猫ひろしがいかにすごいかを精一杯説明してみよう

猫ひろしがいかにすごいかを精一杯説明してみよう

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インチョンアジア大会のマラソンが行われた。日本人は残念ながら金メダルならずだったが、競技場までもつれ込むレース展開に日本人ランナー2人が絡んでいたのはアジア大会とはいえすばらしい。その陰で、もう1人の元日本人がインチョンを駆け抜けている。カンボジア代表として大会に出場した猫ひろしだ。はっきり言おう、これはまぎれもなく偉業だ。賛否両論あるのはわかっているが、かつて同じレースを走ったランナーの端くれとして、猫ひろしがどれだけすごいのかを説明してみよう。

そもそも猫ひろしは飛び抜けて速いランナーではなかった。少なくとも私は彼と同じレースで負けたことがない。市民ランナーとして、ちょっと速いぐらいのレベル。オールスター感謝祭で4回優勝したとはいえ、彼よりも速く走れていた芸能人はそこそこいただろう。そこから彼は国際レースで一桁の順位を何度も記録する選手に成長している。その過程は生半可な練習ではなかったはずだ。いいコーチが付いたのだろうが、結局は本人の努力がなければ速くはなれない。

もちろん彼が売れない芸人であったことがプラスに働いたことは言うまでもない。彼には実業団選手以上の練習時間があったのだ。ランナーにとって時間があることは重要だ。多くの市民ランナーが日常の仕事を持ちながら練習時間を確保している。いや、思うように練習できている市民ランナーなんてほとんどいないだろう。わたしのように練習時間を作り出すために職場の近くに引っ越すランナーもいるが、それでも練習には限界がある。

彼がすごいのはその環境を見事に活かしきったということだ。彼は余りある時間を「走る」という芸の習得につぎ込んだのだ。誰かを笑わせることができなくても、彼の走りはもはや職人芸だ。人を感動させることもできるし、勇気を与えることもできる。お笑い芸人としては成功しきれなかったが、RUN芸人としては結果を出し続けている。

アジア大会の結果としては完走者中最下位の14位に終わったが、19人中5人が途中棄権している。これは決して悲観するような結果でもなければ非難されるべき結果でもない。少なくともカンボジアには彼より速いランナーは1人しかいないし、その1人は猫ひろしよりも後ろを走り途中棄権した。タイムが平凡?確かにトップランナーのタイムではない。しかし、これがアジアの現実なのだ。彼は不正をしたわけではない。アジアの舞台できちんと戦って代表を手に入れた。

国籍を変えてまでアジア大会やオリンピックに出たいかと問に対しては「そんなもの個人の問題だろ」としかいいようがない。国籍を変えてまで世界の舞台を経験することがその人の人生にとって意味のあることならすればいい。みっともないと言われようが、彼がそれによって得た経験は何ごとにも代えがたいものかもしれない。他人がどうこう言うことのほうがよっぽどみっともない。

彼はアスリートではなく芸人だ。人を笑わすだけが芸ではない。37歳、まだまだ可能性があることを示してくれている。このままさらに芸に磨きをかけて世界を舞台に駆け抜ける姿はわたしを奮い立たせてくれる。

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