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,川内優輝さんが公務員ランナー、最強の市民ランナーという称号を手放し、来年度からプロランナーになるという宣言をされました。「このタイミングで?」と思う人も多いかと思いますが、彼はいつもわたしたちの常識を超えたところで物事の判断をしているように感じます。
このあとどうなるかは分かりませんが、正直なところもう4年早ければと思わないわけではありません。実業団の選手であれば、様々なしがらみなどもあり、簡単にプロランナーにはなれません。
でも川内優輝さんは、少なくともランナーとして一番いいときをプロでないランナーの道を選びました。
いや、これからまだまだ成長できるはず。そういう期待はもちろんあります。でも、多くのランナーがマラソンだけと向き合える環境を手にしてから、記録が伸びなくなっています。
その最大の理由は、年齢的にピークを過ぎてしまっているからではないかと思います。とはいえ、それはわたしのような凡人の考えることで、川内さんには川内さんのプランがあるのでしょう。
どちらかというと、わたしが気になるのは、練習に集中できる環境を手にしたことで、ケガをしてしまうのではないかという点です。マラソンというのは、たくさん走ればいいというものではありません。
量を重視する指導者もいますが、現在日本のトップクラスのランナーは、すでに十分過ぎる量の練習を重ねています。そこにさらに練習を加えますので、最初は結果が伴います。でもいずれ無理が出てきます。
もっとも、1回でも自己ベスト更新できればそれでいいという考え方もあります。年齢的に限界が近づいている状態で、もう一度マラソンに集中できる環境を作って、最後に一花咲かせる。
高橋尚子さんもプロ転向後に世界最高記録を更新しています。ただしプロになってからは常にケガが彼女につきまとうことになります。高橋尚子は本当に走るのが好きで、練習を止められている日ですら、勝手に走りに行ったそうです。
そんな選手がマラソンだけに集中できる環境を手にしたら、もっと練習の虫になってしまいます。
人間の体が思ったよりも強くありません。トップクラスのランナーの走りは、確実に体を壊しながら走っています。壊しては組み立て、壊しては組み立てを繰り返してどこかで折り合いをつけながら走っています。
プロになるというのはその折り合いの場所を変えるということです。そうなると、必ずどこかに無理が出ます。藤原新さんも度重なるケガと向き合っています。
プロになって、いかにして上手にサボれるか。でも上手にサボれない人だから、ここまでの成長があります。練習は嘘をつかないということを知っている人たちですから、なかなか手を抜くことができません。
そして何よりも衰えている自分を受け入れることがなかなかできず、若かったことろ同じ練習をして、調子を崩してしまいます。ベテランになればベテランの練習方法があります。本当はそれに取り組まなくてはいけませんが、自分がベテランだなんて思いもしないのでしょう。
さらに、プロになるということはサポートしてくれる人や企業が必要になります。仮にシューズメーカーの契約選手になったら、そのメーカーの意向にそったスケジュールを組まなくてはいけなくなります。
川内さんは、それは避けたいということで、今回1600万円を手にしたタイミングでプロ化を実行したのでしょう。
少なくとも日本でプロランナーになろうと思うと、まずは結果を出さなくてはいけません。それも圧倒的な結果を出し続けて、ある程度注目される立場になってからでないと、資金集めもままならないプロランナーになります。
ではその十分な知名度を手にできるのはいつなのかというと、やはりピークを過ぎてからです。
ただし、最近では大迫傑選手のように若くしてプロランナーとなる例もあります。もっともこれはナイキが青田買いしたような格好で、日本のシステムの外に出たからこそプロランナーの環境を得ました。
そしてプロと言ってもナイキ所属ですので、練習と休養に関しては徹底的にマネジメントされているはずです。科学的に無理のない練習を効率的に行っている。過去のプロランナーとは少し立ち位置が違います。
おそらく、これからのプロ化というのはこういうことになるのではないかと推測します。これまでは「プロ=独り立ち」でしたが、これからは「プロ=プロチーム入り」が主流になります。
実業団ではないどこかが、プロランナーチームを立ち上げる。プロ野球やプロサッカーのように、専門スタッフやコーチがきちんといて、科学的アプローチに基づいて選手育成を行っていく。
おそらく、資金力のあるチームは世界の若手とどんどん契約をしていくはずです。ナイキがそのスタイルで結果を出している以上、世界の流れがそうなっていきます。
日本のように個人でマラソンと向き合える環境を整えるプロ化とは方向性が違います。
そんな時代の切り替わり時期にプロ化宣言をした川内優輝さん。彼がここからどうやってわたしたちを驚かせてくれるのかを期待しつつも、走り過ぎによるケガだけは絶対に避けてもらいたいところです。
もっとも、そうなったときでも、彼のことを支えてくれる人はたくさんいます。ゲストランナーとして日本中のマラソン大会が手ぐすね引いて彼を待っています。
これからは、そういう形でも自由に稼ぐことができます。彼がお金のためのプロ化ではないと言いましたが、お金がどれくらい大切かも知っているはずです。
稼ぐためには走らなくてはいけませんが、走りすぎるとケガのリスクが高まります。このバランスをどうとっていくのか、想像もできない答えを出してくれるのではないかと、期待しながら彼の走りに注目していこうと思います。
著者:P・F. ドラッカー
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