素晴らしいシューズが売れるわけではない現実と伝えることの難しさ

前回の東西対抗東海道53次ウルトラマラソンはMEDIFOAMのメロスを履いて走りました。出発2日前、レビュー用に提供していただいたシューズが手元に届いたので、前日にフィット感を確かめるために軽いジョグと1kmのタイムトライアルをして、問題ないと判断したので250kmの相棒に。

私の足の形とMEDIFOAMと木型が合わないのは初期の頃から変わらないので、これまでは短い距離のレースでも履かなかったのですが(普段の練習ではよく履いています)、今回のモデルはアッパーに伸縮性があり、指の当たりが緩和されていたのが決め手になりました。

MEDIFOAMは瞬足と同じアキレスが作っているランニングシューズブランドで、リカバリーシューズという領域で、個性的なランニングシューズを作り出しています。メロスはその中でもサブ3を狙うランナー向けなので、本来ならスローペースの旅ランには不向きなのですが、軽量で衝撃吸収力に優れているので、実は長い距離も走れる気がして。

結果的には予想通り、疲労が残りにくく、走力が低下した状態でも3日で250kmを走り抜くことができました。個人的にはシューズの完成度にかなり満足していますし、とてもいいシューズだと思うのですが、これが売れるかと聞かれると「売れない」と答えることになるでしょう。

ランニングシューズはいいものが売れるのではなく、ニーズに合ったものが売れます。それがナイキのヴェイパーフライであり、最近のカーボンプレート×厚底のシューズで、MEDIFOAMはその流れとは真逆の薄底軽量、低反発のシューズです。メーカーとしては高反発を掲げていて、実際に反発力がないわけではないのですが、ややもっさりとした反発力でスピードには活かしにくい。

では、速く走れないかというとそうでもなく、きちんと走力に見合ったスピードを出すことはできます。逆に走力以上では走れません。これを良しとするかどうかは人によって違うので追求しません。ただ、シンプルに足を鍛えると考えたときには、かなり個性的な位置付けにあり、強くお勧めできる1足です。

でも世の中のニーズには合っておらず、今は自分の走力を底上げしてくれるシューズがトレンドで、そうでないとなかなか売れないわけです。だって、みんなタイムだけを求めているから。「それって意味があるの?」の声は届かないし、スピードに抗えないのがランナーでもあります。

そして底上げシューズで走って結果が出ると、怖くて他のシューズに手を出せなくなる。箱根駅伝でほとんどのランナーがナイキを選んだことも同じ理由で、他のメーカーの底上げシューズに変えて結果が出ないリスクを負いたくなかったから、ナイキを選んだわけです。これは勝負の場だから当然です。

でも、私たち市民ランナーは自分が成長することが本質なわけで、底上げして自己ベストを更新しても意味はありません(履くなと言っているわけではありません)。だから、みんながみんなトレンドに乗る必要はなく、MEDIFOAMのようなシューズを愛してやまないランナーが出てきてもおかしくないのですが、大会で履いている人はかなり少数派です。

そういうランニングシューズを紹介するのが私の役割ではありますが、日本人の保守的な部分を変えるのはなかなか難しく、軽くて走りやすくて疲労が溜まりにくいからと言っても、心が動かされることはありません。ヴェイパーフライのときのように、圧倒的な個性(ヴェイパーフライなら速さ)を示さないと手にしてもらえない現実。

良いものが売れるのではなく、上手く宣伝したものが売れる時代。ものづくりを手がけていた者としては、なんとも歯痒いところです。最近はワークマンのランニングシューズの2匹目のドジョウを狙ってレビュー依頼が多々ありますが、あれば私に文才や宣伝力があったのではなく、そもそも噴火する寸前だった火山に与えただけのことで、私の力ではありません。

ただ、依頼をされたらなんとかしたいという思いは湧くもので、それでもなんともならないという現実の狭間で悩むわけです。もっと文才があったらなぁと。自分が良いと思えたものを、文章の力で広めていく。簡単なことではないのはわかっていますが、これを狙ってできるのがプロの物書き。

プロへの道は未だ険しく。

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