ゾーン:孤独と万能感を楽しむ

映画「片思い世界」を北京からのフライトで観てから、自分を別レイヤーに置くイメージをしています。少し前のブログでも書きましたが、そのときは自分のことを孤立を望む寂しい人間だなと感じ、そのことを書くべきかどうか少しだけ迷いました。

実際に別レイヤーにいるようにしているときは、周りにいる人たちとの関わりがゼロになるため、ある意味ではとても寂しい人間であり、それを好んでやっているということを伝えることで、怖さのようなものを与えてしまうのではないかと危惧したわけです。

周りからどう思われようとそれほど気にはしませんが、実際に別レイヤーに自分を置くことで得られる心地よさについては、うまく伝えられていないところもあって、もう少しだけ深掘りした内容を書いておきます。自分の中できたんと整理するためにも。


確かに自分を別レイヤーに置くと孤立した状態になります。自分から周りにいる人たちに関与することもなく、周りが私に関与することもない。でも、私がその状態を好ましいと感じている最大の理由は、いわゆるゾーンに入った状態に近づけるからです。

私もそれなりにランニングと向き合ってきたので、ゾーンに入る経験を何度かしたことがあります。無敵感や万能感があり、今なら最高の結果を出せると感じられる瞬間。10年くらい前には、その状態に意図的に持っていけたときもあります。

ゾーンに入るにはとにかく集中力を高める必要があり、意識を自分の内側に向かって強い矢印を向けます。そうすることと、自分と自分以外の世界を切り離すことができ、自分の走りを引き出します。ただ集中力なので、使える時間が限られます。

別レイヤーに自分を置く練習を何度かしていると、そのときの感覚がゾーンに入っているときに似ていることに気づきました。ただ、集中力を高めているときとは違い、周りの風景はしっかり見えています。むしろ、意識の矢印が外側を向いており、普段よりも俯瞰して周りが見えているかもしれません。

矢印も自分の内側には向いておらず、自然体でそこに存在できている感覚があります。万能感はあるのに周りが見えているから、自分以外の人たちのことを観察する余裕もあります。それこそ、映画のワンシーンのようで、美しさすら感じます。

面白いもので周りが見えてくると、苦手だったこともできるようになります。私は誰かに指示して動いてもらうという働き方を苦手としていますが、自分が別レイヤーにいると考えるようになってから、苦手意識が薄れて、それなりに的確に指示を出せるようになりました。


別レイヤーにいるのに指示を出すというのは奇妙に感じるかもしれませんが、実際に別レイヤーにいるわけではなく、現実世界に身を置いているわけで、そのあたりはフレキシブルに対応できています。だから、周りに話しかけられて驚くようなこともありません。

ランニングにおけるゾーンは完全に周りと遮断されているので、話しかけられても気づかないことがほとんどですが、別レイヤーにいるときは、周りがよく見えています。それでいて万能感が高い。孤立しているけど孤立していない。不思議な感覚。

この感覚を少しでも長く維持するか、できることなら四六時中その感覚でいたいところですが、それができるかどうかはまだわかりません。ただ、いつか別レイヤーでフルマラソンを走ってみたいなとは思っています。きっとこれまでと違う景色を楽しめそうなので。

著:ダニエル・ゴールマン, 著:ケアリー・チャーニス, 翻訳:櫻井祐子
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