万里の長城マラソン完走記

最後までおいらをサポートしてくれたVFF

最後までおいらをサポートしてくれたVFF

万里の長城マラソンをなめていた。完走できるのはあたり前で、いかにムダなチャレンジするかという視点でしか考えていなかった。慢心とも言えるが、まさかのコース変更という罠が待っていたのだ。変更されたコースをみたときはこれは楽になるかもと感じたが大きな勘違い。コースは万里の長城を走る11キロの往復コースを2往復と2キロの万里の長城と2キロのトレイルと1キロの舗装路、合計5キロを4周する。参加者が300人を超えたため、安全を考えての変更だったのだろう。この変更が世界屈指の難コースを生み出したとはスタート時にはまだ気づいていなかった。

もうひとつ大きなミスを犯した。このコースなら裸足で走りきれるのではないかと勘違いしたことだ。そもそも5キロ程度しかこれまで万里の長城では裸足で走っていない。目で荒れ具合を見てこれは裸足は無理だと思ってすぐに地下足袋を履いていた。だが今回は足裏の調子が良すぎて、裸足を引っ張りすぎた。最初の1往復(11キロ)を裸足で走り終えたところでシューズを履くべきだった。しかしおいらは「行けるところまで裸足」を選択。結果15キロぐらいで限界がやってきた。これ以上裸足を続けると他の人に迷惑をかけかねないと思い、ビブラムファイブフィンガーズを履くことになったが、判断がもう少し遅れていたらえらいことになっていたかもしれない。

万里の長城がコースなだけあって、基本的にほとんど階段だ。気持よく走れる部分はほんとうに短い。70度の勾配がある階段もある。とにかくアップダウンが激しくて、下りであっても階段の場合はスピードを出せない。それとは別に片道2キロ近い駐車場から万里の長城につながる階段もコースになっている。マラソンともトレイルとも違う中国にだけしかないフルマラソン階段レースと言ってもいい。前代未聞である。

スタート前に草野さんと

アフロをかぶると日本人に見えない草野さん

それでも自分ではいいペースで走れているつもりだった。一緒に走っていた人が「こんなペースで大丈夫?」と聞いてきたけど、その時点でわりと上位にいたから「ぜんぜん大丈夫ですよ〜」と軽い気持ちで返答。そのときすでに感覚がおかしかった。そもそも時計をしていなかったおいらが悪いんやけど、20キロ手前で5時間を軽く超えていたようだ。おいらの中ではまだ3時間も走っていないつもりだったのに。このときおいらの頭のなかに「リタイア」の文字が浮かび始めた。

どう考えても途中で終了させられる。いや、正直なところはやいところストップをかけてほしかった。これほど長い時間走るための準備をしていなかった。幸か不幸かボランティアの人たちに配って回っていたお菓子が手元に残っていたので、なんとか少しだけエネルギー補給はできたけど、完全にエネルギーが不足している。それでもとにかく走り続けたのは、昨年出場したときに「もうリタイアする」と言ってたおばちゃんが最後まで走りきった姿を見ていたから。あきらめないでゴールを目指した姿が本当にかっこよかった。あの時感じたタイムや順位だけじゃない、走りぬくことの美しさがおいらを支えてくれたのかもしれない。

とはいえ、時間は刻々と過ぎていく。5キロの周回コースに移ったところで多少ペースは上がったけど、どう考えても3周目を終えたところで打ち切りになる時間。実際に3周目を終えたところでおいらの後ろを走っていた人たちが残り2周で走るのをやめて待っていた。おいらも人生初のリタイアかと思った瞬間、幸運の女神があらわれた。おいらの少し前方を走っていたアメリカ人女性の2人組が走るのをやめず、「スタートが遅れたのだから私たちはまだ走る権利がある」みたいなことを言って、大会スタッフの静止を振り切りもう1周走りに行ってしまった。この幸運の女神を逃す手はない、おいらは彼女たちのサポートをするという名目でラスト1周を走りだした。

後になってわかったんだけど、彼女たちはまだ残り2周と3周という状態だったらしい。もう1周走ったところで完走できないのになぜあの剣幕で静止を振りきって最後の1周に行ってしまったのかは謎だ。アメリカ人おそるべし。ただ最後の1周は走るというよりはほぼ散歩。いや最後は2人女子会みたいな感じで恋話で盛り上がっている。おいらはもっと速いペースで行きたかったけど、サポートするのが名目である以上、彼女たちの前に行く訳にはいかなかった。それでもやっぱり幸運の女神には違いない。彼女たちが行かなければおいらの完走はなかったんだから。

そして速報でも伝えたように、9:32:12(18位)でゴール。もう精も根も尽き果てた。人生においてこんなに長い時間走り続けたことはない。24時間マラソンだってずっと走り続けてるわけじゃない。それなりに休憩をいれながら24時間走っているのだ。しかも5時間ぐらいで終えるつもりだったから心の準備もないままに9時間半も走り続けたことになる。優勝者ですら7時間以上かかっている。これはもう尋常じゃないタイム。GPSで測定していた人によれば実際の距離は50キロはあったんだそうだ。まぁそんなもんだ、ここは中国なんだから8キロぐらいは誤差…なわけはない。来年以降どうするのだろうか。

青木さんとの奇跡の再会?

青木さんとの奇跡の再会?

ちなみにこの大会では毎年素晴らしい出会いがある。今年もいい出会いがあった。この日記にコメントしてくれた草野さんには本当にお世話になりました。いつか草野さんの住んでいる中国の街に遊びに行きたい。冬は半端ない寒さになるらしいので、できれば暖かい時期に。もう一人、奇跡的な出会いもあった。昨年出た裸足マラソンのリレーの部でおいらたちのチームに助っ人で入ってくれた青木さんとこの大会で再会。いや、再会というかそのときはほとんど話をする機会がなかったのでお互い、北京では「はじめまして」って感じだったんだけど、話をしているうちに知らない仲ではないことが判明。いやびっくりした。その青木さんはハーフの部でぶっちぎりの優勝。

ほかにも短い時間だけど話をできた人もいる。速報にコメントをくれた小堺さんもそう。きっと今後もなんらかの形でつながって、お互いに刺激しあって行くんだろうなぁ。そういう出会いがあるのが万里の長城マラソンの最大の魅力かもしれない。一人で参加しても誰かと繋がれる。そういう万有引力の法則が発生する大会。いつもなんらかのトラブルは発生するけど、それも含めて万里の長城マラソンはおもしろい。どうせなら来年も同じコースで、世界に誇れる難コースとして続けてほしいけど、距離の計測だけはしっかりしてもらいたいなぁ。42.195キロじゃなくて50キロでもいいからさ。まぁいずれにしても来年も出るんだけどね。もちろん今度は最初からシューズを履いて余裕の完走を目指します!

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