世界陸上のマラソンで感じた日本マラソン界の根本的な問題

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世界陸上の男子マラソンは最後の2㎞だけ観ました。本当は全部観たかったのですが、買い物やらして家に戻ったらもうそんな時間。女子はお風呂に入っていたので、スタートを観ていませんが、途中からゴールまで観れました。

そこに映っていたのは、もう何年も前からの変わらない光景。

トップ集団についていけない日本人ランナー。粘って後半から追い上げる川内選手。これが今の日本の現実で、おそらく東京オリンピックでも見ることになる光景。

そう思うとさすがに寂しさを感じます。

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日本人が弱くなったのか、それともアフリカ勢が強くなったのか。きっと両方なのでしょう。川内選手の前にアフリカ勢以外のランナーは2人います。イギリスの選手とイタリアの選手で2人ともPB更新です。

女子もバーレーンの選手はともかく、アメリカの2選手、オーストラリア、イギリス、チェコ、北朝鮮のランナーがアフリカ勢以外として前にいます。

では日本が今後浮上してくることがないかというと、そういうわけでもありません。マラソンなんて結局1人の天才が現れれば、あっという間に世界一の座を奪うことができます。

日本のマラソン界がどうのこうのという話ではありません。ただ、陸上人口が増えてくれないことには、その天才が現れる確率が下がります。

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ものすごくマラソンに向いているのに、サッカーや野球を選ぶ。そこで芽が出ずに普通の才能が埋もれていく。

これはマラソンに限ったことではありません。どんなスポーツも子どもたちに選んでもらわなければ、その競技に天才が現れる可能性が下がります。これはただの確率論のお話です。

それでは子供たちが選びたくなるほど、マラソンランナーというのは魅力がある職業なのでしょうか。この国には実業団という仕組みがあり、サラリーマンとして陸上を続けていくしかありません。

プロになるという道もありますが、それをサポートしてくれる人もいませんし、そのような環境もありません。有名になってから独立しても、そのときには選手としてのピークが過ぎているのが実情です。

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わたしは別に実業団という仕組みが悪いとは思いません。よくできたシステムだと感心しています。ただ、そこに夢はないかなとは思います。人がパンだけで生きているなら実業団というシステムは最良ですが、人は夢を見て生きています。

日本陸連もなんとかして東京オリンピックで結果を出そうと、ようやく重い腰を上げたようですが、正直なところときすでに遅しです。今から頑張っても目が出るのはきっと15年後くらいです。

結果を出すには、今いる選手の実力を伸ばすのではなく、たった1人の天才を見つけ出さなくてはいけません。

そうやって成果を上げているのが卓球です。輝く才能を見つけて徹底的にそれを磨き続ける。才能がないとされた人には理不尽な世界ですが、本当に勝てるようになるために重要なのは底上げではなく1本釣りです。

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もっとも、東京オリンピックで日本人ランナーがどのような結果を出すかよりも、猫ひろしさんがまたカンボジア代表として出場できるのかということのほうが興味があります。

応援したくなるような魅力的な人が出てくれば応援しますが、ただ日の丸を背負っているという理由だけで応援するかというと、きっとそうはならないと思います。

わたしは「頑張れニッポン!」という言葉の意味が分かりません。

いつだって頑張るのは個人だと思うのですが、日本が頑張るというのはどういう意味があるのでしょう。どうすれば日本が頑張ったことになるのでしょう。やはり頑張るのは個人です。それはチーム競技でも変わりません。

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チームや組織ではチームプレーというものを大切にします。でもそのチームプレーの意識に引っ張られて、個人がその能力を発揮できないという状況があまり好きではありません。

それよりも個人がそれぞれにできる最高の仕事をして、その総和としての最高の結果を残した方がいい。これはわたしがずっと貫いている考え方です。サッカーをやっているときからこの考え方は変わりません。

これはどちらが正しいかという問題ではなく、上を目指すときの方向性の違いでしかありません。

日本人は自分を犠牲にしてチームを勝たせる。そういう美学を持っています。それはとても美しいことですが、美しいといえるのは結果を出してからです。勝ち負けはともかく魅力的なチームになれるかどうか。

これを言うと個人主義みたいに思われるかもしれませんが、本物のプロフェッショナルが集まれば、個人主義の中でも、全員をまとめる人がでてきますし、影で支える存在も出てきます。それがプロフェッショナルであって、才能の寄せ集めは烏合の衆と言います。

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マラソン業界ももっとプロフェッショナルな集団にならないと、きっとこれから何十年も天才待ちに入ってしまいます。運良く天才が現れたときに「自分たちの手柄」みたいに言って、次の天才を探そうとせずまた沈んでいく未来しか見えません。

もし本気で世界のトップを狙うなら、実業団制度を廃止するくらいの大鉈を振るわなければ、すべて絵空事です。日本のマラソンが安定してそこそこの順位がでるのは実業団があるおかげですが、そこから先に行けないのも実業団があるから。

それはもう多くの人が気づいていることです。

でもそれをしないということは、単純に東京オリンピックで結果を出そうなんて本気で思ってないということです。そう言わなくてはいけないから言っているだけ。お偉いさんはいい結果が出ればラッキーで、出なければ選手のせいにしておけば責任を取らなくて済みます。

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もし本気でやるというのであれば、結果が出なかったときに誰がどのような形で責任を取るのかを明確にした上で旗振りをすべきです。

いま、マラソン業界の話をしていますが、別にマラソンに限ったことではなく、会社などでのプロジェクトなどでも同じです。責任を曖昧にしての「全力で頑張ります」は「誰かがなんとかしてくれるといいな」とほぼ同じ意味です。

そういう意味では川内選手は責任の取り方も明確で、今後のマラソン界に本当に必要な人なのですが、さてこれからどう日本のマラソン界に関わっていくのでしょう。個人的にはマラソンを走るだけじゃなく解説の仕事もしてほしいところです。

彼の解説を聞けば、マラソンを10倍楽しむことができます。マラソンを知らない人だって1レース分聞けばマラソン通になれます。それくらい分かりやすい言葉で解説をしてくれます。

さて日本のマラソン界は迷走せずに2020年にたどり着けるのか。そしてそのときわたしはどんなレポートを書けるようになっているのか。個人的にはいろいろ楽しみではあります。


切腹: 日本人の責任の取り方
著者:山本 博文
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