理由はわからないが、心に穴が空いて走りたいモードに入ってしまった。5kmとか10kmとかいった普通のランニングではなく、少し長い距離の旅ランをしたい気分。走力がかなり低下しているから50〜70kmくらいがいいだろう。それくらいの距離を1日かけて走る。
天気は晴れ、気温は30℃以下がいいだろう。苦しさに耐えたいわけではなく、ただ旅をしたいだけだから。
三宅坂から鶴巻温泉まで約60km。距離としては悪くはないだろう。だが面白みには欠ける。勝手知ったる道を移動することを旅とは呼ばない。練習として走るのであれば選択肢に入るのだが、いまのこのぽっかりと空いた穴を埋めるには不足する。
そもそも、なぜ穴が空いているのだろうか。本当に思い当たる節はない。ただ明らかに何かが足りていないという認識はある。自分なりに考えてみたが、あえてあるとすれば「夏」だろう。夏が去って行ったが、秋がまだ収まっていない。四季のある国というのは何かと面倒な一面もある。
ひとつの季節が去っていくとき、少しさみしくなるのはわたしだけではないはずだ。いつもなら夏が終わるとしても、これからマラソンシーズンが始まるという興奮が大きくて、勢いでそのさみしさを乗り切っていたのかもしれない。もしくはそんな感情など、最初から持ち合わせていなかったか。
もし大きく空いた穴を秋で埋めたいなら、秋を感じられる旅でもするのが1番なのだろう。だが残念なことに暦の上では秋でも、日本全国夏から抜け出せていない。今日は仙台で最高気温が35℃の予報。秋を求めて旅ランをするにしても、まだ少し早い。
わかりやすく秋を求めるなら、やはりトレイルがいいのかもしれない。だが、秋の色に染まる山を駆け抜けたいなら北海道にでも行く必要がある。どこにでも熊がいるような場所でトレイルを走る勇気はない。そもそも関東から北海道に行って歓迎される気がしない。
そうなるとやはり近場に絞られる。まだ夏の匂いが残っている場所で秋を探す。
秋の味覚というのはどうだろうか。秋刀魚や栗、松茸、さつまいも、梨、ぶどう……千葉から銚子まで秋刀魚を食べに行く。距離は75kmなのでやや長い気もするが、これはそれほど悪くはなさそうだ。千葉には落花生もある。落花生が秋の食べ物かどうかは知らないが。
だいぶ調子が出てきたかもしれない。もう少し近場で探してみるとしよう。
近場で秋を感じられるとしたら伊豆だろうか。伊豆の秋の旬といえば伊勢海老がある。少し先になるが10月になれば金目鯛のシーズンも始まる。そうなると伊豆はもう少し後のほうがいいだろう。どこかでまとめて休みをとって、伊豆半島1周をしてみたいというのもある。
そうやって地図を見ていると、どうやら宮ヶ瀬湖まで片道20kmでヤビツ峠を選べば片道35kmということに気づいてしまった。1周ぐるっと周って55km。秋はまったく関係ないが、ありかなしかで言えば「あり」だろう。自宅に戻ってこれるのがいい。
探してみれば走れる場所はいくらでもある。いくつかに絞り込みをしておいて、気温が低くなりそうな日に思いつきでスタートすればいいのだろう。それをできるのがフリーランスというやつだ。いや、多少のスケジュール調整は必要だが、やってできないことはない。
ふらっと走りに行くとしよう。
おにぎりとお茶をリュックに詰め込んで、カメラを片手に秋を感じるランニング。なんだか自分らしさが1ミリも入っていない気がするが、やってみれば新しい発見もあるだろう。その日がやって来るのをしっかり準備をして待つとしよう。