日本ものづくりワールドに見る3Dプリンタの現状と未来

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仕事をサボって…いや仕事の一環として日本ものづくりワールドに行ってきた。日本ものづくりワールドは「設計・製造ソリューション展」「機械要素技術展」「3D&バーチャルリアリティ展」「医療機器 開発・製造展」からなるイベントで、今週の水曜日から今日まで行われていた。おいらはエンジニアの端くれとして理由をつけては毎年見に行くようにしている。機械設計の現場にいる者として、最新のトレンドは掴んでおきたいし、いつも新しい発見があってやる気が湧いてくる。

今回の目玉は何と言っても3Dプリンタだろう。クリス・アンダーソンの『MAKERS』のヒットによって大きなブームになっている。アメリカではオバマ大統領が演説で3Dプリンタの開発を国をあげて行うと発表したし、実際かなりの勢いで開発が進んでいる。日本では一部のマニアの玩具といったところから脱し切れていない。ただ、今回の展示会ではそのブームの大きさをひしひしと感じずにはいられなかった。他のブースも回っていたので、3Dプリンタのコーナーについたのが午後で最終日ということもあって、その時点でカタログが全てなくなったブースがたくさんあった。

そして今日の報道ステーションでその光景が報道された。製造業にとってもはや3Dプリンタはなくてはならないものになりつつあるというような趣旨で、日本もアメリカに負けずに取り入れていかなければいけないというような締めだった。報道の中に大田区の加工業者の声というのもあって、「脅威だ」というコメントを残していた。3Dプリンタは製造のあり方を完全に変えてしまいかねないほどの可能性を秘めている。製造がかわると設計も変わってくる。機械設計者にとっても他人ごとではない。少なくとも3D-CADを扱えない設計者は不要になってくる。

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そんな可能性を秘めた3Dプリンタだけど、実際のところ本当に脅威なのかはまだわからない。そもそも3Dプリンタを使って具体的に何かをすることをイメージできる人がどれだけいるのだろうか。ほとんどの人が流行りだから見に来たというのが実際のところじゃないだろうか。1台19万円の3Dプリンタを購入して家で何をプリントアウトするのだろうか。いま家庭に普及しているプリンタは写真のプリントアウトや年賀状の作成といった具体的な使い道が見えている、それでも年に数回しか稼働していないのが実情だろう。年賀状作成のとき以外は箱にしまわれている家も多いだろう。

これが3Dプリンタだったらどうだろうか。確実に使われないまま放置されるに決まっている。そもそも、3次元のデータを誰もが作れるわけではない。フリーの3D-CADというのも出てきているが、教育を受けずに使えるのは一部の人だけだろう。ただ、10年後の3Dプリンタは確実にいまよりも精巧にモノを作ることが出来るようになる。そして3D-CADやCGも素人でも使えるようになってくる。少なくともiPadでモデルの作成からプリントアウトまで出来るようになっているだろう。そうなったときに本当に普及するのかどうかはやはりまだわからない。

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出展側の人に話を聞いてみたが、今年はあまりにもおかしすぎるとのことだった。かなりの人が来てくれるし、興味を持ってくれているのはわかるけど、それだけなんだそうだ。実際に購入するという話もあるけど、基本的には興味本位で話を聞いてみたいという人ばかりでうんざりしそうになるそうだ。その姿勢がよいかどうかはともかくとして、その気持はわからなくもない。説明員にしてみれば本当にブームなだけで中身がともなっていないように感じたのだろう。おいらもやはり一過性のブームに過ぎないと考えている。

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ただし、ブームの後には必ず本物が現れる。一部の製造は大きく変わっていくだろう。いまは金属でさえ3Dプリントできるのだ。正直これには驚かされた。まだ先の話だと思っていたけど、もう現実の世界で何もない空間に金属の製品が出来上がっていく。機械加工業者にしてみれば悪夢のような光景といっていい。そういう機械だって1台数千万円で買えてしまう。メンテや保守にお金がかかると思うけど、外部委託でモノを作っていた会社はこれを導入することで大幅なコストダウンをはかれる場合もある。仮に4000万円で金属をプリントアウト出来るプリンタがあったとしよう。1個4万円で買っていた部品がこれを導入することで2万円で作れるようになったら2000個以上作れば元は取れてしまうのだ。

そしてこれを1台買うことで誰でも加工メーカーになれてしまう。もちろん現段階ではなんでも作れるわけじゃない。精度だって多々問題がある。それでも、製造を大きく変えてしまう可能性があることはなんとなく分かってもらえたと思う。いざその時点になって参入してもそれはすでに遅いのだ。こういうのはノウハウの積み重ねがモノを言うので、早い段階から関わっておかなくてはいけない。おそらく数年後にある未来は加工方法のひとつとして「3Dプリンタ」というものが定着する。そのときに備えて、機械設計者はいまから個人で買って試しておくのもいいだろう。1台19万円だ、ボーナスの一部をつぎ込めば買えてしまう。おいらは冬のボーナスで買おうかな。その前に上司を説得して会社で買ってもらえるように働きかけよう。買ってくれなかったら自分で買う方向で。

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