名水というのは面白いもので、行こうと思っていてもなかなか行くことができず、行くつもりがなくても急に目の前に現れることもあります。
今回ご紹介する龍ヶ窪の水は、ラン仲間であるクレイジーランナー・三州ツバ吉さんの川の道フットレースのサポート中にぽっかり空いた時間を使って行ってきました。
三州さんが仮眠をとる間、少し長い時間があり、食事を済ませてまだ時間があるということで、周辺を検索したら龍ヶ窪の水という場所があるとのこと。よくよく調べてみたら名水百選だったわけです。
龍ヶ窪の水の伝説を少し語っておきましょう。
干ばつで食べるものがまったくなくなった村人が、たまたま昼寝をしている龍と龍の卵を見つけたそうです。子どもと老人だけでも飢えをしのいでもらおうということで、龍の卵を盗んでいきました。
その卵を割ろうとしたところ、卵の中にいた龍の子どもが親の龍を呼びました。怒り狂った龍は村人を食い殺そうとしましたが「子供だけは助けてほしい」と懇願され、その気持ちに心を打たれた龍は、食い殺すのをやめて村に三日三晩雨を降らせました。
それにより干ばつは解消され、さらには池まで作り、将来に渡って水不足で困らないようにしてくれました。そのときにできたのが龍ヶ窪の水というわけです。
この池は村人の心が曇らない限り涸れることはないと龍は言い残したそうです。
というわけで龍ヶ窪の水です。国道117号線から少し奥まった場所にあり、訪れるには車が必要です。ただし、有料駐車場も完備されており、すぐ手前に温泉施設もあります。
訪れたのは5月ですが、龍ヶ窪の水のある魚沼ではまだ部分的に雪が残っています。
龍ヶ窪の水はとても静かな場所にあります。途中に村もありますが、北海道を思わすような広大な土地。きっとこんなところで採れたお米や野菜は美味しいに違いありません。
駐車場から少し歩いたところにある龍ヶ窪の水。風もなく水面が穏やかで、まるで鏡のように鮮やかな新緑が映り込んでいました。伝説を知らなければ、龍が住んでいると言われても信じてしまうほどの透明感。
池の周りはきれいに整備されていますが、看板などがないため、入り口で返ってしまう人もいるようですが、龍ヶ窪の水は反時計回りに半周ほど歩いて周ることができます。
入口側から見える景色と奥側から見える景色。同じ場所だと分かっていても、その表情の違いに少し戸惑います。
奥にある祠の裏からは水が湧き出していますが、山から湧いてきたものなのかどうかまでは分かりません。ただ、手にすくって飲んだときの甘さと柔らかさはまさに名水。
これをするから、ピロリ菌が繁殖されてしまうのでしょうが、名水に行って水を飲まずにはいられません。
春に訪れたので新緑が美しかったのですが、夏の濃い緑も、秋の紅葉もきっと違った風景を見せてくれるのでしょう。冬の雪景色も見たいところですが、いかんせん豪雪地帯。
こういう場所を心地よいと思えるかどうかは人それぞれ。
わたしはやはり水が好きなんだなと再確認しました。サポートの時間がなければ何時間でも滞在したいほど穏やかな気持ちでいられます。きっと村人たちの心が、わたしの濁った心を浄化してくれるのでしょう。
この池の水を涸らさないためにも、心を曇らせない自分でありたい。村人でもないわたしでもそう思えてしまいます。
こういう出会いがあるから名水巡りはやめられません。ただ美味しいだけ、ただ美しいだけでなく心を動かす何かがあるのが名水百選の魅力です(そうでないものもありますが)。
さて、次はどの名水百選を訪れるとしましょう。
いや、きっと訪れようとしなくても呼ばれるはずです。しっかりとアンテナをはっておき、呼ばれているときに気づかないなんてことのないようにしたいところです。
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