UberEatsの配達報酬が1回300円ではいけない理由【スリコの本質】

UberEatsの配達報酬が1回で300円(通称スリコ)にしかならないという話が、ネットニュースに上がっていました。それに対するコメントが「嫌なら辞めればいい」「他の仕事に就けばいい」「配達なんて300円の価値もない」みたいに辛辣なものが多かったのですが、まぁよくもここまでUberEatsも嫌われ者になったものです。

叩きやすいのでコメント欄がストレス発散の場になっているだけのような気がしますが、そもそもこの記事もどこまでが真実かわからないものですので、実際に配達員としてスリコの本質的な問題について話をしておこうかなと。結論から言えば私も「嫌なら辞めればいい」ですけどね。

目次

1回の配達が300円で最低賃金以下の報酬になる可能性

1回の配達が300円でも1時間に10回配達できれば時給換算で3,000円です。もちろん10回もできません。時間帯にもよりますが、ピークタイムで3〜5回なので900〜1,200円ということになります。ただ、最近配達していないのでなんとも言えませんが、ピークタイムに1時間300円なんてことはありません。

それはともかく、仮に1時間に4回配達したとしましょう。この場合は1回が300円なら時給換算で1,200円です。東京の最低賃金が1,041円だから最低賃金よりもかなり高いと思うかもしれませんが、1回300円というのは税込の価格です。ということは税抜で273円ということになります。これが4回なら1,092円になります。

ところが3回しか運べないと819円にしかなりません。ここに大きな問題があります。UberEatsの配達で1時間に4回配達できる保証はどこにもありません。4回配達できるということは、15分に1配達という計算になります。15分は自転車で3kmくらいまでしか進めません。ピックアップの時間を入れれば2.5kmがいいところ。

ということは1回15分を超える配達が300円だと、最低賃金を下回る計算になります。さすがにこれはUberEatsの運営も分かっていると思いますので、シンプルに考えて1回の配達が300円というのは、拘束時間だけを考えれば最低賃金になると考えて差し支えないでしょう。

実際には配達指定な時間もあるので、実質的に最低賃金以下になるのですが。ただ、先程もお伝えしましたように、ピークタイムは300円で配達なんてことはないので、トータルでみて私の場合は時給1,500円程度。インセンティブを入れればもう少しありますが、インセンティブはボーナスと同じですので最低賃金に含められません。

1回の配達を300円で請けるというのは、シンプルに最低賃金以下で働いている状態だと考えてください。「配達なんて300円の価値もない」という人もいますが、価値があろうとなかろうと最低賃金の考え方からすれば、労働に対して最低限払わなくてはいけない金額なのです。

デリバリーの料金が高いと感じるのは自分の価値が低いから

「配達なんて300円の価値もない」と合わせて「デリバリーは高すぎる」ということを言う人もいるのですが、これはあまり口にしないほうがいいです。デリバリーを批判しているようで、実は自分が無能であるとアピールしているだけですから。デリバリーはサービスを買っているというよりも、時間を買っています。

例えば自分で食事に出かけて、往復や待ち時間に30分使ったとしましょう。この30分に対して追加のお金を払うのがデリバリーです。もし自分の価値が1時間に5,000円あるなら30分には2,500円の価値があります。デリバリーで頼んだ料理の定価が1,000円だったとして、デリバリー料金を合わせて1,500円になったとしましょう。

500円で2,500円の時間を買ったわけですから、まったく高くありません。この500円を高いと感じるのは、その人の30分の価値が500円もないことを意味します。この考え方は正社員をしている人には分かりづらいかもしれませんが、自分の時間の価値を常日頃から考えている人にしてみれば、デリバリーはお得なわけです。

スリコの話からは少し脱線しましたが、匿名のコメントであっても「デリバリーが高い」というのは自分の価値を下げるだけなので、あまり口にしないほうがいいかと思います。

UberEatsの配達は誰にでもできるわけじゃない

今回のネット記事によって1番損失が出るのがUberEatsでしょう。1回の配達が300円にしかならないとなると、新規の配達員が集まらなくなります。UberEatsの配達はみんなが思っている以上に過酷で、ほとんどの人が3ヶ月も続かずに辞めていきます。なぜなら1日60km以上も自転車を漕ぐことになるから。

仮に1回の配達が300円で、配達の平均距離が2.5kmだったとしましょう。報酬は消費税を抜くと273円ですので、1日1万円稼ぐには37配達しなくては行けない計算になります。37配達✕2.5kmで移動距離は92.5kmです。実際には配達先ですぐに次の配達が見つかるわけではないので、1日に100km以上自転車を漕ぐことになります。

これが楽な仕事に思えますか?「誰にでもできる仕事」と揶揄されることがありますが、たしかに1回なら誰でもできます。1日ならなんとかなるでしょう。でも週5回も自転車を100kmも漕げますか?私は70km以上漕ぐと翌日以降に疲労が残る感覚があります。同年代の中ではそこそこ体力がある方なのにです。

こんな仕事を続けられるわけがありません(バイクにすれば別ですが)。そうならないためにインセンティブがありますが、インセンティブは自分が設定した回数に1回でも届かないともらえません。雨が降って配達が止まったらお終い。モチベーションが下がって「もういいや」となるのは容易に想像がつきます。

デリバリーの仕事への依存度は下げるべき

ここまでの説明で1回の配達が300円というのがどういうことなのか、具体的にイメージしてもらえたかと思いますが、別に配達員としてUberEatsを批判するつもりはありません。1回300円という報酬に関してはきちんと法的な裏付けもあるのでしょう。しかも、私は1回300円しかないという日を経験したこともありません。

1回の配達が15分以上かかるなら300円では請けないようにもしています。ただ、本当に300円しかない状態になるとしたら、もちろん撤退します。最低賃金は労働を指せる側が守る指標であり、自分が働くときの指標のひとつ。1時間働いて1,000円にならないなら、そんな仕事を請け続けると生活が成立しなくなることを意味します。

私はメインがライターなので、その仕事がないときの穴埋めとしてUberEatsの配達をしていますが、正直あと1〜2年で引き際だと考えています。コロナ禍はデリバリーの黎明期でしたので混沌としていましたが、ここからは生き残り合戦が始まります。そのときにUberEatsがスリコを続ければ配達員が不足して、事業が成り立たなくなります。

いま1番の勢力はUberEatsですが、1番撤退するリスクが高いのもUberEatsです。そこに依存するというのは、沈没する船に体をロープで括り付けるようなもの。もちろん他のデリバリーも大同小異です。これは依存していい仕事ではありません。そういう意味で「嫌なら辞めればいい」は正論です。

ただ、1回の配達が300円というものが労働負荷に見合っていないというのは別問題で、なおかつ誰もが思っているほど誰にでもできる仕事ではないということを知っておいてもらえればと。その上で「いつでも逃げれる準備を」というのが私の提言です。300円で配達し続ける人には、きっとその声は届かないのでしょうが。

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