急に続編の小説を紹介されても困ると思うのですが、やっぱりいい小説だったので紹介します。
「チームII」
堂場瞬一さんが描くマラソン小説です。
マラソン小説なのになぜ「チームII」なのかというと、この前編となった「チーム」が箱根駅伝を舞台にした小説だったから。そして、マラソンだけれどもやっぱり「チーム」がテーマの小説になっています。
できるだけネタバレしないように「チームII」の素晴らしさを伝えてみます。
背景にあるのは「チーム」で箱根駅伝の学連選抜を走った選手たちの姿があります。そのメンバーが再び集うことになるのが「チームII」になります。
実は「チーム」と「チームII」のあいだには「ヒート」という小説もあり、いまのところ三部作となっているのですが、実はわたしは「ヒート」をまだ読んでいません。
「ヒート」もいい小説だろうなとは思うのですが、やっぱり「チーム」シリーズのサイドストーリー的な要素が強いため、あえて「ヒート」を手にせずに「チームII」のページをめくり始めました。
高校時代から圧倒的な走力で孤高の存在だった山城悟は、自分は特別な存在なのだから周りが自分のために動くのは当然だという典型的なワンマンなランナーです。
ただわがままなわけではなく、とにかく走ることへの欲望の強さだけで生きているような男。人生の全ては走るためだけにあるという山城が、ケガをしたことでリハビリを開始するところからストーリーは始まります。
わたしはこの、往年の中田英寿を彷彿させる山城という男が大好きで、口から出る言葉はすべて正論。そしてあらゆる無駄を嫌う心のあり方にわたしは魅せられています。
そんな傲慢な山城がかつてない挫折を味わい、そこからの再起をかけて始動するわけですが、何もかもがうまくいかない。そんなときに学連選抜をともに走った仲間がサポートを申し出るというのがストーリーの流れです。
ここに出てくる男たちがみんな本当に熱いんです。
熱い男大好きです。
山城という男のランニング哲学は「周りのペースは関係なく1kmを3分で機械のように走りきればフルマラソンは2時間6分で走りきれる」「マラソンに感情や駆け引き、沿道の声援は無駄」「個の力が全て」という徹底ぶりなのです。
そんな山城の心の揺れ動きや、それをサポートする仲間たち。サポートせずに入られない仲間たち。
マラソンは自分のために走るもの、でも誰かのために走ってもいいもの。
誰かのためだから走りたくなるもの。
実際には何の力にもならないのかもしれませんが、仲間がいることで頑張ることが出来る。そう信じる力こそがチームなんだろうなというのがわたしの答えです。
わたしはマラソンを始めてから、ずっと1人で走り続けてきました。
そこからラン仲間ができ、そして裸足の仲間が増え、いつしかわたしは1人ではなくなっていました。
孤独に自分とだけ向き合うマラソンも嫌いじゃないですが、そこは孤独で冷たい世界。
わたしはもうそこに戻ることはないでしょう。
誰かと一緒にゴールを目指す。いやスタートラインに並んだすべての人とともにゴールを目指して走る。そして大切な人のことを思い走る。
あの人が笑顔になればいいなと思って一歩を踏み出す。
そういうマラソンの形があってもいい。そんなことを思いながら「チームII」の最後のページを閉じました。
「チーム」「チームII」どちらも素晴らしい小説。梅雨で走れない休日のお供にオススメです。
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