
北京では撮影だけでなく、さまざまなテストをしています。たとえば、自力で万里の長城マラソンの会場に行く方法や、会場周辺のおすすめホテル探しなど。おかげでこれまで何となくで把握していた会場周辺の地理に、だいぶ詳しくなりました。
エリアとしては八達嶺になり、もちろん八達嶺長城があり、そのほかにもいくつもの長城が集まっているエリアになります。これまでは北京と万里の長城は完全に区別していて、北京という大きな街があって、その郊外に万里の長城があるという印象でした。
ただ、八達嶺エリアに滞在したことで、北京という枠が自分の中で広がり、その枠の中に万里の長城がおさまった感じがあります。これまで万里の長城は遠いところにあるからなかなか行けないと思っていましたが、北京でよく見かける番号のバスも走っていて、これからは気軽に来れそうです。
ちなみに八達嶺長城は久しく行っていません。前に行ったのはもう20年以上前です。とてつもなく混んでいるらしく、今回拠点にしている宿の近くにとてつもなく広い道があるのですが、それは八達嶺に行くツアーバスが待機するためで、バスが溢れるくらい人がやってくるわけです。
ところが、すぐ隣の八達嶺古長城は観光客がほとんどありおらず、同じ万里の長城とは思えません。もちろんアクセスのしやすさに差がありますが、八達嶺というブランド力がかなり影響しています。もっとも八達嶺もどんな姿だったのか、もう覚えてもいませんが。
当時からすると、中後家は本当に変わりました。衛生管理もしっかりしていますし、治安面でも何も心配いりません。面白みは減りましたが、何でも揃って居心地もよく、好きな街であることには変わりありません。ところが八達嶺エリアに来ると時代が一気に遡ります。

今回泊まった宿は民宿なのですが、かなり綺麗なだけでなく、昔懐かしい中国人らしい親切さがありました。そして、飲食店に行くと、お店の子どもが当たり前のように働いています。日本ではもう見なくなった光景ですが、北京も郊外に行くとまだ昭和の香りがします。
夕飯で入った大きなレストランでは、現地の人たちがタバコを吸いながら食事をしていました。もう北京の市街地でも見なくなった光景ですが、やはり北京が特別なだけで、好きだった中国が完全に消えてしまったわけではないことを確認してひと安心しました。
そんなエリアでも、スマホ決済が当たり前のようになっていて、老若男女誰もがスマホで支払いを行います。スマホ決済は圏外だと決済できないという問題がありますが、圏外だった場合は後払いに応じてくれるケースなどもあり、中国人にもおおらかな一面があることを知りました。
数え切れないくらい北京に来ていますが、知っているようで、まだまだ未知のことがあるのだと気付かされる毎日ですが、私自身も以前に比べて「まあいいか」と思える範囲が広がっているように感じます。だから北京の街も郊外の街も楽しめています。
そして、まだ知らないことがたくさんあることにワクワクもしています。日本にはない文化がすぐそこにあって、少なくとも私はその文化が好き。こんな幸運なことはありません。もし私がブラジルの文化にハマっていたら、なかなか通えなくてストレスになっていたかもしれません。
北京をもっと知ること。中国をもっと知ること。そしていつか万里の長城をテーマにした小説を書く。これが私の小さな目標です。北京そのものに少しだけ天井が見えていたような気になっていましたが、まだまだ天井は高く、奥行きも深い。これはいい収穫になりました。
