絡繰:深掘して自分の言葉で伝える

とあるYouTuberさんが、新しいランニングウォッチのレビュー動画を上げていました。その中で画面の明るさについて「3000nitもあってとても明るい」みたいなニュアンスの説明をしていました。その後に「ニトって何?」みたいなひと言が。

確かに普通の人は使わない単位なのですが、製品を紹介している立場としては好ましくない発言に感じました。そういうところで親しみやすさを演出しているのかもしれませんが、説明する以上はわからないはきちんと調べて発信するのがメディアの役割。

メディアとYouTuberはノットイコールなのかもしれませんが、情報発信のあり方としては共通するところがいくつもあります。そして、何度もお伝えしてあることですが、調べて自分の言葉で語るというのが、メディアの本質。


プレスリリースをそのまま朗読したところで、受け手には何も響きません。もっとも、ファンが何万人もいれば、それだけでモノが売れてしまうのですが。ただ、そういうものは長く続かないのが世の常。結局のところ誠実さこそが安定性の鍵となります。

同じランニングウォッチの紹介の定型として「世界的なランナーであるキプチョゲ選手と共同開発」というものがあります。これをそのまま伝えている。そらも、とてもすごいことのように伝えているYouTuberやメディアがいくつもあります。確かに一見するとすごいことのように感じます。

でも、発信者がすべきことは、「本当にすごいことなのか」と疑問を持つこと。まずキプチョゲ選手が共同開発しているのは、スポンサーになってくれるからです。多額のお金が動くから彼は企業と提携しています。それはランニングの世界ではよくあることです。

提携するときに、名前を出すだけでなく「アドバイスした」という実績が強みになるので、契約条件に入れるわけです。そして何らかのアドバイスや、トレーニングの考え方などを話したりして、それを機能に織り込む。それだけのこと。

実際にはもっと深いところまで入り込んでいる可能性はありますが、メーカーの発表からはそこまでは読み取れません。からくりとしては「キプチョゲ選手のネームバリューに投資した」だけのこと。それはビジネスに携わっている人なら誰でもわかることです。

それなのに「なんとキプチョゲ選手が……」と発信するのは視聴者や読者に対して不誠実ではないかと感じるわけです。仮にキプチョゲ選手がそのアイテムに惚れ込んで使っていて、それにより提携が始まったなら語るべきことですが、ただのスポンサーになったというだけのことでしかありません。


そもそもキプチョゲ選手クラスになるとGPSの精度なんてなんの意味もありません。彼らは1%の測定誤差を許容するような世界で走っているわけではありません(ジョグは別として)。1km走って10mズレたら、それは彼らにとって大問題です。

だから、トップアスリートはただのストップウォッチでいいわけです。それは「なんだっていい」ということでもあります。だから、より高いスポンサー料を払ってくれるメーカーと提携するだけ。実際に彼は少し前まで別のメーカーを使用し、そのメーカーの知名度アップ、売り上げアップに貢献していました。

間違えないではしいのですが、そのからくりを否定したいわけでありません。それがランニング業界の活性化につながるなら素晴らしいことです。私が伝えたいのは発信者のスタンスの話。少なくとも自分が発信するものに対しては、自分できちんと説明できるようにしてもらいたいなと。

著:小池陽慈
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