松本マラソン:不幸になる人を出さないために開催をやめる勇気も必要

松本マラソンが不正会計により、2025年大会を中止すると発表がありました。赤字を隠す不正な処理を行なったことが原因とのこと。マラソン大会を開催した裏で、関係者が苦しい思いをしていたわけです。こんな悲しいことはありません。

マラソン大会は地元の人たちの協力があって成立します。走らない人にしてみれば、道路を封鎖され、不便な思いをするけど「マラソン大会のためなら」と協力してくれています。だからこそ、ランナーも主催者もボランティアスタッフも誰ひとりとして不幸になってはいけません。

誰かが苦しんだり、悲しんだりしなくてはいけないくらいなら、マラソン大会なんて開催すべきではありません。みんなが楽しめることが、マラソン大会が存在する大前提であるべき。ましてや赤字を出してまで開催すべきことではありません。


とはいえ、そもそもマラソン大会というのは本質的には赤字になります。税金やスポンサー料で収支をプラスマイナスゼロにしているだけで、マラソン大会で主催者が儲けている大会なんてごくわずかしかありません。少なくとも自治体が主催している大会は税金で補います。

それは「市民の健康促進」や「地域の活性化」という名目により予算化されていて、少なくとも建前としては必要な出費ということになります。おそらく松本マラソンも税金を使って開催していたはずです。ではなぜ赤字になったのか。

最大の理由が、参加者が予定よりも足りていなかったことが挙げられます。2023年は1万人の募集に対して5,500人のエントリーになりました。コロナ禍明けとはいえ、かなり厳しい結果です。参加費は1.2万円ですので、予定よりも収入が5,400万円不足します。

もちろん定員が埋まらないことも考えているので、90%埋まる見込みだった場合には、4,860万円のマイナスです。そこから、さまざまな手配を減らすなどして、3,915万円の赤字。そもそもの読みが甘かったとも考えられますが、それは後出しジャンケンです。

問題の本質は2つあります。ひとつは松本マラソンの人気がないということ。走ったことがないのでなんとも言えませんが、そんなに悪い大会ではなく、むしろイメージとしてはよくできた魅力的な大会です。でも、実際はランナーから敬遠されがちです。

最大の理由はタイムを狙いにくいコースにあります。ランニングシューズの厚底化に伴い、コロナ禍前よりもランナーは「タイム重視」になっています。どれだけ高性能なシューズを履いても松本マラソンではタイムを出さない。他にタイムを狙える大会があるから、そちらに流れるわけです。


もっとも、タイムを狙いにくい大会でも高い評価をされている大会はいくらでもあります。それこそ長野県は、マラソン100撰に選ばれている大会の数が全国1位で、「長野県だから」は通じません。ただ、それよりも本質的な問題なのは、赤字でも続けなくてはいけないことにあります。

そもそもマラソン大会は、黒字にするのが難しいイベントです。定員が埋まって初めてプラスマイナスゼロになります。まずその仕組みを変えなくてはいけないのですが、参加費を上げるとエントリーが減ります。だからギリギリを狙うわけですが、そうすると定員割れで赤字になる。

公表できないほどの赤字になるなら、そこは開催をやめる勇気も必要なのではないかと思います。少なくとも今はマラソン大会が飽和状態で、需要と供給のバランスが崩れています。マラソン大会は誰かを不幸にしてまで開催することではありません。もちろんそれは松本マラソンに限った話ではありませんが。

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