高橋尚子が千葉マリンマラソンで見せた機転と美しさ

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本来ならマラソン大会翌日ですので、自分が走ったレポートを書くところですが、わたしの気持ちの昂りはとても自分のレポートを書ける状態にありません。

わたしが目にした光景を文章にしないと、眠りにつくことすらできそうにありません。

事の発端は、わたしが千葉マリンマラソンのゴール風景の写真を撮り終えて、別の取材のために都内に向かおうと陸橋を上がっていたときでした。

ゴール前で最終ランナーを見送ったつもりだったのに、まだ選手が続々と歩道を走ってくるのが見えます。そういえば道路封鎖時間を過ぎたら、歩道を走ることになるということを思い出しました。

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ところが、歩道を走っていたランナーの前には、走り終えたランナーたちが、ドリンクや参加賞をもらっているエリアがあります。

わたしは一瞬「あぁリタイアなのね」と思ったのですが、どうも様子がおかしいように感じます。ランナーたちは、向かいからやってくるゴールしたランナーをかき分けて、ゴールエリアを目指します。

ただし、歩道を走ってきたランナーをゴールに誘導する人は1人もいません。歩道を走らせておいて、歩道からのゴールまでのコース取りがされていませんでした。

実際には想定していたのだと思います。ただ千葉マリンマラソンは今年だけ、ZOZOマリンスタジアムを改修で使えないため、イレギュラーなコース設定とランナーの動線になっていました。

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いつもと勝手が違ったのか、理由は定かではありません。いずれにしても歩道を走ってきたランナーのコースがなかったことは確かです。それも完走目標タイムの2時間45分に達する前の段階です。

走ってきたランナーは、それぞれに自分でルートを探してゴールを目指します。

「あぁ千葉マリンマラソンやっちゃったな」このときはそう思っただけで、海浜幕張駅に向かおうとしました。そこにQちゃんこと高橋尚子さんが、大勢のランナーを引き連れて戻ってきました。

Qちゃんは誘導がないことに戸惑いながらも、自分でランナーを引っ張ってゴールを目指しました。

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そして、引き連れた全員をゴールに導いたあと、ものすごい勢いでコースを引き返しました。わたしは急いではいたものの、「これはちょっと何かある」と感じて、陸橋から降りて高橋尚子さんの後を追います。

そこで見た光景は、高橋尚子さんが走ってくるランナー1人1人に「ごめんさい、ゴールがなくなった」と説明している姿でした。そしてその近くには、ボランティアさんが「レース完了(ゴールに入れません)」のプラカードを持って立っています。

この時点でもまだ設定されていた2時間45分になっていません。でもなぜか、大会側はレースを終了させました。

とてもお金をもらって開催している公認大会とは思えない対応でしたが、そこに不満をぶつけても仕方ありません。目の前では、あの高橋尚子さんがやってくるすべてのランナーに謝っています。

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「ごめんさいゴールがなくなったので、わたしがゴールです」そう言って、ハイタッチをしながらランナーを止めていました。

そんなところを見て見ぬふりできるわけがありません。わたしも一緒になって「お疲れさまです。ここで終わりです」とランナーに声をかけます。もちろんわたしがハイタッチをしても意味がありませんので、Qちゃんからは2メートルくらい離れた場所からでしたが。

迎えられたランナーはキョトンとしています。だって、まだ2時間45分経過していないんですから。

そこで高橋尚子さんは、スタッフに頼んでゴールテープを持ってきてもらいました。完走はできなくても、そこをゴールにして、20kmの関門を通過したランナーを迎えたい。きれいな形で終わらせてあげたい。

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そんな想いで用意してもらったのですが、ゴールテープが張られたことで、そこは本当にマラソン大会のゴールのようになりました。高橋尚子さんがそこにいるだけで、すでにゴールしたランナーが集まってきます。

あわよくば、一緒に写真を撮ってもらおうという人も続々とやってきます。Qちゃんは嫌な顔ひとつせず、むしろ人が集まってくれるならという思いがあったのか、ランナーが途切れたタイミングで写真撮影に応じていました。

Qちゃんがそこにいるから、人が集まる。そしてその人たちが、ゴールを目指してやってきた人たちに拍手を送ったり、「頑張って」の声をかけます。

「これがマラソンだ」わたしの心が高鳴りました。

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わたしはこれほどまでにランナーで良かったと感じたことはありません。自分がランナーだったからこそ、この光景に出会うことができました。こんな美しい光景は人生でそう何度も見れるものではありません。

そして、高橋尚子さんがどれだけマラソンを愛しているのか、それを強く感じました。

彼女は誰かに指示されて、この行動を取ったのではありません。どのタイミングかは分かりませんが、自分がやらなきゃいけないと思って、ランナーを止める役割を引き受けました。

その証拠に、Qちゃんはわたしに「本当に終わってるよね?わたしが勝手に止めてないよね?」と確認してきました。わたしに聞かれても困るのですが、プラカードが出ているわけですから、レースは終わっています。

誰かに指示されたなら、そんなこと確認するはずがありません。

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そして、彼女は最後の1人までその場でランナーを待ち、時には数十メートル駆けて、手を繋いで一緒にゴールテープまで走っていました。

それをずっとそばで見ていましたが、彼女は「いま何をすべきか」という判断の速さと行動力、そして機転が利くという点で、明らかにわたしたち一般人とは違うものを持っていました。

ランナーを迎えるその背中の美しさに見とれているわたしがいました。

わたしはこれまで「石田ゆり子さんが好き」だと何度も言ってきましたが、今日からは「石田ゆり子さんと高橋尚子さんが好き」に変えなくてはいけなさそうです。

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わたしだけでなく、その場にいたすべての人が高橋尚子さんの行動に惹かれてしまったことでしょう。

これを書いているのが0時を回る少し前なのですが、まだ胸のドキドキが収まりません。こんな素敵な光景に出会えたことを本当に感謝しています。

そして、この光景の中にいた1人として関われたことを誇りに思います。


高橋尚子夢はきっとかなう
著者:高橋尚子
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