元機械設計者が教えるランニングシューズのメカニズム

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レース用のシューズ「adizero Feather RK2」が壊れてしまい、とりあえずどれくらい走れるのか試したらやはり前回と同じく左右バランスが崩れています。

壊れた右側は地面に着地したときに力が分散してしまい、その結果推進力が落ちています。壊れたのはスタビライザ(安定装置)なので、きちんと考えて作られているものなのですね。

ランニングシューズは何のためにあるのか

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推進力が失われたことでふと思ったのはランニングシューズって何のためにあるのだろう?」ということです。

ひどい疑問ですよね。でもほとんどのランナーがランニングをするのに何の疑問もなくランニングシューズを選んでいます。ランニングをするのにランニングシューズを履くのはあたりまえ。

よく「ランニングはスニーカーではいけません」って言われますが、本当にダメ?

ランニングシューズはなんでランニングシューズなのでしょう?何が他のシューズと違うのでしょう?ランニング初心者が疑問に思うようなことをラン歴10年でようやく到達しました。

ランニングシューズは何のためにあるのでしょう?

ランニングシューズは足を守るためにある

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例えば裸足で走ったとします。裸足で走るとガラスや石を踏んだら危ないと思うかもしれませんが、21世紀の日本でガラスの破片が道に落ちていたのを見たことある人はどれぐらいいるのでしょう。

小石を踏んでも足が切れるようなことはありません。少し大きめの石を踏むとやる気を全部持って行かれますが。

でも最近流行りの撥水効果のある荒い路面のアスファルトは裸足だとつらい。山のガレ場もなかなか走る気になれません。シューズならそんなこと考える必要もありませんね。

ランニングシューズは荒れた路面から足を守るためにあります。

だったらスニーカーでもスリッパでもいいんじゃ・・・いやいや、ランニングシューズにはランニングシューズにしかない機能があります。

ランニングシューズは衝撃を吸収する

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ランニングシューズがランニングシューズであるために、他のシューズとは違う機能があります。そのひとつが着地の衝撃を吸収する機能です。

ランニング中は体重の2倍〜3倍もの負荷が着地する足にかかると言われています。これを受け続けると膝や腰を痛めてしまうということで、着地の衝撃を吸収する機能をシューズは持っています。

ただその衝撃を吸収したら、力が地面に伝わらず発散してロスが生まれますよね。これはよくないということでランニングシューズの開発者は、衝撃時に吸収した力を推進力に変えるための様々な工夫をシューズに搭載しています。

ランニングシューズは推進力を作り出す

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そのひとつがスタビライザで、スタビライザはシューズ内に分散した力をもう一度集め直してまっすぐ走る力に変えているのです。

アディダスはさらに推進力を生み出すためにシューズの素材に目をつけました、着地の衝撃を吸収しながらもスタビライザを使わずに反発させる素材。それがBOOSTです。

「BOOSTはズルい」という考えの人もいますが、それを言うならスタビライザのついたシューズもズルいことになります。

いずれにしてもランニングシューズの多くは、着地で吸収した力をいかにして推進力に変えるかをテーマに開発されています。

集めた力を推進力に変えたら負荷は変わらない

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頭の回転が早い人はなんとなく気づいたかもしれませんが、ちょっとおかしなことになっていますよね。

着地の衝撃を和らげるためにクッション性を高め、その力をロスさせないために工夫して推進力を生み出しています。

作用反作用の法則というのを覚えていますか?

力というのは常に均衡が保たれています。逃がした衝撃を吸収して推進力に変えたら、それに拮抗する力はどこにかかるのか。それは足以外にありません。

足への負担を回避するために吸収した力は結局足に戻ってきます。

おそらくシューズメーカーはこの力に対して「上手に負荷を戻している」のでしょうが、ランニングフォームは人それぞれですので、そのシューズにあった走り方をしないと上手に負荷を戻すことはできません。

むしろ本来かけてはいけないところに負荷がかかることもあります。これがランナーがシューズを履いてケガをするメカニズムのひとつです。

裸足で走るとケガをしにくくなるという理屈

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ランニングを始めたばかりの頃はわたしもこのメカニズムで膝を痛めました。もちろん当時はそんなこと知りもしません。ただ走れなくなって困って裸足という活路を見つけました。

シューズを履いて一歩も走れなかったのに裸足だと走れることにわたしは気づいたのですが、理屈はこういうことです。

裸足で着地の衝撃を吸収するためには自分の体を利用するしかありません。踵から着地すると痛いからフォアフットになって足裏のアーチや膝の動きを利用して衝撃を吸収します。

人間本来の動きを利用して着地するので足に変な力がかからずケガをせずに走ることができるのです。

ただここにはランニングシューズのような人工的な推進力はありませんので、どうしてもロスが発生し多くの裸足ランナーはシューズよりも遅くなります。

それでも裸足ランナーの中でも何人か体の使い方によって推進力を生み出している人たちがいて、その人たちはシューズよりも裸足の方が速く走れます。

ランニングシューズと上手く付き合う

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だからランニングシューズ脱いで裸足で走ろう・・・なんてこと言いません。

それよりも「しっかり考えてシューズを選ぶ」ことをオススメします。裸足にだってリスクはあります。そもそも人間本来の動きを現代人がどれだけの人ができるのかも不明です。

いきなり裸足で走り始めて、間違ったフォームを身につけて結局ケガをすることもあります。裸足もシューズも間違った走り方はケガにつながります。裸足の方がケガをしにくいのは「スピードが遅いから」だけかもしれません。

ランニングシューズもシューズに合った走り方さえできれば、力の流れを理解してどこに負荷がかかっているかを考えて走り方を調整すればケガにつながることは激減します。

知っておいて欲しいのは、ランニングシューズは衝撃を吸収して足への負荷を減らしているのではなく、吸収した力をまっすぐに走る推進力に変えているということ。

決して足への負荷が軽くなっているわけではありません。

ケガに繋がる足への負荷が軽くなる走り方をしている人もいれば、変なところに力が入る走り方をしている人もいる。人間は一人ひとり骨格も違えば、ナチュラルな姿勢も違います。筋肉のつき方も違います。

万人にぴったりな魔法のランニングシューズはありませんので、どこかで人間がシューズに合わせなくてはいけなくなります。そのときに衝撃の吸収と推進力のことをイメージしてもらえると、少しだけケガをする人が減るかなと期待しています。

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