荷物の重さは業の重さ【SNSがプラットフォームではなく趣味の世界になる時代】

四国で歩き遍路をしていたとき(もう10年以上前?)、ベテランのお遍路さんが私の荷物を見て「荷物の重さは業の重さだ」と教えてくれました。いま、自分の旅史上、最も重たい荷物を抱えて空港に向かっています。小さな鞄ひとつで台湾に行く私ですが、流石に仕事となるとそうもいかず。

カメラや三脚、充電器などの撮影機材に、今回は途中まで洗濯もできないので3日分の着替えとランニング道具。多分、私の日常生活で必要なものをほぼ全て持ってきました。こういうとき、MacBookではなくiPadで仕事ができたらどんなに楽だろうなんて思ったりするのですが、それはまぁ無い物ねだりであり、物を増やして解決するのはきっと愚策。

本当はやるべきことを減らすべき。例えば岡山で走らないとか。もしくは走れる格好で過ごすとか。良いように見られようとするから服が増えるわけです。だからよく見られたいという欲を手放せば、もっと荷物を減らせます。今回は仕事なので、良く見られるというのはとても大切なことですが、だいたい他人はそれほど自分のことなんて見てないわけです。

基本的に私はやりたいことが多すぎるタイプ。毎日夜になってもやっておきたいことが沢山あるから「ちょっとだけ」で数時間作業して睡眠時間を削る。欲や業が少なければ、十分な睡眠時間を確保でき、穏やかに過ごすことができます。もっとも今の私は穏やかさを望んでいるわけではないので、これでいいのですが(もう少しだけ寝るべきではある)。

私たちに与えられた時間は無限ではなく、物理的にできることとできないことがあります。困ったことに向上心の高い人ほど、時間がなくてできなかったことを自分の実力不足と考えたり、できなかったことに対して「あれができてないから他が上手くいかない」なんて考えたりします。人によってはさらにストイックに追い込もうとしたり。そして業が増えていき、自分の荷物に押しつぶされる。

とても簡単なことなんですが、自分が持てるだけの荷物以上を持とうとしないことです。そのためには過信しないこと。自分の容量をきちんと把握することです。もちろん、すべての人がそうしたほうが良いわけではありません。ビジネスの場で成功したいなら、自分の容量をゆっくりと増やしていく必要があり、時には無理をすることも求められます。私が伝えたい対象は、穏やかに過ごしたい人であって、そういう向上心の高い人たちではありません。

向上心を持つことは素晴らしいこと。社会に出たら自分磨きをして成長すること。それが暗黙の了解みたいになってますが、別に向上心も成長する必要もありません。自分のやりたいことを積み重ねていけば、結果的に成長していることもありますが、その成長は結果であり目的地ではありません。これを逆に考えている人がとにかく多い。社員教育をしっかりしている会社に入ったり、意識の高い人に囲まれてると、そうなる傾向にあります。

仕事なんて人並みにできていればよく、そんなものはまじめに仕事してれば誰だって到達できます。それ以上を望むから、それ以上に応えようとするから苦しくなる。いや、望んだっていいんですよ。自分の意思でそれを選ぶなら。でも大抵は自分の意思ではなく、自分の意思で選んでいるようで、社会の常識とか組織の思惑とかで動かされているだけ。みんながみんな頑張らなくていい。

努力しない、成長しないと決めて、自分の手の届く範囲で丁寧に暮らす。そういう生き方もあっていいと思います。みんながそうすると、ちょっと困るかもしれませんが、意識ばかり高くなって、他人にどんどん厳しくなっていく社会よりはマシかなとは思います。今はちょっとのことで簡単に炎上する時代。足元をすくってやろうと、多くの人が待ち構えている時代。

でもそんな時代が長く続くわけがありません。数年もすれはみんな疲弊して、降りていきます。そしてSNSなんて趣味のひとつになるはずです。多くの人が自分が持てる以上の荷物を持つことに疑問を感じ始め、誰もがインターネットで繋がる時代はゆっくりと終焉を迎えています。SNSを手放せば楽になることに気づき始めたわけです。clubhouseというSNSが流行りかけましたが、あっという間に話題にならなかったのは、もうみんな繋がることに飽きたから。

もっとも、多くの人は刺激が欲しくて次の流行の波が来たら乗ってしまうんでしょうね。何も起きない穏やかな日々というのは、それはそれで退屈なものです。そこで新しいものに飛び付かず、自分の好きなことを程よい距離感で楽しんでいればいいのですが、みんながやってる時になるのが、私たち人間に与えられた業のひとつ。そして、それが私たちをまた苦しめることになる。

私を含め、そろそろ荷物を下ろすときです。両手いっぱいの荷物だと、困っている人を助けることもできません。何だったら手ぶらでもいいくらいです。荷物がひとつもなければ、逃げ出すことも飛び出すことも自由自在ですから。価値観を変える必要があるので簡単なことではありませんが、まずは丁寧に暮らすことから。少なくとも私がいま目指すところはそこ。重たい荷物を背負いながらだと、説得力がまったくありませんが。

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