さらに瑞芳からは冷房でキンキンに冷やされたローカル線に乗り換えて、ほどなくして十分に到着。十分はそもそも炭鉱の町。毎年平渓天燈節が開催され、願い事が書かれた1000個のランタンが空に向かって上げられる。
ランタンを上げるだけなら、平渓天燈節に限らずいつでも上げることができる。
ランタンには色があり、例えば赤色なら健康運、黄色なら金運といったように、その色に合わせた願い事を書いて、空に上げると願い事が叶うと言われている。
わたしたちが選んだのは、赤(健康運)−黃(金運)−藍(事業運)−桃(人気運)の4色。
やりたいと思っていたことなのだが、いざ願い事を書くとなると難しい。なんせ願い事なんて久しくしたことがないから。自分の願いは自分で叶える。それがわたしのスタイル。
みんな、それぞれの願いを書いた後に「またみんなで来れますように」という一言を付け加えておいた。
いろいろ書いたが、わたしが本当に願ったのはこれだけかもしれない。旅の一秒一秒が楽しくて、どれだけ笑ったかわからない。この時間がいつまでも続けばいいなとずっと思っていた。
みんなの願いを込めたランタンは、台湾の大空に吸い込まれていく。わたしの長年の願いがかなった瞬間。
十分まで来たら次は九份。ここはタイムイズマネー。タクシーで一気に移動。ずーっと無口だったタクシーの運転手が、九份に着く直前に「我不喜欢日本」と言う。聞き間違えかと思ったが、翻訳アプリで「私は日本が嫌いです」と翻訳してくれる。
そういう人もいるんだなと思ったら、ところが「この車も、私の持ち物はあれもこれも全部日本製品だ」と自慢してくる。「不喜欢?喜欢?(嫌いなの?好きなの?)」と確認すると「喜欢(好きだ)」と笑顔で答える。
タイワニーズジョーク?
この旅でずっと感じていたことだが、台湾のタクシーの運転手は基本的にみんなおちゃめだ。さらに話を聞くと運転手は、毎月日本に遊びに来ているらしい。
急に陽気になった運転手に別れを告げて、夕暮れ時の九份へと侵入していく。休日の夜だが、雨ということもあって人が少ない。それでも観光客の半数は日本人。LCCのセールで台湾行きがあっという間に売り切れる理由がよくわかる。
すでに閉まっているお店も多かったが、九份の魅力は日が沈んでから。
千と千尋の神隠しの舞台となったと言われている建物は、日が沈んだ後に最も美しい表情を見せてくれる。昼間の姿も悪くはないが、九份に行くのなら、ぜひ夕方以降に訪れて欲しい。街全体が幻想的でただ歩いているだけで、夢の中にでもいる気分になれる。
だが、わたしたちには時間がない。いつまでも、その幻想的な街に浸っていたいが、美味しい小籠包がわたしたちを待っている。
小籠包のお店は閉店時間が意外と早い。この時間からでも間に合うお店を探して、一番遅くまで営業している京鼎楼へタクシーで移動。移動中はまたしてもみんな爆睡し、小籠包との戦いに備える。
京鼎楼はわたしが初めて台湾で食べた小籠包のお店。それ以降、何度も来ようとしたのだが、いつも行列であきらめたていた。今回は、20時という遅い時間だったので、さすがにスムーズに入店。
台湾の小籠包には、ローカルな感じのするお店と高級感の鼎泰豊のようなお店があるのだが、京鼎楼はわりとローカルよりのお店で、安くて美味しいと評判。小籠包も美味しいのだが、他の料理も素晴らしい。
閉店時間ギリギリまで粘り、ラストオーダーと言われたにも関わらず閉店10分前に「お願い、ビールをもう1本!これ最後だから」と追加のお願い。仕方ない子たちだねぇという表情で持ってきてくれるおばちゃん。
22時、完全に満腹の状態で京鼎楼を後にする。しかし、台北の夜はまだ終わらない。
夜といえば士林夜市。
一人旅だと士林夜市に行くことはあまりないのだが、初めての人がいれば行かないという選択肢はない。台湾の魅力がギュッと詰まった楽園のような場所。台湾慣れしてきた人たちは、自分好みの夜市を見つけるだが、それでもみんな最初に通過する道が士林夜市。
満腹かどうかは問題ではない。雰囲気だけでも楽しめるのが夜市の魅力。
満腹と言いながらも到着してすぐに、フルーツの盛り合わせを購入。いやデザートだから……。さらに地下の飲食街に入って、蚵仔煎(牡蠣オムレツ)とビールを注文。気になる料理はいくつもあるけど、さすがにこれでフィニッシュ。
滞在日数が短いと、夜市を満喫できないという大きな問題がある。本来は空腹で夜市に行くのがいいのだが、他に食べたい美味しいお店がありすぎて、それはそれでももったいない気がする。
最初のお店で腹8分目を心がければいいのだが、もちろんそんな大人の対応はできやしない。
器用な大人になれないから、わたしたちは旅に出る。不器用だからこそ、自分自身で知らない場所、知らない国に行って、自分の目で確かめたくなる。知識が欲しいだけなら有名人の旅行記でも読んでいればいい。
そう思うと、不器用な自分も好きになれる。そう思わなくても自分のことが大好きなのだが。
終電2本前、時間はすでに24時をまわったところでホテルに戻り、台湾最後の夜が終わりを告げた。最終日のリミットはランチまで。最後まで台湾を遊び尽くすために、わたしたちは深い眠りに落ちていった。
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