圧倒的な才能を目にしても努力を続けていく意味

  • 2018.12.27
  • (更新日:2019.11.13)
  • LIFE
圧倒的な才能を目にしても努力を続けていく意味

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初めて全国高校駅伝をテレビで見ました。スタートから3区まででしたが、3区でとんでもない光景が目に入ってきました。8位で襷を受け取った倉敷高校の第3走者であるフィレモン・キプラガット選手が一気に7人を抜き去り1位になりました。

しかも後続に35秒もの差をつけて襷をつなぎました。

その後、倉敷高校は世羅高校に抜かれたものの6区で逆転し、2年ぶり2回目の優勝となりました。3区は8.1075kmで、フィレモン・キプラガット選手は22分55秒で走っています。1kmあたり2分50秒という計算になります。

他校の上位陣でも23分台の前半がいいところで、同じ22分台を出したのは大分東明で、同じく留学生のベヌエル・モゲニ選手です。

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全国高校駅伝は7区までしかありませんので、このようにずば抜けた留学生がいることが上位入賞の条件のようになっています。2位になった世羅高校も4区には留学生のジョン・ムワニキ選手が区間タイ記録で走っています。

このような留学生の存在がいることで、全体のレベルが上がるのかもしれませんが、わたしは3区で上位の選手がフィレモン・キプラガット選手に抜かれていくのを見て、彼らはこのあと陸上を続けられるのか心配になりました。

圧倒的な力の差を見せつけられたわけです。全国に出てくるような選手ですので、日本人の中ではかなりずば抜けた才能を持っていて、しかも厳しい練習を行っているのに、簡単に抜かれていく。

同世代にそんな存在がいるというのを知ったら、どこにモチベーションを持って陸上競技を続けていけばいいのでしょう。高校時代のわたしならきっと、辞めてしまうような気がします。

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もちろん、わたしも小さな頃から野球やハンドボール、サッカーといろいろなスポーツをしてきましたので、圧倒的な才能というものに何度もぶつかりました。

チーム内でも下手なほうに入る選手でしたので、さっきの話でいえば辞めていてもおかしくありません。でも、わたしは下手なのにプロを目指しました。

サッカーの場合、圧倒的な才能があるからといってプロになれるわけではなく、下手だからプロになれないというわけではありません。下手でも何かひとつ他人に負けないものを持っていれば、それを戦術の中で活かしてもらえることがあります。

団体スポーツの場合は、選手はパズルのピースのひとつであり、才能で劣っていても使い所はどこにでもあります。

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でも陸上競技のような個人競技の場合、絶対に手の届かない才能が目の前にあったら、そこにはひれ伏すしかありません。市民ランナーなら「速いことだけがマラソンではない」とうそぶくことができますが、陸上選手となると話は別です。

大学生になったら成長するかもしれないという考え方もありますが、同じだけの努力を才能を持っている人にされると、追いつける理由がどこにもありません。

そういうときに大人として「頑張れ」と声をかけるようなことは、わたしにはできません。

そこから圧倒的な努力をすれば報われることもあります。ただ、その努力が陸上選手として報われるかどうかは分かりません。陸上競技を辞めて何かを始めようとしたときに報われることもあります。

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だから努力は必要だとわたしは思いますが、実際に本物の才能を目にして怯えている状態になった人に、圧倒的な努力は必ず報われると言っても、その声は届かないでしょう。

ランレコードのブログにも少し書きましたが、わたしは今年2つの圧倒的な才能の存在を知りました。

1人は歌手のあいみょんさん、1人は女優さんであり歌手である上白石萌音さん。2人とも20代前半の若い才能です。上白石萌音さんは「君の名は」の声優も行っていますので有名らしいのですが、わたしはその映画を見ていないので、最近になって知ったわけです。

彼女の歌声は本当に美しく、自分に歌手になる可能性が1ミリもなくて本当に良かったなと思っています。あんな歌声を聞かされたら、自分の存在意義が分からなくなってしまいます。

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そしてもう1人、あいみょんさんがわたしにとっての問題です。彼女が新曲を出すたびに、その歌詞に自分の無力さを感じずに入られません。自分が一生かかっても作り出すことのできないフレーズの数々。

物書きとしての圧倒的な才能を見せつけられたわけです。

もちろん、わたしはしがない物書きで、彼女はシンガーソングライターですので交わることはまずありません。わたしが比較対象に上がることもないでしょう。ただ、彼女の言葉はわたしの胸を強く締め付けます。

そこには絶対に手が届かないことがはっきりしている苦しさ。

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世の中は残酷だなとは思います。圧倒的な才能は周りの小さな才能を潰していきます。ときにはまだ蕾の状態にある才能すら、消し去ってしまうことがあります。

わたしにとっての救いは彼女たちが同年代ではなく、20歳以上も年齢が離れているということ。43年も生きていれば圧倒的な才能とどう向き合うべきか、それなりに心得ているつもりです。

報われると信じて圧倒的な努力を続けていくこと。ただそれだけです。


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